ビルドアップ走とは、徐々に走るペースを上げていく練習方法です。
走り始めは比較的ゆっくりと走り始めることで身体を走る事に慣らしていき、徐々に無理なくペースを上げていけばOK。
1回の練習で様々な運動強度を身体に与える事が出来ます。
設定によってはビルドアップ後半はとても苦しい状態まで追い込めるため、負荷は高いですが練習効果も期待出来ます。
ただ、ビルドアップに関しては、やり方が無限です^^;
どんなペースからスタートするか、道中どのようにペースアップするか、最後はどこまで追い込むか。
その設定次第で、強度も効果も全く異なってきます。
ビルドアップに関しては、
・ダニエルズのランニング・フォーミュラ
・リディアードのランニング・バイブル
・アドバンスト・マラソントレーニング
・ポーラ・ラドクリフのランニング・バイブル
など、海外の著作が日本語に翻訳された書籍には、記載がほぼ皆無です^^;
ただ日本ではビルドアップは非常にポピュラーな練習方法のため、様々な書籍で取り上げられています。
今回はビルドアップが掲載されている日本の書籍の文言を引用しながら、かつてビルドアップを練習の中心とした有名ランナーのブログや私の経験則も含め、ビルドアップ走の効果やトレーニング方法について考えていきたいと思います。
目次
【解説動画】組み合わせは無限!効果も自由自在!ビルドアップ走
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
ビルドアップ走の効果
ビルドアップのやり方は”無限”であると前述しました。
書籍に記載されている距離やペースの設定についても、割とバラバラ^^;
当然ながら、目的によって効果も変わります。
例1:ゆるビルドアップによる効果
例えば
という、日常的なジョグの日に少しだけプラスアルファの効果を狙いたい目的であれば、設定はある程度適当・緩めで充分でしょう。
これなら気分的に”今日はちょっとやってみようかな♪”という気楽な気持ちで取り組む事も出来るでしょう(^^)
それでもただ単にジョグで10km走るだけよりはずっと良い練習効果が期待出来るので、速くなれる近道です♪
負荷もさほど高くありません。
この場合の効果は、ランニングの終盤に行うペースアップにより(それがEペース~Mペースほどへのペースアップだと考えると)
1.有酸素運動で得る事が出来る練習効果
2.ジョグに比べて、マラソンのための実践的な身体の動きや着地衝撃による筋力強化・心肺への刺激
などの効果を得る事が出来ると考えられます。
LSDやジョグに比べてEペース以上~Mペースに近いほど、本番のマラソンで走るフォームやピッチ・ストライドに近づくので、練習効果は高くなります。
“ゆるビルドアップ”はどのレベルのランナーでも、日常的なジョグの日に週1回以上取り入れても良いくらいオススメ出来ます。
何より設定を決めず、身体が温まって動くようになってから、気分で上げていって良いビルドアップですからね。
例2:ガチビルドアップによる効果
しっかりとしたポイント練習として、という事であれば、10km~15kmの距離設定でMペースからスタートして3km~5km毎に10秒/km上げていき、最後はVo2maxに刺激の入るIペースや全力のフリー走まで上げる…そんな感じの内容が考えられると思います。
このような内容であれば、
1.最初のMペース:有酸素運動・マラソンの実践的な動きや着地衝撃などによる効果
2.閾値ペース:高い血中乳酸処理能力向上の効果
3.ラストのIペース以上:Vo2maxへの刺激も入って心肺能力の向上
このような効果が複合的に狙えます。
しかもIペースは通常走り始めてから3分経過後からチャンスタイム(刺激時間)になりますが、すでにMペース~Tペースと、だいぶ良いペースで走ってきていますので、ラストはIペース(ないしは全力走)に切り替えて比較的すぐに刺激時間となるため、大変お得(笑)
その代わりビルドアップの終盤は、走っているラップの割にキツさが段違いですが^^;
ビルドアップのトレーニング方法
初心者編(~サブ4未達の方までのビルドアップ)
サブ4を達成していないランナーの皆さまは、ゆるビルドアップが主にオススメ出来るトレーニング方法になります。
特に日常的に閾値走などのスピード練習を取り入れていない方は、このゆるビルドアップがポイント練習となり、マラソンが効率的に速くなるためのトレーニングになり得ます。
その上で、しっかり設定を決めて実施するビルドアップ走にしたいのであれば、自身のVDOTとEペース・Mペースのスピードを把握した上で、以下がオススメです。
※VDOT(走力レベル)によるEペースやMペースの確認方法は、以下の記事を見ると分かります。
初心者向けビルドアップ走(10km)
距離 | ペース | 備考 |
---|---|---|
0km~2km | Eペース下限 | Eペース内の最も遅いペース |
2km~5km | Eペース中盤 | Eペース内の中盤のペース |
5km~8km | Eペース上限 | Eペース内の最も速いペース |
8km~9km | Mペース | マラソンペース |
9km~10km | Tペース | 閾値ペース |
例えばVDOT35、以下のようなランナーであれば
ペースは以下の表のようになります。
距離 | ペース |
---|---|
0km~2km | 7分20秒/km |
2km~5km | 7分00秒/km |
5km~8km | 6分40秒/km |
8km~9km | 6分10秒/km |
9km~10km | 5分40秒/km |
中級者編(サブ4~サブ3.5の方までのビルドアップ)
岩本式ビルドアップ
中級者編の対象となるランナーにとっても”ゆるビルドアップ”は良い練習になりますが、このレベルのランナーがしっかりとしたビルドアップをするのであれば、
岩本流のビルドアップ走
がオススメ出来ます。
岩本流ビルドアップというのは、自身も優秀なウルトラマラソンランナーで書籍も数多く出版されているclub MY☆STAR代表の岩本能史さんが提唱する練習方法です。
設定は目標とするマラソンペースからのスタート、5km毎にビルドアップしていきます。
5km~10kmは最初のペースより5km単位で1分速く、最後の5kmは5km~10kmのペースより5km単位でさらに1分半速く走る設定となります。
例えばフルマラソンの目標がサブ3.5であれば、以下のようなペース。
距離 | ペース | 備考 |
---|---|---|
0km~5km | 25分(5'00/km) | |
5km~10km | 24分(4'48/km) | 最初から1分速く |
10km~15km | 22分30秒(4'30/km) | さらに1分半速く |
サブ3.5を目指すVDOT44のランナーであれば
最初の5kmがMペース、次の5kmは閾値より少し遅いペース、最後の5kmは閾値よりも速いペースで5km。かなりキツいペース^^;
岩本さんは、このビルドアップが出来れば、目標とするフルマラソンのタイムはクリア出来るという「卒業検定(ソツケン)」としてのビルドアップという位置付けにしています。
やってみると分かると思いますが、ソツケンをクリアするためには、最初の10kmまでをいかに余裕を持って巡航出来るかにかかっています。
かなり練習効果も強度も高いですが、挑戦する価値はありますよ。
上級者編(サブ3.5~サブ3を狙う方までのビルドアップ)
サブ3.5をクリアしてサブ3に向かうランナーにとっては、岩本式のビルドアップはちょっと設定的に難しくなってきます。
岩本式にならうサブ3向けの設定は
21分15秒(4’15/km)→20分15秒(4’03/km)→18分45秒(3’45/km)
になります。
ほら、ちょっと厳しいですよね。特にラスト5kmが^^;
私もサブ3を目指している時、これを見た瞬間
「ちょっ!無理っ!最後の区間は5000mのベストに近いし!」
って思いました(笑)
ここまでのビルドアップはサブ3を目指すランナーのレベルだと難易度が高いですが、高い目標を目指すビルドアップをするのであれば、それなりの負荷は必要。
では、どのようなビルドアップをやっていけば良いでしょうか。
カミ式ビルドアップ
かつてブログ界で話題となった「カミ式ビルドアップ」。
私が”閾値走”を練習の中心に据えてレベルアップしていったように、カミさんというブロガーの方は”ビルドアップ”を練習の中心に据えて2時間40分を切るレベルまで走力アップしていった、ビルドアップの専門家のようなお方。
今はブログも見れなくなってしまっていますが、みんなこぞって「カミ式ビルドアップ」をやってレベルアップしてました。
基本設定はシンプルなので、設定は作成しやすいです。シンプルが一番(^^)
Mペース(実際のレース巡航ペースが基準)からスタートして、5km毎に10秒/kmずつ上げていき15km走る。
マラソンペース→ハーフマラソンのペース→閾値ペース
のような感じ。
サブ3が目標なら
距離 | ペース | 備考 |
---|---|---|
0km~5km | 20分50秒(4'10/km) | |
5km~10km | 20分(4'00/km) | 最初から10秒/km速く |
10km~15km | 19分10秒(3'50/km) | さらに10秒/km速く |
え?岩本式とたいして変わらないじゃないかって?
確かに(笑)
でも、最後の区間で3’45/km平均なのか、3’50/km平均なのかは大きいですよ。
最初の区間は4’15/kmでも4’10/kmでも大丈夫。Mペース近辺だもの。
次の区間も4’03/kmでもキロ4でも大きな違いは無いですが、ラストの5kmを18分45秒なのか19分10秒なのかの違いは大きい^^;
3’50/kmなら閾値に近いけど、3’45/kmだとインターバルペースに近くなりますしね。ビルドアップの最後にインターバルペースでの5kmは不可能(笑)
3分台/kmに入っての5秒/kmの違いって、果てしなくデカい。
15kmじゃなくて10km(4km-3km-3km)でも、もちろん良いですし、20kmに伸ばす猛者がいても良いと思います(笑)
私もガチゆる走的に、最初にある程度のペースで走った後にMペースから始まるカミ式のようなビルドアップ走を、2時間50分切りを目指していた時にやってました。
まとめ
ビルドアップについての効果やトレーニング例を記載しましたが、ここに記載されている事が全てではもちろんなく、本当に組み合わせは無限です。
私が上記の練習メニューでやったように、ガチゆる走的にビルドアップを使っても良いでしょうし、レースでのネガティブスプリットを目指して30km走をビルドアップにするのもアリでしょう。
色々なやり方を試してみて、自分に合ったビルドアップを見つけるのも良いと思いますので、是非試してみてください(^^)