VDOTとは

マラソンの目標タイムごとに練習内容を考える記事を作成する時は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」の中で頻繁に使われている「VDOT」を登場させてきました。

「VDOT?よくわからん!」

という方もいらっしゃると思いますので、VDOTについて少し説明します。

VDOTとは

VDOTとは「現在の走力のものさし」です。

ジャック・ダニエルズ氏が著書「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」で使っている専門用語。

VO2max(最大酸素摂取量)、正式には「V-dot-O2max」。dotを付けることで、これが1分間の酸素消費量である事を示し、ダニエルズさんはこれをVDOTと略した…など難しい話をこねくり回すとワケが分からなくなりますので、

自分のVDOTがわかれば、推測でトレーニングを行うことが大幅に減り、オーバートレーニングを防ぐこともできる、そういう指標であると理解すれば良いと思います。

その「自分のVDOT」ですが、VDOT一覧表の種目から直近のレース記録を照らし合わせて自分のVDOTを確認します。レース記録が複数あってVDOTが異なる場合、最も高いVDOTを採用してトレーニング強度を決定します

VDOT一覧表はこちら

VDOT5km10kmハーフフルEMTIR
3030'4063'462'21'044'49'177'526'516'24-2'16
3129'5162'032'17'214'41'577'416'41614'-2'12
3229'0560'262'13'494'34'597'306'316'05-2'08
3328'2158'542'10'274'28'227'206'215'56-2'05
3427'3957'262'07'164'22'037'106'135'48-2'02
3527'0056'032'04'134'16'037'01
6'045'40-1'59
3626'2254'442'01'194'10'196'525'565'335'071'55
3725'4653'291'58'344'04'506'435'485'255'001'53
3825'1252'171'55'553'59'356'355'415'194'541'50
3924'3951'091'53'243'54'346'275'335'124'481'48
4024'0850'031'50'593'49'456'195'275'064'421'46
4123'3849'011'48'403'45'096'125'205'004'361'44
4223'0948'011'46'273'40'436'055'144'544'311'42
4322'41
47'041'44'203'36'285'585'084'494'261'40
4422'1546'091'42'173'32'235'525'024'434'2198
4521'5045'161'40'203'28'265'464'564'384'1696
4621'2544'251'38'273'24'395'404'514'334'1294
4721'0243'361'36'383'21'005'344'464'294'0792
4820'3942'501'34'533'17'295'284'414'244'0390
4920'1842'041'33'123'14'065'234'364'203'5989
5019'5741'211'31'353'10'495'184'314'153'5587
5119'3640'391'30'023'07'395'134'27
4'113'5186
5219'1739'591'28'313'04'365'084'224'073'4885
5318'5839'201'27'043'01'395'044'184'043'4484
5418'4038'421'25'402'58'474'594'144'003'4182
5518'2238'061'24'182'56'014'554'103'563'3781
5618'0537'311'23'002'53'204'504'063'533'3480
5717'4936'571'21'432'50'454'464'033'503'3179
5817'3336'241'20'302'48'144'423'593'453'2877
5917'1735'521'19'182'25'474'383'553'433'2576
6017'0335'221'18'092'43'254'353'523'403'2375
6116'4834'521'17'022'41'084'313'493'373'2074
6216'3434'231'15'572'38'544'273'463'343'1773
6316'2033'551'14'542'36'444'243'433'323'1572
6416'0733'281'13'532'34'384'213'403'293'1271
6515'5433'011'12'532'32'354'183'373'263'1070
6615'4232'351'11'562'30'364'143'343'243'0869
6715'2932'111'11'002'28'404'113'313'213'0568
6815'1831'461'10'052'26'474'083'283'193'0367
6915'0631'231'09'122'24'574'053'263'163'0166
7014'5531'001'08'212'23'104'023'233'142'5965

E=イージーペース

M=マラソンペース

T=閾値ペース

I=インターバルペース

R=レペティションペース

E・M・T・Iは、それぞれ1kmのペース

Rは400mのペース

自分にとって絶妙で最高の練習が可能になる

目標タイム別に設定されたような一般的な練習プログラムは、当然ですが、自分の走力を考慮してもらって作成されたものではありません。

例えばサブ3を目指すためのポイント練習として

水曜 10kmペース走(4’00/km)

のように記載されていたりします。

でもそれって

「サブ3ランナーであればこれくらいはこなせないと」

というような観点から決められたような練習であって、サブスリー未達のランナー(特に女性、男性でもスタミナタイプのランナー)にとっては、平日ポイント練習でキロ4の10kmをサクッとこなせるレベルには届いていない可能性も高いですよね。

「突然キロ4の10kmって…疲労抜きして調整した10kmレースでいけるかどうかだよ」

と思わずにはいられない、タイムトライアル的なメニューだと思います。

その点VDOTを走力のものさしとして使えば、VDOTがあなた専属のコーチのように、パーソナルメニューを教えてくれます。

つまり、あなたの現状の走力に合った「楽では無いけどキツすぎない」という絶妙な強度の練習を継続できて、徐々にレベルアップを図れます。

例えば、さきほど例に挙げたサブ3近辺の走力をVDOTで確認すると

3時間5分を切った位のレベル、VDOT52だと10km40分はタイムトライアルのレベル。このレベルで10km40分走るのはオーバートレーニング。疲労回復に日にちがかかり、練習の継続性に難があります。

ダニエルズ的にはTペース4’07/kmでの20分間走や、キロ辺り8~9秒ほど落としたペースでの40分間走(テンポ走、4’15/km前後)が適切だと明示されています。

「それであれば無理し過ぎずに出来るかな」

と思える3時間ヒトケタの記録を持つランナーは多いと思います。

「ラクではないけどキツ過ぎない」という練習を継続する事で、疲労が積み上がり過ぎる事を防ぎ、故障のリスクも低く抑えながら走力を上げていけるのです。

「閾値走って何だ?」 「閾値走ってたまに聞くけど、本当に効果があるのか!?」 「Tペース走でフルマラソンが速くなるのか!...



VDOTを指標にした練習内容

イージーランニング(Eペース走)

Eランニングの効果は、ケガに対する耐性をつくる、心筋を強化する、血液の酸素運搬能を改善する、筋繊維をランニングに有利な性質に導く、ということである

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

イージーランニングは会話が可能なペース。アップやダウン、高い強度の練習のつなぎとして、またロング走のペースとしても利用します。ほとんどの日はイージーランニングを行うだけで十分です。

Eペースであれば長い距離を走りやすいので、特にマラソン初心者にとっては

「走ろうと思えば長い時間走り続けることができる」

という自信を高めることも出来ます。

マラソンペースランニング(Mペース走)

Mペースランニングをする目的は、実際のレースペースに慣れること、そしてそのペースで給水をとる練習をすることである。したがってMランニングの主な効果は、メンタル的なもの、つまり設定したペースで走る自信を高めるものと言ってもいい。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

Mペースの持続時間は90~150分間、走行距離は25kmを越えないようにする、とありますが、私はレース前にはMペースで30km~35km走ってます。完遂すれば、確実に自信が高まります。

閾値ランニング(Tペース走・閾値走)

Tペースランニングは、長距離種目の選手が行うトレーニングの中でも、きわめて効果の高い練習である。閾値ペースでのトレーニングは、充実した練習でありながらオーバートレーニングを防ぐこともできる、継続しやすい練習である。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力を高めるために行う。持久力を向上させるために行うと考えればよい。つまり、ある程度の時間、少しだけ速めのペースで持ちこたえることを身体に覚えさせる、あるいは一定ペースを維持できる時間をのばす、ということだ。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

閾値ランニングは「終わるのが待ち遠しいペース」というキツさですが、同時にかなりの距離を持ちこたえられるペースでもあります。

練習なら20分~30分、休養を取ってピーキング(本番に調子を合わせる事)をしたレースなら60分間維持出来るペース。

練習例 アップジョグ3km、閾値走20分間、ダウンジョグ3km

閾値ランニングの基本は20分ですが、閾値ペースより遅いペースで、20分間より長い距離を走る「テンポ走」をすることによって、良い結果を生むこともあります。

私見ですが、私のようなスピードタイプのランナーにとって、20分の閾値走はもちろんですが、さらに長い時間を走る40分間のテンポ走もマラソン練習として、かなり効果的だったように思います。

以下はテンポ走の持続時間別ペースです。

VDOTTペースMペース
20分25分30分40分50分60分60分
306'246'28(+4)6'32(+8)6'36(+12)6'40(+16)6'44(+20)6'51(+27)
355'405'44(+4)5'47(+7)5'51(+11)5'55(+15)5'59(+19)6'04(+24)
405'065'10(+4)5'13(+7)5'17(+11)5'20(+14)5'22(+16)5'26(+20)
454'384'42(+4)4'44(+6)4'47(+9)4'50(+12)4'52(+14)4'56(+18)
504'154'18(+3)4'21(+6)4'24(+9)4'26(+11)4'29(+13)4'31(+16)
553'563'59(+3)4'01(+5)4'04(+8)4'07(+11)4'09(+12)4'10(+14)
603'403'43(+3)3'44(+4)3'47(+7)3'50(+10)3'52(+12)3'52(+12)
653'263'29(+3)3'30(+4)3'33(+7)3'36(+10)3'38(+12)3'37(+11)
703'143'16(+2)3'18(+4)3'20(+6)3'23(+9)3'26(+12)3'23(+9)

閾値ランニング、テンポ走、いずれにせよ、適正ペースを維持してタイムトライアルにならないように「抑えて」走ることが一番のポイント。適正ペースはそれよりも速かったり遅かったりするペースと比べて、練習効果が高いのです。

クルーズインターバル

クルーズインターバルは短い休息時間をはさみ、閾値ペースで行うインターバルである…疾走区間の長さは3~15分間とし、5分間の疾走につき1分間の休息時間をとるのが平均的な練習である。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

20分間の閾値走がキツい、無理だという初心者は、クルーズインターバルから始めるのも良いと思います。

5分間の閾値ペース、1分間のジョグで1セットとし数セット行う。疾走区間の合計は6km(または30分間)~15km(または1時間)の範囲で実施。

クルーズインターバルでも設定ペースを守るのが大事。

「速く走った方が練習効果が高いのではないだろうか」

と思いがちですが、頑張るのはレースで。日々の練習は「継続性」を重視していきましょう。

インターバルトレーニング(Iトレーニング)

私の考えでは、VO2maxを最大限に向上させることが、Iトレーニング、特に、本章で説明するIトレーニングの最大のメリットである。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

インターバルトレーニングはVO2max(最大酸素摂取量)を増加させるために刺激を与える練習であり、その刺激時間を蓄積するのが大事だと言います。

適切な疾走時間は1本あたり3~5分。

適切なIペースで走ると、刺激が与えられるポイントに到達するために「約2分間」かかります。

このペースで4分間走ると、刺激時間は2分。それを5本実施すると、休息で完全回復したとする単純計算では10分の刺激時間が蓄積されます。

1000mインターバルの場合、走力の高いランナーは、刺激が与えられるポイントに到達してから疾走区間が終わるまでが短いので、1200mや1600mの距離にして刺激時間を増やします。

インターバルトレーニングの休息時間は、直前に走った疾走区間の時間と同じか若干短い時間にすべきであるとしています。キロ4のインターバルなら4分の休息時間か、若干短い時間を推奨しています。休息時間はイージーランニングかジョギングが一番良いとあります。

低強度の運動は血中乳酸が除去され、VO2(酸素摂取量)が若干上昇した状態で次の疾走区間に入れるので、早めに刺激時間に入ることができるので練習効果が高いのです。

インターバルトレーニングでも設定ペースの維持が重要。最初の何本かを設定より速いペースで実施した影響で4本目や5本目で失速、VO2maxに到達出来ないと、4本目・5本目は苦しいだけで、思ったほどの効果が得られないという残念な練習になってしまいます。

インターバルでは1000m×5本、つなぎ400mジョグ120秒など「レスト短め」で実施している人も多いですが、ダニエルズさん的には疾走時間と同等か若干少ない位のレストが推奨されていますので、例えばキロ4のインターバルであれば、180秒~200秒程度のレストでも練習効果は高いようです。

レストを短くした方が、次の疾走時間で早くVO2maxに刺激を与えられるのでもちろん良いのですが、ペースを維持出来ないほどキツいのであれば考えものです。

そういう場合、マニュアル通りにレストを長めに取る方が、ペースダウンするよりよっぽど良い練習になります。

インターバルトレーニングは、練習の長期的な意味を考えながら行うこと。インターバル走はたしかにきつい。しかしIペースを、超えるべき目標ととらえないことだ。成功の鍵となるのは、コンスタントな練習である。インターバルトレーニングで自己記録に挑戦していては、コンスタントな練習もままならないだろう。インターバルトレーニングは長期的目標を達成する手段である。労力は最小限にとどめて、オーバートレーニングにならないようにしよう。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

レペティション

R(レペティション)トレーニングの主な目的は、無酸素性作業能、スピード、ランニングの経済性を高めることにある…特に大事なのは十分に身体を回復させ、正しい走動作で速く走ることだ。スピードをあげたときにもがき苦しむのは避けたい。フォームが崩れてしまうからだ。

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

400m80秒・休息3分×10セットより、400m80秒・休息2分×10セットの方が良い練習だ、と考えるのは誤り。

レペティションの練習の目的を考えると、後者の方が良くない練習になるのです。休息が少なく、もがき苦しんでフォームが崩れれば、この練習の目的は達成できないです。

レペティショントレーニングの休息時間は疾走時間の2~4倍の時間を休息する、というのが1つのガイドラインですが、むしろ、前回の疾走と同じように走れると感じるまで休息を取るのが大事です。

例えば1分30秒疾走すると、休息4分、ないしはもっと。休息はジョグやウォーキング、ストレッチなどでも構わないということ。

私も500mレペ×12本などやりますが、休息を十分に取るとはいえ、フォームが崩れないように考えながらも、キツく感じる練習です。

今日はチームの練習会。 仕事が終わって練習後すぐに補給するため、きなこ豆乳を作ってバナナを用意…あ、バナナ無いんだった。途中、コンビニ...

まとめ

VDOTについてのお話と、VDOTを「走力のものさし」として自分の基準とすること、そして実際にVDOTを使って実施する練習メニューをご紹介しました。

私は2013年の秋に「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」と出会い、VDOTによって自分の練習の基準を教えてもらいました。

それ以来、Eペース・Mペース・Tペース・Iペースを軸に練習を積んでサブ4未達から3年、2016年の秋にサブ3するまでに走力を上げる事が出来ました。

「閾値走って何だ?」 「閾値走ってたまに聞くけど、本当に効果があるのか!?」 「Tペース走でフルマラソンが速くなるのか!...

その過程で、細かい怪我はあったものの、大きな怪我や疲労の蓄積などによる長期離脱をすることなく、継続的に練習に取り組んでこれたのは「頑張りすぎない」「設定ペースを守る」という、ダニエルズさんの提唱する練習内容が自分に合っていたのかもしれません。

もし興味があれば、皆さまもダニエルズのランニング・フォーミュラを手元に置きつつ、日々の練習に少しずつでもTペース走、Iペース走などを継続的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

書籍では、5kmから10kmまでのトレーニング・ハーフマラソンのトレーニング・マラソンのトレーニングなどが章ごとに分けられ、各ランナーが走る「週間走行距離」によって分類されたトレーニングプログラムも掲載されています。

私はフルマラソンで節目の目標を達成するたびに感動で泣いてきましたが(笑)、あなたもきっと目標とするフルマラソンのタイムをクリアして、感動のゴールを迎えられる日が来ると思います!

頑張ってください!

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