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【解説動画】練習の基本 VDOT 初心者にもわかりやすい
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
ヤッソ800とは何か
ヤッソ800とは数多くの種類がある”インターバル走”の一種で
800mを疾走
400mを休息区間
として10本繰り返し実施する練習です。
考案者は、このブログでも何度か文言を引用しているアメリカのランナー雑誌”Runner’s World”(日本で言えばランナーズ)のチーフランニングオフィサーである、バード・ヤッソさんです。
なのでヤッソ800という名称なのですね。
ヤッソ800には分かりやすい目安があって、フルマラソンで目指すタイムに即したペースで800mを疾走、400mの休息区間は800mで走った時間と同じ時間ジョグで休息、という内容です。
その分かりやすい目安というのが、例えばフルマラソンの目標タイムによって疾走区間である800mを走るペースが異なり
★4時間(サブ4):4分(5’00/km)で800mを疾走
★3時間30分(サブ3.5):3分30秒(4’23/km)で800mを疾走
★3時間(サブ3):3分(3’45/km)で800mを疾走
という設定になります。
つまり
目標タイムと800mの疾走区間のタイムが数字的にリンクする
そんな感じになっています。
目指すフルマラソンのタイムに即した設定で10本出来れば、目標達成出来る走力を持っている目安になります。
ただこの設定がクリア出来たからといって必ず目標達成出来るわけではなく、42.195kmを走り切るスタミナや筋持久力など他の能力も必要なのは言うまでもありません。
設定クリアをする事で
目標達成のための、最低限のスピードはある!
そんな自信と、練習効果を得る事は出来ると思います(^^)
ではヤッソ800の練習効果とは、どのようなものがあるのでしょうか。
その点について解説していきます♪
ヤッソ800のペース・休息時間・練習効果は?
一般的なインターバルは疾走区間で1000m~1500mを頑張って走り、安静時から走り始めて2分後から始まるVo2max(最大酸素摂取量)への刺激時間を多く取ります。
つまりインターバル走の最大の目的は
Vo2max(最大酸素摂取量)の向上
でした。
またショートインターバルとして400mなど距離を短くする場合には休息時間を少なくして回復しないうちに次々とセットを数多く実施、そして刺激時間を少しでも多く取っていこうと考えて実施するものでした。
ではヤッソ800はどうでしょう。
ヤッソ800の設定ペースやレスト(休息時間)について
ヤッソ800の設定ペースと、VDOTを基準にして実施するインターバルペースを比較したのが以下の表になります。
目標 | ヤッソ800 | 1km換算 | レスト | VDOT | Iペース | スピード差 |
---|---|---|---|---|---|---|
サブ245 | 2分45秒 | 3'26/km | 6'53/km | 59.3 | 3'24/km | +2秒/km |
サブ250 | 2分50秒 | 3'33/km | 7'05/km | 57.3 | 3'30/km | +3秒/km |
サブ3 | 3分 | 3'45/km | 7'30/km | 53.5 | 3'42/km | +3秒/km |
サブ315 | 3分15秒 | 4'04/km | 8'08/km | 48.7 | 4'00/km | +4秒/km |
サブ330 | 3分30秒 | 4'23/km | 8'45/km | 44.6 | 4'18/km | +5秒/km |
サブ345 | 3分45秒 | 4'41/km | 9'23/km | 41 | 4'36/km | +5秒/km |
サブ4 | 4分 | 5'00/km | 10'00/km | 37.9 | 4'52/km | +8秒/km |
サブ415 | 4分15秒 | 5'19/km | 10'38/km | 35.2 | 5'03/km | +16秒/km |
サブ430 | 4分30秒 | 5'37/km | 11'15/km | 32.8 | 5'14/km | +27秒/km |
サブ445 | 4分45秒 | 5'56/km | 11'53/km | 30.6 | 5'25/km | +31秒/km |
サブ5 | 5分 | 6'15 | 12'30/km | 28.7 | 5'36/km | +39秒/km |
ヤッソ800はインターバルの一種とはいえ、ダニエルズのインターバルペースよりは少し遅め。
VDOTが下がるほど、通常のインターバルペースとは大きくスピードが異なってきます。
フルマラソン3時間45分を切るようなレベルからは通常のインターバルに比べて+5秒/km以内となる違いになってきますが、3時間45分を切る事を目標にするようなランナーでも、スピードのレベルはまちまち。
そしてレスト(休息区間)の設定ジョグペースが遅く、そして時間も長いです。
レペティションのような休息時間になってしまいますので、セット数を繰り返す事によるVo2max(最大酸素摂取量)への刺激時間の大幅アップも狙いにくい。
男性のスピードタイプのランナーであれば設定自体が楽すぎて、時間がかかる割にVo2maxへの刺激という意味では、練習効果が低い(あるいはあまりない)という事になりかねません。
ヤッソ800の練習効果とは?
ではヤッソ800の練習効果とは、どのようなものが考えられるでしょうか。
まずはVo2maxへの刺激という点から考えてみます
ヤッソ800のVo2maxへの刺激
マラソンの目標タイムを目指すランナーそれぞれのスピード能力に差があるので測定しずらいですが、仮にヤッソ800mのペースがインターバルペースとさほど差がないサブ3.5を目指すランナーだと仮定すると
以上の条件で10セット実施すると、単純計算では
15分のVo2maxへの刺激
という事になります。
実際には休息時間が多いとはいえ、セットを重ねる事によってわずかずつ刺激時間はアップしますので
17分~18分ほどVo2maxへの刺激(練習時間70分)
が考えられます。
同じだけのVo2maxへの刺激を通常のインターバル走で得ようとすると
インターバルペースでの疾走時間を5分間、休息を2分30秒に短縮して4本実施。
=刺激時間16分~17分(練習時間30分)
半分以下の練習時間で、Vo2maxへの刺激がほぼ同等になります。
Vo2max(最大酸素摂取量)への刺激という点で考えれば、費用対効果で通常のインターバルの方が効率が良さそうです。
じゃあ何でヤッソ800をやるか、という事になります。
なぜヤッソ800を選ぶのか
どんな練習でも、走れば練習効果は必ずあります。
期待出来る能力アップの内容や、その上昇幅、身体へのダメージなどが違う、そういう事です。
Vo2max(最大酸素摂取量)への刺激は通常のインターバルと比べて効率は悪めのようにも感じますが、人によっては
このヤッソ800を練習の中心に据えてサブ3.5やサブ3、さらに上のレベルまで到達するランナーはいます。
なぜか。
練習時間はかかるものの、設定ペースが適切(自分のIペース近辺にするなど若干のアレンジをする)ならVo2maxへの刺激時間は結構取れますし、距離も走るので有酸素運動で得られる効果をしっかり多めにゲット出来ます。
そして閾値ペースより速いですので、乳酸除去能力だって改善が期待できますし、速筋の強化にもなる。
なによりやってみると分かりますが、それなりの設定にすると、やっぱりキツいです^^;
なお、サブ4までのランナーであればヤッソ800の設定通りに実施しても、速く走るための様々な能力向上は期待出来ますので、インターバルペースより遅くて距離が短い分、やりやすい練習だと言えます。
何の練習でもそうですが「これだけでフルマラソンが速くなる!」というのはなく、様々な練習をバランス良く実施するのが大事です。
ヤッソ800を実施する事によって、走力向上に大きな役割を果たすのは間違いありません(^^)
まとめ
マラソンが速くなるための練習には、本当に様々なポイント練習やメニューがあります。
それぞれに効果があるのですが、人によって”やりやすい練習”というのは違ってきますので、ヤッソ800を含めて、まずは様々な練習を実際に自分でやってみる事です。
「ヤッソ800って練習時間の割にVo2maxへの刺激がないからやらない」
とバッサリ切り捨てず(笑)、違う刺激が入ると思ってお試しでやってみましょう。
その上で
「やっぱり合わない。イマイチ。」
ならそれで良いと思いますので、通常のインターバルや閾値走など他の練習に取り組めば良いと思います。
また、人によって練習の好き嫌いは様々です。
「インターバルのスピードで1000mとか1200m走るのがイヤだ」
「閾値走も良いけど、もう少しスピード感のある練習が良い」
「ヤッソ800の休息時間の長さや、練習の総距離が長めなのが良い」
「TT(タイムトライアル)のような全力走が好きだ(または超嫌いだ笑)」
などなど。
イタリアの名伯楽で、1988年ソウルオリンピック男子フルマラソンで金メダルを獲得したイタリアのボルディン選手も教え子であるレナート・カノーバさんは
「速くなるには好きな練習だけじゃダメだよ。役に立つ練習もやらないといけないよ」
と言います。
好きだからと言ってジョグばかりだと走力の伸びは限定的になりますよね。
役に立つ練習とは、ポイント練習の事に他なりません。
仕事や家庭などで忙しい私たち市民ランナーが、楽しく長くランニングを継続して記録を向上させていくには、ポイント練習の練習効果や効率を重視する事は、もちろん重要です。
でも、取り組みやすい練習を選ぶというのも、実は大事な要素です。
そうしないと続かない^^;
マラソンで記録を右肩上がりに向上させていくのに必要な、ベースとなる3大要素は
1.怪我をしないこと
2.タイム短縮へのモチベーションを失わないこと
3.走る事を嫌いにならないこと
です。
この3つの要素の上に、スピード練習の頻度や質、ロング走の実施、疲労や健康・体重の管理、シューズの選択など他の要件が加わってきます。
取り組みやすい、苦しいけど比較的好きなスピード練習を見つけるのは、走る事を嫌いになる可能性を低くします。
インターバルなんて、ランナーが走るのを嫌いになる率ナンバーワンの練習ですからね(笑)
ちなみに私にとって、やりやすい、心理的な負担が少ないスピード練習は”閾値走”でした。
インターバルペースで走る事やTT(タイムトライアル)は大の苦手で、ランニング初期の頃から今に至るまで、実は結構避けてます(笑)
それでもここまで(フル2時間48分台)まではこれてますし、ランニング9年生となる今まで楽しく、大怪我なく過ごせてますので、ボチボチやれば良いのかなと。
是非皆さんも様々な練習を試してみて、自分の軸となるようなスピード練習を見つけてくださいね。
コメント
げんさん、こんにちは。
いつもブログを穴が開くほど熟読しています!
今回の記事で、
★3時間(サブ3):3’00/kmで800mを疾走
★3時間30分(サブ3.5):3’30/kmで800mを疾走
★4時間(サブ4):4’00/kmで800mを疾走
とありますが、3’00で800mを走るトレーニングかと思いますので、3’00/kmではないのでは?
と思いました。
ブログや動画で色々な練習を紹介していただいているので色々やってみたくなってしまって困ります(笑)練習に耐えられる強い身体と、もっと時間が欲しい!
サブ3.5に向けて頑張ろうと思っていますのでこれからもブログ・動画楽しみにしています(^^)
ようこさん、こんにちは!いつもブログを見てくださり、ありがとうございます!
いけないっ!動画の方は直してから撮影したのですが、ブログを直し忘れてました!教えてくださり、ありがとうございますm(_ _)m
すぐに修正致しました。
ポイント練習をするために、まずはランナーの土台を作るというのは本当に大事。
ダニエルズのランニング・フォーミュラでは、週間64km・月間270km前後からのメニューしか本格練習は記載されてませんからね^^;
まずはそこまでの土台を築き上げてポイント練習を繰り返し、是非女子の上位3%と言われるサブ3.5目指して頑張ってください!
また間違ってるところがあったら、こっそり教えてくださいね(笑)