マラソンとメンタル、練習と本番のレース

マラソンとメンタル、練習と本番のレース

【記事の内容は、以下のサムネイルから動画で見ること…は出来ません(すみません笑)】

「フルマラソンの練習は腹八分でやめるのが良いと言われますが、そのせいで諦め癖(あきらめぐせ)がついてしまっているのか、30km以降に粘れていない気がします」

ハシルコト読者の方から、そんな言葉を頂きました。

マラソン練習は1回1回のトレーニングで全力を出し切らない、限界に挑まない、実力試しをしない、ある程度負荷を抑えて”点”でのトレーニング効果よりも”線”でのトレーニング効果を重視するのが基本中の基本でしたよね。

たまによい練習ができることは誰にでもある。しかし、継続性がなければ、実のあるトレーニングとはならない

ダニエルズのランニング・フォーミュラ第1版

現在の最新版は4版ですが、第1版にしか記載のない有益な文言なども多いですね~^^;)

練習に必要なのは、目的を明確にすることだけではない。

最大限の効果を、最大のストレスではなく最小のストレスで引き出そうとする賢いアプローチも求められる。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ第4版

ただその基本を守って“腹八分”をモットーに練習を継続していると、レースでの30km以降の粘りが無くなる、やめグセのようなモノがつく、弱くなっているような…という感覚を持つ方もいらっしゃるようです。

果たして、本当にそんな事になるのかどうか。

マラソンは”メンタルスポーツ”と言われる所以(ゆえん)

以前、ブログの記事と動画で”脳を制覇しろ!”という主題で解説をしたことがあります。

(以下のサムネイルからは、本当にYouTubeの動画が見れます笑)

【脳を制覇しろ】メンタルで攻略する、フルマラソンの最終盤 【記事の内容は、以下の動画でも見る事が出来ます!】 フルマラソンの30...

内容を見ると

(我ながら良い記事・動画だな~)

と感嘆する次第ですが(笑)、副題が”幸運のお守りで終盤に強くなるとは!?”という怪しさ満点のためかww、再生回数は4000回台と低調な動画(笑)

結論を言えば、目や耳などから情報を入れて脳に作用させるものが何かによって、パフォーマンスは大きく変わるというものでした。

例えばサブリミナル的なメッセージ。

被験者がペダルをこぐ際、目の前の画面に16ミリ秒間(まばたきの10分の1から20分の1の時間)、うれしそうな顔か悲しそうな顔の画像を定期的にはさみ込んだのだ。その結果、悲しそうな顔を見た被験者は、平均22分間強、バイクをこいだ。一方、うれしそうな顔を見た被験者は、それより3分間長くこぎ続け、同じ時点での主観的運動強度も低く報告した。サブリミナル的なメッセージであっても、笑顔を見ると安心し、その安心感が自転車こぎのような課題をどれだけきつく感じるかという強度の認知に入り込むのだ。

ENDURE 限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力の科学

あるいは偽薬効果。

被験者には各トライアルの前に異なる量のカフェインを摂ってもらうが、量については教えないと告げておいた。すると被験者が、中程度の量を受け取ったと思った時は1.3パーセント、大量だと思った時は3.1パーセントほどタイムが速くなり、プラセボだと思った時は1.4パーセントほど遅くなった。ところが実は、使われた錠剤はすべてプラセボだった。パフォーマンスの向上も、自転車をこいでいる間に自覚した苦痛の変化も、完全に被験者自身の期待感によるものだったのだ。

ENDURE 限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力の科学

そして、幸運のお守り効果(笑)

被験者は幸運のお守りを持っている時のほうが持っていない時よりも最初の目標を高く設定し、より長い時間粘りを見せた。これは心理学でいう”自己効力感”、つまり自分には能力がある、成功できるという自信を得ることで、実際にそうなるように行動が変わることを示している。

ENDURE 限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学

身体的な能力は練習で鍛えて伸ばしていったとしても、レース当日に様々なコンディションや状況が脳(心)に影響を及ぼして、せっかく今日のレースのために何ヶ月も頑張ってきたのに、その瞬間に楽をしたくなってしまって心を折らされてしまう。

そんな経験は、何度もフルマラソンを走っているランナーなら、1度はあるでしょう。

経験の多くないランナーにとってそれはある意味、仕方のないことなのかもしれません。

生理機能の限界が全身を阻むこともあるかもしれないが、その(生理機能の)限界に達する前に脳が介入して、「もうたくさんだ」という。そこでランナーは疲労感を覚え、減速しなければと感じる。~中略~

経験を積んだランナーは、「疲れている、スピードを落とせ」という心の声のあしらいに長けていることがわかっている。

ランニング・サイエンス

走歴を重ねる・多くの距離を走ることでRE(Running Economy・ランニングエコノミー)があがったり、LT(Lactate Threshold・乳酸閾値)の刺激時間が多くなればなるほどLTの能力があがったりしますが、精神力と持久力の関係も似たようなものがあります。

メンタルタフネス

マラソンは

・RE(Running Economy・ランニングエコノミー)

・LT(Lactate Threshold・乳酸閾値)

あるいはVo2maxのような各能力を上げる事によってVDOTが上がり、それによって各ランナーがどれくらいでハーフやフルなどのマラソンを走破出来るかの”目安”がある程度は判定出来ることは、ハシルコトを読んでくださっている読者の方であれば、もちろんご存知かと思います。

しかしながら、上記の能力に加えてもう1つ決定的な要因があります。

それが「メンタルタフネス」

誰が自分の生理学的潜在能力の限界に最も近づけるか、ということである、遅筋線維の割合のような生理学的特性が人によって大きく異なるのと同じように、「メンタルタフネス」にも大きな個人差がある。

アドバンスト・マラソントレーニング 第3版

“マラソンは経験のスポーツ”と並んで言われる言葉に

“マラソンはメンタルスポーツ”

とも言われますよね。

このメンタル。

マラソンランナーと一般の方では、面白い違いがあったりします。

いくつかの研究では、持久系アスリートと非アスリートを比べると、痛みに対する閾値が同じであっても、その耐性は持久系アスリートのほうが高い、という事が示されている。つまり、持久系アスリートも非アスリートも、痛みを感じたのは同レベルだが、持久系アスリートのほうが、その痛みに長時間耐える力が大きかった、ということである。

アドバンスト・マラソントレーニング 第3版

一般の方と同じような拷問を受けて(笑)も痛いのは痛いけど、それに耐えられる時間が長いのが私たち持久系アスリート(えっ…つまりHENTAI?笑)

冗談はさておき、日頃から「一時的なつらさ」に耐えて進む訓練(練習)と、耐えながらもゴールに行き着く”術(すべ)”を知っているからですよね。

さて、ここで最初に戻って。

日常的に腹八分の練習をしていると、フルマラソンの終盤に弱くなるのか、ということです。

ここからは私個人の見解や、個人の感想も入ってきますので…参考程度で^^;

腹八分の練習は、メンタルタフネスを下げるのか

“腹八分の練習”というのは言葉にすると簡単なように思えますが、どこを”腹八分”と考えるかは、人それぞれ大きく異なるのではないでしょうか。

閾値走20分通しで走るメニューを予定してして、苦しくなったので1回・2回止まる。

(限界まで頑張るのではなく、無理せず腹八分で止まるのは良いよね)

と思う人だって、いるかもしれません…いや、いました(笑)

(ちょ!!って思うけど笑)

単純にペースが速すぎた・VDOTが合ってなかったのかもですが、閾値走でもロング走でもキツくなってきた時のやめ時、ゆるめ時は難しいですよね^^;

逆に1週間で40kmほど・月間170kmほど走っているランナーが

(よ~し、レースも近いから35kmをレースペースで走るぜ!)

というのは過負荷であり、そのロング走を走力アップの力に出来る”メリット”よりも、怪我や疲労・線での練習効果が低くなる”デメリット”の方が多いと言えます。(腹八分ではなくなる)

(詳しくは以下の記事にて)

【解説動画】一度に走って良い距離ってどれくらい?マラソンの距離とダメージ 走力UP or リスク急上昇 その境界点はここだ! ブログの内容...

読者さんのご質問である

「フルマラソンの練習は腹八分でやめるのが良いと言われますが、そのせいで諦め癖(あきらめぐせ)がついてしまっているのか、30km以降に粘れていない気がします」

という文言では練習の内容までは、詳しく分かりません。

しかしながら(予定距離やセットを終えて、余裕のある状態でやめるのではなく)

・苦しいからやめる

・止まりたい、歩きたいからストップする

という練習を日頃からしていれば、それは“やめグセ”や”諦(あきら)めグセ”がつくのも致し方のないところ。

予定の距離やセット数があるのであれば、キツくなっても

・少しペースを落として、予定距離やセットまで粘れる範囲で粘る

・キツいその瞬間にパタッと終わるのではなく、あと1km・あと1セット頑張る

そんな感じで、少なくとも少し粘る“粘りグセ”をつける。

粘って1km進んでいたら何故か楽になって、さらに走れることもありますしね。

そういう経験も、とっても大事。

腹八分の練習(予定)であっても、その日のコンディションやメニューによってキツい時は本当にキツい。

でもそこで、何を考えて練習をするか。

練習はレースのように、レースは練習のように。

ペースダウンしたい、ショートカットしたい、もうやめたい、という誘惑に駆られるとき、自分の目標が本当に達成したものであるなら、それを力の源泉に変えることができるだろう。

アドバンスト・マラソントレーニング 第3版

“腹八分”とは、スピード練習で苦しくなった時、ロング走で身体が疲れてきた時や足が重くなってきた時にやめる事ではありません。

その日・その週・その月・そのフェーズによって”腹八分”の質と量を考えて練習メニューを考え、その日その日の練習内容に関しては、決めたペースと距離を守りつつ、全力を注いで頑張ることです。

最後に、勘違いをしてはいけない部分。

腹八分=楽(ラク)をする、ではありません。

楽をするわけではないので、それでフルの終盤に弱くなるハズがありません。

フルマラソンの終盤に弱いのは、そのために必要な能力が不足しているからに他なりません。

それが“メンタルタフネス”ということであれば、そこを鍛えるしかない。

フルの終盤に弱い、すぐに諦めてしまいがち…ということであれば、特異性の意味からすればスピ練のゼーハーを耐えるというよりは、長い距離を走る時にやってくる身体の疲労や脚の張りなどに慣れること。

ロングのペース走や多セットの変化走を重ね、心身共に”その状況”に適応させていくことしか、近道はないと思います。

キツいことをせずに楽に身体が強くなったり、メンタルが超絶強くなれば、ホント最高なんですけどね~~(笑)

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ありがたい事に大…

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コメント

  1. 千葉 より:

    根性という言葉では片付けられないし根性とも意味が違うとても大切なアプローチのブログでした!
    フルマラソンに取り組む方で僕よりハーフまでは抜群に速くてもフルだとそうでない方もいます。
    単純に筋持久力だけの問題ではないですよね。
    伸び代にはいろんな観点があっておもしろいですね!
    やはりマラソンは奥が深い!

    • げん より:

      千葉ちゃん、コメントありがとうございます!
      根性でフルマラソンを速く走れれば、ヤンキー最強(笑)
      各能力が高ければ一定程度は速く走れますが、メンタルも強くないと”その先”には到達出来ない。

      ハーフまでは速いスピードで押せてもフルはイマイチ…というランナーは、特に男性のスピードタイプ(速筋多め)に多いですよね。
      スピードタイプは筋疲労も顕著に感じやすく、メンタルも遅筋タイプや女子より格段に弱め(私のことですが笑)

      そういう事も含めて、おっしゃる通りマラソンって奥が深いですね!!