目次
改めて考える、フルマラソンの終盤対策【上】
【記事の内容は、以下のYouTube動画風サムネイルから動画で見ること…は、今回も出来ません(“気持ち”は、動画にもしたいんです!^^;)】
フルマラソン・42.195kmという距離を、いかにうまく・最後まで走り切るか。
これは私たち一般市民ランナーのみならず、ハイレベルな市民ランナーや実業団選手・プロランナー・世界的なレベルの選手にとっても”最重要課題”であることは、間違いありません。
“うまく”という部分に全てが集約されていますが、フルマラソンを速いペースで、そして自分の実力を全て出しきって走り切るためには基本の3大能力
・Vo2max(最大酸素摂取量)
・RE(Running Economy・ランニングエコノミー)
・LT(Lactate Threshold・乳酸閾値)
の他に、上記を鍛えて上げてきた能力を限界まで発揮するために
・メンタルタフネス
が大事だということは、以下の記事で記載しました。
しかしながら、基本の3大能力に加えて”メンタルタフネス”も頑張って鍛えて、疲労抜きも万全、自分の考えうる万全の状態でレースに臨んだにも関わらず
レース終盤で大撃沈
となってしまうこと、身に覚えがないでしょうか。
つまり…
VDOT的には適切なラップを刻み、序盤から息も切れずにジョグのような感覚で巡航。
気持ち的にも「キツくなっても絶対に粘り切る!!」と、メンタルタフネスを最大限発揮する覚悟を決めて走っていても…
30km前後で脚が棒になって、なす術なくペースダウン
これですね。
マラソンの走歴が比較的浅いランナーが
(速く走ると撃沈しちゃうから、少しゆっくりめでレースを展開しよう)
と考えて遅めのペースで走るも結局、ある程度速く走る時と同じく、終盤は撃沈してしまう。
「速く走っても遅く走っても、結局は30kmで疲れてしまう」
という状態から抜け出すのが容易でないのは、“ある理由”が存在しているから。
次のフルマラソンの本番まで日にちがあり、しっかりレースの終盤を意識して鍛えるために、秋や春のレースに挑むために取り組むべきこと。
解説していきますね(*^^*)
フルマラソンに必要な”もう1つ”の大事な能力
ダニエルズのランニングフォーミュラで多くのランナーが
「はっ??」
となる部分に、以下の文言があります。
Mランニングの主な効果は、メンタル的なもの、つまり設定したペースで走る自身を高めるものと言ってもいい。生理学的な効果はEランニングとまったく変わらない。
「ちょっ!!なんでEペースよりずっと速いMペースで頑張って走ってるのに、効果が変わらないんだよ、ダニエルズの馬鹿野郎!!(TдT)」
ですよね(笑)
なぜ「馬鹿野郎」(笑)となるかと言えば、みんな感覚的に
(Eペースで走るよりMペースの方が、良い練習になっているに決まってる!)
って思っているからだと思います。
だってEペースよりMペースの方が断然ゼーハーするし、超疲れるしww
その”感覚的”な部分は、ダニエルズさんも記載している通り
「生理学的には」
というところに、ポイントがあります。
つまり違う視点から見れば、Mペースで走るのと、Eペースで走るのとでは明らかに練習効果が違います。
違う視点とは…「バイオメカニクス的に見ると」ということになります。
人間の身体が動く時には、骨や筋肉に物理的な力が作用しています。生体内にかかる力を、骨や筋肉の内部組織の構造にまで着目して分析するのが「生体力学(バイオメカニクス)」という学問です。
生理学的に見ればEペースでもMペースでも効果が同じ(正確には乳酸の産出量がEとMでは違うので生理学的にも効果が違うような気はしますが^^;)という事になりますが、フルマラソンを速いペースで巡航して最後までペースダウンせずにゴール出来る能力は、当然ながら”緩い”Eペースだけでは獲得出来ませんよね^^;
それでいけるなら、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)のような練習だけで、本番で走る速いペースに対応出来るという事になっちゃう。
この「バイオメカニクス」的な視点からトレーニングをすること、それが前述の「4つの能力(Vo2max・LT・RE・メンタルタフネス)」に加えて、フルマラソンの終盤にペースダウンさせないようにする、もう1つの”キモ”になる能力です★
つまり簡単に言えば
・下半身強化
・脚筋力強化
ということですね(*^^*)
バイオメカニクス的に下半身・脚筋力を強化するために必要なトレーニング、見ていきましょう♪
特異性だけに偏らないトレーニングの重要性
フルマラソンの終盤対策としておなじみなのは
・30km走
ですよね。
ジョグやEペース範囲内(E下限~E上限)、あるいはモデレート(Mより15秒/km前後遅く)、そしてMペースでの30km走など、ペースは様々。
感覚的にはレースに近いペースほど効果があるように感じるので、本番に近づくほどレースペースや、レースペースに近いスピードでの30km走をする方も多いと思います。
中にはレースで走る状況に近い(特異性が高い)ほど良いと考えて、レースペースでの35kmや40kmを練習で走る、あるいは練習代わりにレースにエントリーして、42.195kmを走るような方も。
走ることはつまり、走るために必要な筋肉を鍛える”筋トレ”ですから、それを継続的に実施しても怪我をしない、疲労が溜まりすぎない、問題が発生しない、どんどん終盤に強くなるのであれば、それでも良いかもしれません。
しかしながらフルマラソンは総合力勝負で、1回そういう”強烈な練習”をしても、次の練習に影響が出て良い練習が積めなくなってしまっては(線としての練習効果が低くなるのでは)身も蓋もないので、日々スピード練習やジョグなどもしないと総合力が下がってしまう。
たまによい練習ができることは誰にでもある。しかし、継続性がなければ、実のあるトレーニングとはならない
つまりトレーニングを”線”で見た時、全体の成長で見た時に”特異性”の高い練習ばかりでは、成長度という意味では阻害される可能性があります。
特異性だけに頼ったトレーニングでは改善の効率が低いことが分かります。特異性に加えて、力やスピードに過負荷をかける運動も組み合わせて複合トレーニング化することで、もっと効率よく能力を改善できるのです。
ハシルコトを読んでいる多くの方がスピード練習は実施していますので、その部分は大丈夫だと思います。
ここで大事なのは、スピードとは逆の「遅く・重い練習」です。
数万回の着地衝撃に耐えうる下半身の獲得
フルマラソンの30km以降は、もちろん前述の生理学的な(持久力的な)能力も重要ですが、何と言ってもフルマラソンは数万回に及ぶ着地衝撃に耐え続けなくてはいけないですので、バイオメカニクスから見る
耐久力勝負
みたいなところは、あります。
「そんなの、根性や我慢強さで何とかしてやるぜ!」
と息巻いても脚が無くなれば、そんな気持ちだけではどうあがいてもペースダウンを抑えきれない辛い状況になること、フルマラソンを走った事が市民ランナーであれば、良く分かりますよね^^;
多少アップダウンがあろうとも、フルマラソンの終盤からゴールまで安定してラップを刻めるランナーになるには、日々どんな事を心がけるべきなのでしょうか。
①日々のジョグ~Eペース下限はアップダウンのある場所で実施
これはもう基本中の基本ですが…走る距離の8割以上を占める日々のジョグをフラットな場所でやるのか、アップダウンの多い場所で実施するのかで、数年~10年積み重なれば大差がつきます。
もちろん疲労困憊な日や、厳しい練習と練習の合間の”つなぎ”的な、疲労をなるべく積み上げたくない時のジョグはフラットでごくゆっくり走るのはOK。
ただ日常的なランニングであれば、出来るだけアップダウンの多いコースを選択したいところ。
フラットな場所でのジョグでも有酸素運動の効果はもちろんありますが、筋トレ効果・フルの終盤対策としての”ついで効果”も狙いたいですね★
(不整地で実施すれば様々な角度から着地出来ますので、故障の予防&アスファルトより反発がもらいにくいですので、さらに良い練習になります♪)
峠走や登山・トレイルなどの山活動
峠走
峠走は岩本能史さんが書籍で紹介した事で有名ですが、岩本さんは神奈川県と静岡県の県境にある”足柄峠”の往路13kmをひたすら登り、復路13kmをひたすら駆け下るというトレーニング。
峠走では、ランニングに必要な次の4つの要素が一気に鍛えられます。
①推進力 ②心肺機能 ③フォーム ④着地筋
登りでは着地衝撃を抑えつつハムやお尻など”推進力”の源となる筋力強化、下りでは大きな着地衝撃を一歩一歩受けるため、太ももの前側(大腿四頭筋)に強烈な刺激が入ります。
ただしある程度鍛えていないと下りでは怪我をしやすいですし、週間・月間の中での実施頻度も調整しないと身体に不具合が出やすいですので…ランニング中級者~上級者向けです。
「よ~し、毎週峠走をやりまくって、すぐに強くなってやるぜ!」
と思っても、週間走行距離・月間走行距離を増やす時と同じく一気にMAXでやろうとせず、少しずつ少しずつ増やしていくようにしてくださいね。
登山・トレイル
「登山やトレイルをすると、筋肉が付いてフルマラソンが遅くなる」
そんな事が”まことしやか”に言われたりもしますが、本当にそうでしょうか。
身体を極限にまで絞って鍛え、一国のナショナルレコードを狙う選手や世界レベルのランナーであれば、そうかもしれません。
しかしながら市民ランナーレベルで言えば、むしろ筋力不足が影響してフルマラソンの終盤に脚が棒になって撃沈…みたいなランナーの方が多いように思います。(あ、個人の感想です笑 でも山からフルマラソンに来る人って、鬼の脚筋力で終盤強いイメージないです?)
北海道マラソンを優勝したこともある吉田香織さんは、実業団ランナーの頃に何年も何レースもサブ2.5が出来ずにいたところ、練習にトレイルランを取り入れたらサブ2.5が出来た、というのは有名なお話です。
そうして練習にトレイルランを取り入れた矢先に、練習のつもりで出た2015年のさいたま国際マラソンでまさかの自己ベスト(2時間28分43秒)が出ました。今までは後半になるとカラダが急に動かなくなっていたのに、最後までしっかり走れて。
山を登ると分かりますが、かなりの”筋トレ”だと感じられます。
ちなみに私たちランナーは、一般のハイカーさん(登山者さん)達に比べて、登るのが速い。
それはつまり、ランニングで”筋トレ”を日常的に実施しているようなものなので筋力が発達しているため、登山でのスピードが一般の方とは全然違ったりします。
しかしながら私たちロードのランナーがトレイルのレースなどに出場すると、仮にロードで同じようなタイムを持つようなトレイルランナー達の登りの速さ、脚筋力の違いに圧倒されます。
マラソンには4つの要素が必要だと思っています。スピード、フォーム、心肺機能、それから脚筋力。この4つ目の脚筋力、脚の持久力と言い換えてもいいかもしれませんが、これがいちばん大事です。ほかの3要素すべてのベースになるので。~中略~ トレイル特有のアップダウンにフィットさせていくことで、この重要な脚筋力が鍛えられます。(吉田香織さん)
山でガッチリ下半身を鍛えることは、フルマラソンの終盤でペースダウンをさせない”ベース”になり得るんです(*^^*)
ただ山には独特のルールや心がけておく事などがありますので、別記事で勉強して鍛えに行ってくださいね★
少し長くなってきましたので、この記事を【上】としてまとめさせて頂き、次の記事改めて考える、フルマラソンの終盤対策【下】で
・Mペースより速いペースでのロング走・変化走
・筋トレなどの補強運動
について解説しようと思います(*^^*)
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コメント
今回も参考になりました!
筋持久力という表現にも置き換えれると理解してよろしいでしょうか?
今年3月の自分のレースを振り返ると正にこれでした!!
スピードに見合った筋持久力が備わっておらず呼吸はまだ頑張れてるのに脚が動かなくなる・・・
まして左脚不調が長引く中での練習不足、距離走不足、直前にコンディションが上がってきて調子乗って前半予定より飛ばし過ぎがモロに出たレースでした。
【下】の発信を楽しみにしてます!
げんさんとはレベチ過ぎてこのようなことを言うのは恐縮ですが秋冬本命レースへ向け残り5ヶ月お互い頑張りましょう!
千葉ちゃん、いつもありがとうございます!!
色々な書籍やwebで勉強をしている千葉ちゃんだけありますね。バッチリ言い換えられてしまいました(笑)
レースまでの練習内容やコンディションによって筋持久力も変わりますから…
どれくらいでいけば42kmで力を使い切れるのか、いかに枯渇させず余らせずゴールまでたどり着くのか、本当に難しいですよね^^;
今の筋持久力が「84」あるから、1kmごとに「2」ずつ使っていけば42kmいけるぜ~とか、ゲームみたいに数値で分かれば楽なんですが(笑)
秋は防府読売マラソンに向けて、同年代の私たちは特に怪我のないよう、適度に頑張りましょう~~★