T(閾値)強度は、言わば快適なきつさである。確かに、比較的速く走ってはいるが、そこそこの時間(練習なら20~30分間)維持できる、というペースだ。レースなら、休養をとってピーキングすれば60分間は維持できる。
閾値走とは、持久力を必要とするマラソンのタイム短縮のために実施する、持久力向上に極めて有効な練習方法です。
足を交互に前に出す、簡単なお仕事のようにも思える”走ること”。
しかしフルマラソン(42.195km)のような長い距離を、速いスピードで走るために必要だと言われるトレーニングには様々なものがあります。
効率的に、短期間でマラソンのタイムを短縮していくためには、日々どんなトレーニングを選択していくかが非常に大事です。
その中でも、フルマラソンを速く走るための練習としては非常に効果が高く、基本のポイント練習の1つとするのにふさわしいのが閾値走(閾値トレーニング、LT走、テンポ走)と言えます。
なぜ、そんな事が言えるのか。
これまで世界中のランナーが閾値ペースのランニングを継続して確実に速くなっている事。
そして現在でも世界的なレベルの選手から市民ランナーに至るまで実施され続けており、その実績は十分すぎるほど。
つまり、閾値走が効率的・効果的に走力アップ出来る事は確定しているからです。
私が実際にサブ4未達からサブ3・サブエガ(2時間50分切り)達成まで記録を伸ばせた理由の1つに、基本のポイント練習にしてやってきたのが閾値走だったからです。
確実に効果があって効率的に速くなれる閾値走をやらないなんて、もったいないですよ!
閾値走のやり方、効果、注意点について解説しますね(^^)
目次
【関連動画】効果抜群!閾値走(Tペース走・LT走)その効果とやり方
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
閾値走を実施する前に
「よし、これから閾値走をやってみよう!」
と考えているランナーの方が、まず一番はじめにやって頂くこと。それは
POINT
自分のVDOTを確認すること
です。
VDOTとは、一言で言えば
「走力を測る”ものさし”」
のようなものです。
自分がどれ位の走力なのかを、数値で明確に理解する事が出来ます。
VDOTについての詳細はこちらの記事を見て頂きたいですが、VDOTの確認方法だけ簡単に。
VDOTの確認方法
VDOTを確認するための一覧表は以下の通りです。
表の右下「次」ボタンをクリック(タップ)すれば、表示のVDOTより高い数値のVDOTを確認出来ます。
VDOT | 5km | 10km | ハーフ | フル | E | M | T | I | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
30 | 30'40 | 63'46 | 2'21'04 | 4'49'17 | 7'27-8'14 | 7'03 | 6'24 | - | |
31 | 29'51 | 62'03 | 2'17'21 | 4'41'57 | 7'16-8'02 | 6'52 | 614' | - | |
32 | 29'05 | 60'26 | 2'13'49 | 4'34'59 | 7'05-7'52 | 6'40 | 6'05 | - | |
33 | 28'21 | 58'54 | 2'10'27 | 4'28'22 | 6'55-7'41 | 6'30 | 5'56 | - | |
34 | 27'39 | 57'26 | 2'07'16 | 4'22'03 | 6'45-7'31 | 6'20 | 5'48 | - | 2'00 |
35 | 27'00 | 56'03 | 2'04'13 | 4'16'03 | 6'36-7'21 | 6'10 | 5'40 | - | 1'57 |
36 | 26'22 | 54'44 | 2'01'19 | 4'10'19 | 6'27-7'11 | 6'01 | 5'33 | 1'54 | |
37 | 25'46 | 53'29 | 1'58'34 | 4'04'50 | 6'19-7'02 | 5'53 | 5'26 | 5'00 | 1'51 |
38 | 25'12 | 52'17 | 1'55'55 | 3'59'35 | 6'11-6'54 | 5'45 | 5'19 | 4'54 | 1'48 |
39 | 24'39 | 51'09 | 1'53'24 | 3'54'34 | 6'03-6'46 | 5'37 | 5'12 | 4'48 | 1'46 |
40 | 24'08 | 50'03 | 1'50'59 | 3'49'45 | 5'56-6'38 | 5'29 | 5'06 | 4'42 | 1'44 |
41 | 23'38 | 49'01 | 1'48'40 | 3'45'09 | 5'49-6'31 | 5'22 | 5'00 | 4'36 | 1'42 |
42 | 23'09 | 48'01 | 1'46'27 | 3'40'43 | 5'42-6'23 | 5'16 | 4'54 | 4'31 | 1'40 |
43 | 22'41 | 47'04 | 1'44'20 | 3'36'28 | 5'35-6'16 | 5'09 | 4'49 | 4'26 | 98 |
44 | 22'15 | 46'09 | 1'42'17 | 3'32'23 | 5'29-6'10 | 5'03 | 4'43 | 4'21 | 96 |
45 | 21'50 | 45'16 | 1'40'20 | 3'28'26 | 5'23-6'03 | 4'57 | 4'38 | 4'16 | 94 |
46 | 21'25 | 44'25 | 1'38'27 | 3'24'39 | 5'17-5'57 | 4'51 | 4'33 | 4'12 | 92 |
47 | 21'02 | 43'36 | 1'36'38 | 3'21'00 | 5'12-5'51 | 4'46 | 4'29 | 4'07 | 90 |
48 | 20'39 | 42'50 | 1'34'53 | 3'17'29 | 5'07-5'45 | 4'41 | 4'24 | 4'03 | 89 |
49 | 20'18 | 42'04 | 1'33'12 | 3'14'06 | 5'01-5'40 | 4'36 | 4'20 | 3'59 | 88 |
50 | 19'57 | 41'21 | 1'31'35 | 3'10'49 | 4'56-5'34 | 4'31 | 4'15 | 3'55 | 87 |
51 | 19'36 | 40'39 | 1'30'02 | 3'07'39 | 4'52-5'29 | 4'27 | 4'11 | 3'51 | 86 |
52 | 19'17 | 39'59 | 1'28'31 | 3'04'36 | 4'47-5'24 | 4'22 | 4'07 | 3'48 | 85 |
53 | 18'58 | 39'20 | 1'27'04 | 3'01'39 | 4'43-5'19 | 4'18 | 4'04 | 3'44 | 84 |
54 | 18'40 | 38'42 | 1'25'40 | 2'58'47 | 4'38-5'14 | 4'14 | 4'00 | 3'41 | 82 |
55 | 18'22 | 38'06 | 1'24'18 | 2'56'01 | 4'34-5'10 | 4'10 | 3'56 | 3'37 | 81 |
56 | 18'05 | 37'31 | 1'23'00 | 2'53'20 | 4'30-5'05 | 4'06 | 3'53 | 3'34 | 80 |
57 | 17'49 | 36'57 | 1'21'43 | 2'50'45 | 4'26-5'01 | 4'03 | 3'50 | 3'31 | 79 |
58 | 17'33 | 36'24 | 1'20'30 | 2'48'14 | 4'22-4'57 | 3'59 | 3'45 | 3'28 | 77 |
59 | 17'17 | 35'52 | 1'19'18 | 2’45’47 | 4'19-4'53 | 3'56 | 3'43 | 3'25 | 76 |
60 | 17'03 | 35'22 | 1'18'09 | 2'43'25 | 4'15-4'49 | 3'52 | 3'40 | 3'23 | 75 |
61 | 16'48 | 34'52 | 1'17'02 | 2'41'08 | 4'11-4'45 | 3'49 | 3'37 | 3'20 | 74 |
62 | 16'34 | 34'23 | 1'15'57 | 2'38'54 | 4'08-4'41 | 3'46 | 3'34 | 3'17 | 73 |
63 | 16'20 | 33'55 | 1'14'54 | 2'36'44 | 4'05-4'38 | 3'43 | 3'32 | 3'15 | 72 |
64 | 16'07 | 33'28 | 1'13'53 | 2'34'38 | 4'02-4'34 | 3'40 | 3'29 | 3'12 | 71 |
65 | 15'54 | 33'01 | 1'12'53 | 2'32'35 | 3'59-4'31 | 3'37 | 3'26 | 3'10 | 70 |
66 | 15'42 | 32'35 | 1'11'56 | 2'30'36 | 3'56-4'28 | 3'34 | 3'24 | 3'08 | 69 |
67 | 15'29 | 32'11 | 1'11'00 | 2'28'40 | 3'53-4'24 | 3'31 | 3'21 | 3'05 | 68 |
68 | 15'18 | 31'46 | 1'10'05 | 2'26'47 | 3'50-4'21 | 3'29 | 3'19 | 3'03 | 67 |
69 | 15'06 | 31'23 | 1'09'12 | 2'24'57 | 3'47-4'18 | 3'26 | 3'16 | 3'01 | 66 |
70 | 14'55 | 31'00 | 1'08'21 | 2'23'10 | 3'44-4'15 | 3'24 | 3'14 | 2'59 | 65 |
あなたは表にあるような、5kmや10km・ハーフなどのレースを経験した事があるでしょうか。
「ある!」
という方は、その時のレース結果を確認して表に当てはめてください。
例えば10kmのレースを1度走り1時間3分40秒だった、という事であればVDOTはおおよそ30。
10kmは1時間3分40秒だったけど、違う日に走った5kmのレースでは29分だった、という場合。
5km29分はVDOT32に相当します。
距離の違うレースのタイムを複数持っている場合は、最も高いVDOTを採用します。
したがって、ここでは5km29分のタイムを参考にVDOTは32にします。
「レースを走った事がない!」
という方は一度レースに出てみても良いですし、フラットなコースで気象条件が良い時に5kmや10kmのタイムトライアルをやってみても良いでしょう。
タイムトライアルだとレースと違って若干追い込みきれない場合もありますが、そのタイムから簡易的に自分のVDOTを確認してみてください。
VDOTでトレーニング強度を決定する
自分のVDOTが分かったら、表に記載してあるVDOTの欄を確認してください。
表の項目、E・M・T・I・Rは、それぞれ
E:Eペース(イージーペース)
M:Mペース(マラソンペース)
T:Tペース(閾値ペース)
I:Iペース(インターバルペース)
R:Rペース(レペティションペース)
という意味であり、それぞれに違う効果が期待出来る練習方法です。
詳しくはこちらの記事をご覧になって頂きたいですが、ここでは閾値走について掘り下げていきます。
例えばVDOTが30であれば、T(閾値ペース)の部分に記載されているのは6’24/km。
このペースがVDOT30のランナーにとって最適なトレーニング強度(閾値走のペース)になります。
心拍数による閾値走の強度調整
自分のベスト記録によってVDOTと閾値走のペースを確認して閾値走を実施した際
「ものすごくキツくて、心拍数もとっても高かった気がする…」
という場合があります。
ベスト記録を出した時よりも走力が下がっている、あるいは実施日によっては調子が悪いこと、疲労が溜まっていて良い走りが出来ない事もあります。
そのような場合に適切な閾値走の強度かどうかのを確認するために
心拍数で確認してみる
という方法があります。
閾値走の強度として適切な心拍数は、最大心拍数の88%~90%になります。
閾値ペースの強度を生理学的に表現すると、おおよそ86~88%Vo2max(88~90%HRmax)である。これは十分にトレーニングを積んだランナーの場合であるが、そうでないランナーでも80%は超える。
最大心拍数は様々な方法で確認出来ますが、10分間の全力走をしたり、1000mインターバルを何本もやって追い込んだりしないといけないので最高にキツく、普通はやりたくありません(笑)
ここは簡易的な最大心拍数の確認でいきましょう(^^)
一般的な、ランニングをしていない方(あるいはランニング初心者)の最大心拍数は
220-年齢
で分かります。
40歳=180(簡易的に適切な閾値心拍:162)
50歳=170(簡易的に適切な閾値心拍:153)
60歳=160(簡易的に適切な閾値心拍:144)
と、少々低めに算出されます。
これからランニングを始める、あるいはランニング歴が短い方は上記を目安にしても良いと思います♪
しかしある程度走っているランナーであれば、ここまで低くないのが一般的。
ランナーが最大心拍数を簡易的に知る場合は
210-(年齢/2)
の方が、割と実際の最大心拍に近い方が多いように見受けられます。
40歳であれば210-20=190(簡易的に適切な閾値心拍:171)
50歳であれば210-25=185(簡易的に適切な閾値心拍:167)
60歳であれば210-30=180(簡易的に適切な閾値心拍:162)
というように。意外と高いですよね★
実際にある程度走ってるランナーが”思いっきり”追い込んだ練習後に心拍を確認すれば、年齢に沿った、上記に近い値の「最大心拍数」の数値が確認出来ると思いますよ(^^)
閾値走のやり方【基本編】
自分のVDOTが分かり、最適な閾値走のペースが分かったのであれば、日々の練習の中で閾値走を実施する方法は割と簡単です。
基本的な閾値走の練習例としては、
アップジョグ3km → 閾値走20分間 → ダウンジョグ3km
これだけです。
これを週1回~2週に1回やってれば、走力アップが著しい
という、夢のような練習(笑)
アップジョグの際にはWS(ウインドスプリント)を数本行うと、閾値走にスムーズに入っていけます。
ダウンジョグでも軽くウインドスプリントをすると、気持ち良く終われます。
閾値走をやる時に、注意するべき点は3つ。
1.基本は20分間、閾値走のペースで走ること
2.気象条件が良く、出来るだけフラットな場所で行うこと
3.ペースを上げたり下げたりしないこと
1.基本は20分間、閾値ペースで走ること
閾値走の疾走時間は、基本的に20分間です。
では何故、閾値走は20分間なのか。
ダニエルズのランニング・フォーミュラに明確に20分であるべき理由を記載している部分がないのですが、理屈は比較的簡単です。
各ランナーにとって閾値(T)ペースはレースにおいて50~60分間持続出来る速さになります。
少し難しい表現になってしまうのですが、閾値とは血中乳酸濃度が急上昇する変換点です。
閾値ペースを超えると乳酸を処理しきれずに「血中乳酸濃度」が急上昇してしまいます。
すると、あっという間に息が切れてペースが維持出来なくなりますが、乳酸を処理出来るギリギリの所である程度長い時間を走る事で、血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力を高められる、という訳です。
しかし、血中の乳酸除去能力を高めたいがために「閾値ペースである程度長い時間を走る」と言っても、レースと同様に限界まで(50分~60分)閾値ペースで走ると、疲労とダメージが大きすぎて練習の継続性に難があります。
従って閾値で走るのは20分程度にしておくのが、日々の練習の中でコンスタントに血中の乳酸処理能力を向上させていく練習を実施するのに適切である、という事になるのです。
実施すると分かりますが、20分でも充分にキツめの練習であり、ダニエルズさんが書籍の中で書かれている通り「終わるのが待ち遠しい」練習です^^;
2.気象条件が良く、出来るだけフラットな場所で行うこと
テンポ走は必ず気象条件がよいときに行い、比較的フラットで走路面のコンディションのよい場所を選ぶこと。この練習の目的は、一定の運動強度をある程度長い時間持続することである。アップダウンが激しいコースや総路面の悪いコース、強風は、一定ペースを守る能力に悪影響を及ぼし、練習の目的を果たせなくなってしまう。
※テンポ走=ペース走
次項で記載しますが、閾値走は一定のペースで上げない・下げないが基本中の基本です。
しかし悪天候や強風・悪路・アップダウンのあるような場所では、身体にかける負荷が変わってしまいます。
とはいえ、私もそうですが、実際の練習現場では「完全なフラット」という練習場所に恵まれたランナーは少ないかもしれません。
信号がある、人通りが多い、怪我が不安だから土の上でやりたい、アップダウンがある…
人それぞれぞれ様々な事情があるので、
自宅周辺で最も条件に近い、やりやすい場所で実施すれば充分です。
ちなみに私が閾値走を実施する場所は、アップダウンはありますが、信号が無く人通りが少なめの走りやすい場所(自宅近くの公園)です。
アップダウンがあるため、VDOTから導かれる設定ペースより数秒/km遅めで実施していますが、たまにフラットな屋内練習場で実施する場合はVDOT通りの設定ペースで走れますので、さほど問題は無いと考えています。
3.ペースを上げたり下げたりしないこと
テンポ走の一番の課題は、適正ペースを維持し、タイムトライアルにならないように抑えて走ることであろう。適正ペースは、それよりも速い(あるいは遅い)ペースと比べて練習効果が高い、ということを忘れてはならない。
閾値走としてスタートしたものの、気分が盛り上がってきて頑張ってしまい、タイムトライアルのようなキツさ、タイムでフィニッシュしてしまった…そんな事が実際の練習ではあります。
「でも、閾値走より速いペースで走ったのだから、練習効果は高かっただろう」
などと考えたら…
ダニエルズ先生に喝を喰らいます(笑)
「(閾値走の)適正ペースは、それよりも速いペースと比べて練習効果が高い」
これを肝に命じなければいけません^^;
たまにダニエルズ先生は、実際の感覚と比較して
「ホントかな~?」
という記述をされている時があります。でも本当です。
練習というのは”点”(1日の練習強度)で評価するのではなく、長い目(線)で見ていくべきであり、閾値走を適切なペースで実施する事が、年単位で評価した場合に最も効率良く走力アップが可能になるポイントなんです。
LT(閾値)というのは急激なアップが難しく、数年~10年かけて上げていくものであり、その間に怪我や疲労のリスクを出来るだけ取らないのが望ましいのです。
その他にも、ロング走を実施する時、EペースとMペースどちらでやる方が練習効果が高いか、という話でも同じことが言えます。
Mランニングの主な効果は、メンタル的なもの、つまり設定したペースで走る自信を高めるものと言ってもいい。生理学的な効果はEランニングとまったく変わらない。
「えー!頑張って速いMペースで走るのはメンタル的なもの、自信構築ってだけなのかいっ!Eペースと効果が同じとは(TдT)」
とも思いますよね^^;
EとMでは生理学的には効果が変わらくとも、Mランニングの方がトレーニングの3原理・5原則にある「特異性の原理」によって、活動筋の向上など”生体力学的”な向上は見込めるので良いのですが、負荷が非常に高いので継続性には難があります。
でも、ちゃんと適切な閾値走とインターバル・ミドルのMペース走、Eペースでのロング走を継続的にやっておけば、レース前にしっかり目標のMペース(レースペース)で30km走が出来て、本番でも良い走りが出来ます。
Mペースでのロング走は負荷が高すぎて普段の練習としては継続性に難があり、ダニエルズさんも積極的に推奨してはいないです。
ただし、レース3週間前までにMペースで数回ロング走をやっておく事で得られる”自信”や、レースに向けて実践的な活動筋を向上させておくというのは、レースへの影響が思いのほか大きいのでオススメしたいところではあります。
閾値走のやり方【初心者編】
「マラソン練習といえばジョギングだけ、これからポイント練習を始めてみたい!」
という方が取り組む場合の初心者編です。
そういう方にとって、いきなり20分間の閾値走は非常に辛い練習かもしれません。
実は私も一番最初に閾値走をやった時は、20分間も走れませんでした。途中でリタイア^^;
私はその時、初心者向けの「クルーズインターバル」があるという事を把握していなかったため、キツくても20分間の閾値走に慣れるように頑張り続けましたが、皆さまは怪我や疲労のリスクがあるので無理する必要はありません。
クルーズインターバルとは
クルーズインターバルとは、閾値ペースで行う「インターバルトレーニング」の事です。
通常20分間を通して走る閾値走と異なり、閾値ペースで走る区間を小分けにして休憩を挟みつつ実施します。
練習例
アップジョグ2km→クルーズインターバル10分+2分ジョグ+クルーズインターバル10分→ダウンジョグ2km
上記の例ではクルーズインターバルでの疾走時間を10分としましたが、3~15分の間で設定すれば良いとダニエルズさんは言っています。
その際、休息時間は5分の疾走時間につき1分を取るのが平均的との事。
例えば
クルーズインターバル5分+休憩1分+クルーズインターバル5分…
のような流れで4本実施するのも良いでしょう。
クルーズインターバルに慣れてきたら、より練習効果の高い、20分間を通して走る通常の閾値走に移行すると良いと思います。
閾値走の効果は何だろう
血中の乳酸を除去し十分処理できる濃度に抑える能力を高めるために行う。持久力を向上させるために行うと考えればよい。つまり、ある程度の時間、少しだけ速めのペースで持ちこたえることを身体に覚えさせる、あるいは一定ペースを維持できる時間をのばす、ということだ。
VDOTを理解した上で、適切な強度で閾値走を継続的に実施する事で得られる効果は非常に大きく、日本のみならず世界中で多くのランナーが練習に取り入れて記録を伸ばしている事で証明されていると言って良いでしょう。
閾値ペース強度でのランニングで得られる生理学的効果とは、持久力、すなわち運動強度と運動時間の増加に耐えられる力が向上することである。
閾値走の効果は、ある程度の速いペースで長い時間走り続ける事ができる「持久力」を養成する事になります。
しかしここで誤ってはいけないのが、実際にフルマラソンの記録を大きく向上させるためには、閾値走だけでは少し足りないという事です。
マラソンは総合力の勝負。
自分の走力を効率的に上げていくには、バランスの良い練習が必要です。
それには様々なペースでの練習をする必要があり、レペティション・閾値走・インターバル・マラソンペース走、そしてイージーペース走を、それぞれ適度な頻度で練習計画に入れて実施し続ける事が肝要です。
自分の走力を車に例えて考えた詳しい記述は、以下の記事にて
まとめ
閾値走とは何か、その効果・やり方などについて解説していきました。
興味を持って頂けたのであれば、まずは週1~2週に1回ほどの頻度で、半年~1年ほど継続してみてください。
「え~、そんなに継続するの?」
と思われるかもしれません(笑)
しかし、マラソンが速くなるための練習に”即効性”のあるものは…ごめんなさい、無いんです^^;
だからこそ、速くなること、フルマラソンのタイムを短縮するために目標を設定し、その目標を達成する事には、大きな価値があります。
一朝一夕の努力では到底叶わないからこそ、ランナーは念願のタイムに到達した時に(年齢がいくつであろうと)涙を流し、他の方も感動します。
私はサブ4未達の頃に閾値走を取り入れて練習を開始、それから3年でサブ3達成、7年で2時間50分を切るまで走力を上げる事が出来ました。
もういい年のオッサン(46歳/2021年現在)ですが(笑)、目標達成の節目ごとに感動と達成感で泣いてきました(ノ∀`)
マラソンにおいて閾値(LT)を長い期間をかけて漸増させる事は、私のみならず、一流選手から市民ランナーまで全てのランナーに通用する、確実にマラソンが速くなるための、効果が確定している重要な要因です。
以下の動画は、リオオリンピック5000m銀メダリストであり、東京オリンピックにも出場する予定のチェリモ選手が行う閾値走(Threshold Session)です。
フルマラソンとは距離が異なる、5000mを主戦場とするような一流選手でさえ、日常的に閾値のトレーニングを実施しているんです。
マラソン練習の重要な”柱”とも言える、閾値(LT)トレーニング。
是非とも、これからの自分のマラソン練習に取り入れて、効果的・効率的に速くなっていってください(^^)
コメント
いつも勉強させていただいています。
僕もゲンさん同様の閾値走マニア?好き?です。
九州は暑くなってまいりましたが、早朝や夜でもまぁまぁ暑いです。
そこで質問です。
①VDOTを気温を考慮したペースで20分
②ペースは変えず、クルーズインターバルで行い、刺激時間を増やす。
例)1600m×4~5、レストは1分。その場で休む(給水)
ご意見をお聞かせください。
暑い夏、乗り切っていきましょう!
バスラさん、コメントありがとうございます!
バスラさんも、私と同じく閾値走マニアでしたか!!(笑)
九州の夏はとんでもない暑さなので、どうしてもスピード練習が苦しくなりますね^^;
>そこで質問です。
これは
①VDOTを気温を考慮したペースで20分
②ペースは変えず、クルーズインターバルで行い、刺激時間を増やす。
上記の、どちらが良いかという事でしょうか。
大原則としては、夏の閾値走は気温によってペース調整はします。
そうじゃないと、冬と同じペースでやってたらタイムトライアルみたいにキツくなって、過負荷ですよね^^;
着地衝撃は夏にペースを落とせば弱くなるんでしょうけど、気温と日差しによるダメージが疲労を過大にして次の練習以降に影響するかと。
そうすると線で見た時に練習効果を下げてしまいます。
「気温なんかカンケーねーわ!」
「ダメージなんて変わんねぇ!」
っていう暑さに強い夏男なら、冬と同じペースでやれば良いと思いますよー(*^^*)