レースを練習代わりにして頻繁に出場するのは効果的か、それとも非効率か

レースを練習代わりにして頻繁に出場するのは効果的か、それとも非効率か

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(この記事は2019年3月に読者からの質問に対して回答をした時に作成した記事を、改めて加筆・修正して作ったものですm(_ _)m )

「フルマラソンに強くなりたかったら、フルマラソンを何回も走るのが最も効果的で効率が良いでしょ」

ゼロから走ることを始めた私たち市民ランナーが、一度は考えること…ですよね^^;

「Mペースだって30kmより35km、40kmの方が”特異性が高い”って思うし、それを考えたらフルマラソンを走っちゃった方が」みたいな。

30km走でいいの?35km走?40km走? フルのスタミナを付けるにはどうすれば。 「フルマラソンには30km走だ」 そういう言葉...

「マラソンは経験のスポーツだっていうし、速い人はフルマラソンをもう何十回と走ってるし、自分も早くレースの経験を積み上げていきたい!」のような思いに至る人もいるでしょう。

改めて考える、フルマラソンの終盤対策【上】 【記事の内容は、以下のYouTube動画風サムネイルから動画で見ること…は、今回も出来ません(...

実際に川内優輝選手のような、レースを練習代わりにしてどんどん出場し、メキメキ速くなっていったようなランナー、皆さんの周りにもいらっしゃるかもしれません。

逆に年に1回~2回しか出場はしないものの、狙ったレースでは”外さない”ようなランナーもいたり。

走力向上を考えた時に、果たしてどちらが良いのか。

レース間隔の、基本的な考え方というのはある

ハシルコトのブログやYouTubeをご覧になってくださっている方であれば、フルマラソンに関する基本的な考え方というのは、何度も聞いたり目にしていると思います。

フルマラソンのレース間隔に関する、基本中の基本というものを、復習的に今一度。

1.【基礎】フルマラソンのリカバリーにかかる時間

一般に、アメリカでは「レースした1マイル(1.6キロ)につき1日の休息を」といわれています。つまり5キロ(3.1マイル)ならば3日、10キロ(6.2マイル)で大体1週間、42.195キロのフル・マラソン(26.2マイル)であれば26日、約1ヵ月の休息が目安となります。もちろん、この「休息」とは「練習しない日」ではなく、ユックリしたペースでの有酸素ジョグ、となります。

リディアードのランニング・トレーニング

フルマラソンをレースで走ると、そのダメージから身体を回復させるために、約1か月の日数がかかると言われています。

「いやいや。フルマラソン走ったって、そんなにかかんないよ。練習とかでも40kmとか走るけど、その後も普通に走ってポイント練習とかもしてるぜ?」

という感覚を持つ人もいらっしゃるかもしれませんが、練習とレースでは、同じように思えても負荷は全然違います。

人間には筋肉や腱を守るための”防御本能”が備えられており、”ここぞ!”という場面でのみ力が発揮出来るような(火事場の馬鹿力的な)身体のシステムになっています。

それは例えば“スポーツオノマトペ”のような、声を出すだけで運動能力が向上する、みたいなことも分かっています

人によって違いはありますが、人間の筋力発揮は3~4割程度の余力を残した形で出力されると考えられています。アスリートは、ふだん、全力で運動をおこなっているつもりでも、実際に100%の力を出しきることはまずありません。~中略~ そして、この脳の制御(リミッター)をはずす役割を担っているのが「声(スポーツオノマトペ)」なのです。

スポーツオノマトペ なぜ一流選手は「声」を出すのか

声だけでなく、レースという環境に身を置くことで普段の練習よりも能力を発揮できる代わりに、大きなダメージを受けてしまう、ということになります。

そんな”レース”にバンバン出場するということは、

パフォーマンスの”低クオリティ安定”や、身体の経年劣化を早めることになりやすい

というのが基本です。

ただそうじゃない”鉄人”も中にはいるので、そういう鉄人を見て

(自分もマネすれば、いけるんじゃないか)

(こうやれば、強く・速くなれるのか!)

と思ってやってみたものの、あちこち痛くなったり疲れすぎちゃったり…という経験をした方もいらっしゃるかもしれません。

2.【応用】リカバリーにかかる日数の個人差

「そしたら、そのレース間隔に沿ってやるのが一番良いのか?」

というと、何でも個人差はあるもので、レース間隔が短くても大丈夫な人もいるわけです。

もちろん、単純に月間走行距離が少ない事が原因で、42kmを走ると大ダメージを受けるランナーもいますが…

"ジョグに始まってジョグに終わる"というくらい、レベルの高いランナーほどジョグを大事にしています。 走る練習の中で大きなウェイトを占め...

例えばVo2maxだって、遺伝型によって伸び率が大きいランナーもいれば、ほとんど伸びないランナーだっています。

また、一般的に速筋は疲れやすく疲労が抜けにくい、遅筋は疲れにくく疲労が抜けやすいとされていますので、どちらかと言うと

スピードタイプのランナーは、疲労が抜けにくい

スタミナタイプのランナーは、疲労が抜けやすい

とも言われています。

スピードタイプ、スタミナタイプというザックリした分け方のみならず、私たちの身体は1人1人で何もかも違うため、実際に自分の身体がどうなのか、タイプ的にどっちなのかを”実験的”に試してみないと分からないことです。

走るドクターである著述家でもあった故ジョージ・シーハンはよく、「われわれはみな、一度きりの実験である」と書いていた。人間はみな同じような体のつくりをしているが、人によってトレーニングへの、そして回復への反応は少しずつ異なる。

最高のランニングのための科学 ケガしない走り方、歩き方

ちなみに私はスピードタイプで、とっても疲労が抜けにくいランナーだと自覚しています^^;

フルマラソンを走ったあと、1ヶ月~2ヶ月で再びフルマラソンを走ると、本当にうまく走れません。

不安から直前までトレーニングをやり過ぎてしまったり、フルマラソンのレース間隔をあまりあけずに走ってしまったりすると、疲労もそうですが…筋繊維が復活し切れていない感じで30km以降、いや酷い時は20kmくらいから脚が棒になるような感覚になってしまい、全くペースが維持出来なくなります。

マラソンでの「壁」とは、筋肉内のグリコーゲンの枯渇が原因、と思われがちですが、私はほとんどの場合、オーバー・トレーニングによる脚の筋線維崩壊が原因だと考えています。~中略~ リディアードの持論、「ハード・トレーニングをし続けながら、レースで良い結果など望めない」「レースで良い成績を出すためには『フレッシュ』で『シャープ』でなければいけない」をもう一度ジックリと反芻してください。

リディアードのランニング・トレーニング

レースでベストパフォーマンスを発揮するレース間隔については、自分にとって、どのくらいの回復期間を取れば良いレース結果を得られるのか、

自分に合った、レース間隔を模索する

というのが、”模範的”な回答になるかと思います^^;

走力向上を考えた時に、どちらが良いのか

では、走力向上を考えた時に、どちらが良いのか。

“走力向上”という観点で多くの方が期待していると思われることは、大きく分けて以下の2点かなと思います。

1.フルマラソンの巡行ペースを速めるのは、フルマラソンを走ることかどうか

2.フルマラソンの終盤に強くなるのは、フルマラソンを走ることかどうか

いかがでしょうか。

「1」をメインに考えている方は、どちらかというと少数派だと思います^^;

やっぱり巡行ペースを速めるには、閾値走やインターバルをはじめ、マラソンペースより速いスピードで走るトレーニングが効果的っぽいよな~というのは、感覚的にも理解がしやすいところですし、理論的にも間違いのないところ。

スピードの能力を効果的に改善するには、本番と同じ運動をするトレーニング(特異性)、レジステッドトレーニング(力への過負荷)、アシステッドトレーニング(スピードへの過負荷)の3種類をうまく組み合わせることが重要だといえるでしょう。

アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学

どちらかと言うと、やはり「2」の

「フルマラソンの終盤に強くなりたい!」「ゴールまでイーブンペースを維持したい!」

期待するのは、こちらの方が多いような気がします。

レースと練習、どちらがフルマラソンの終盤に強くなるために効率的か

フルマラソンのレースを走ってベストパフォーマンスを得るためには、

・テーパリングとピーキング

・レース後のリカバリー

が”普通は”必要となりますので、前後の期間ではトレーニン可能なボリュームが、通常時とは異なります。

テーパリングとピーキングをあまりしないでレースに挑むと本番でのパフォーマンスが落ちますし、リカバリーを軽視すれば(しばらくは何も起きずに練習が出来て強く・速くなれても)、数年後に心や身体に不具合を生じる可能性が大きくなります。

どれだけ回復力が強くてレース前後にさほどテーパリングや回復(リカバリー)期が必要なく連戦が可能でも、筋や腱・軟骨や心臓などが同様に強いとは限らず(強い人もいますが^^;)、回復をおろそかにしていると各部位の摩耗が急速に進むことは、大いに考えらえますので…あまりオススメは出来ないところ。

そうするとレースの前後2~3週間ずつ(合計4~6週間)はボリュームを減らすことになりますので、その間に減らす練習の質と量と、42kmのレースを1本走る事と、どちらが有益かの”比較”になると思います。

これは単純には比較出来ませんが…

・刺激時間という点から見れば、42kmを1本走るよりも毎週しっかりとしたスピード練習や、ある程度の距離をそれなりのペースで走った方が走力向上にプラスとなる可能性が高い

・連戦をしているとその間、3か月~半年かけて期分けをしてトレーニングを進めていくことが難しくなるので、総合的に走力を上げていくのが難しくなる。

・レースはどうしても頑張ってしまうため、特に連戦は身体の摩耗を招きやすく、10年右肩上がりで成長していく理想的な成長曲線を作りづらくなる。(数年後に問題が発生しやすくなる)

フルマラソンの終盤に強くなるには、フルマラソンを何本も走る事ではなく…

半年~1年などのスパンで継続的に正しく、42kmという距離に対応出来る(着地衝撃に耐えられる)強い身体、そしてある程度のスピードで走り続けられる”スピード持久力”を養成する練習を続けられれば、誰でもフルマラソンをイーブンで走れるようになると、個人的には思っています。

改めて考える、フルマラソンの終盤対策【上】 【記事の内容は、以下のYouTube動画風サムネイルから動画で見ること…は、今回も出来ません(...

実際に私もフルマラソンを何本も走ってイーブンで走れるようになったわけではなく、半年に1度の勝負レースに向けて土台作り~特異性の高い練習まで実施するスパンを2回(つまり1年)やったことで、走れるようになりました。

もう遥か昔、2014年の大阪マラソンで、ですが^^;

いま3時間15分~20分辺りを目指すランナーの方には、多少役に立つ…こともないかなw

2014年10月の大阪マラソンで、初めて3時間20分切りを達成しました。 フルマラソン200分切りを目指す方の参考に少しでもなれば幸い...

まとめ

フルマラソンの本番を入れたくなる感覚として、

・レースを走ると、1人で練習するよりも楽に速く走れて、効果が非常に高い気がする(実際に”点”で見れば、そう)

・レースを走ると、高揚感があってモチベーションも高く、単純に楽しい♪

・補給や給水が充実しているし、車などを気にすることもないなど、とても走りやすい

などなど…レースを走りたい!練習は嫌い!!(笑)っていう気持ち、ほんと分かりますw

タイムを短縮したいとか、一日も早く”速く”なりたいという気持ちが特になく、全てをファンランでエイドなどを楽しんで、身体の負担が少ないように走るのであれば良いのかもしれません。

ただ、勘違いするといけないのは

レースにたくさん出れば、効率的に走力が向上するはず

という考え方です。

決して効率的ではないですし、継続性に難がありますし、リスクは高くなると思います。

レース間隔は、適切に♪


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ありがたい事に大…

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