今回のご質問は、今年の7月13日~15日に開催される”みちのく津軽ジャーニーラン”177kmの部に出場を予定しているRさんからのご質問です。
Rさんはハーフ86分・フルマラソン3時間一桁で走るランナーですが、ウルトラマラソンは苦手。
ウルトラマラソンを苦手とするランナーが100kmを大きく超えるレースに挑戦する…本人にとってはレースが近づくにつれ、恐怖にも似た感情が湧き上がっているのかもしれません。
ご質問にも”切迫感”が伝わってきました^^;
フルマラソンの場合、中には35km~40km走るランナーもいますが、一般的に練習で走る距離は30kmが定番。レース本番で走る距離の70%ほどを走ります。
100kmのウルトラマラソンでタイムを狙う場合は、60km~70km走をするランナーが多いと思います。
であれば、177kmのレースだと…124kmもの距離を練習で走らないといけないのか。
そんなご質問を頂きました。
目次
100kmを超えるレースに向けたロング走の距離について
読者からのメール内容
げんさんこんばんは^ ^
ブログいつも参考にさせてもらってます。
私は、7月半ばに行われる177kmのレースに出場する予定なんですが、残り2ヶ月の練習の中で、最長距離の練習はいったい何キロ必要なのか?という事で悩んでいます。
私はスピードも無いですが、スタミナはもっと無いタイプです(涙)
ロング練習やウルトラは苦手意識があります。過去には3年前にサロマ100kmを11時間40分で完走。
一昨年の北オホーツク50kmを4時間そんな中、エントリーしてしまったのだから必ず完走したいですし、出来ることなら自分の能力の全てを出し切ったタイムでゴールしたいです。
レース前に、70%の距離を走る事が必要と聞きますが…177kmだと。
124km!!
絶対壊れます(笑)
100km越えの練習しないとダメかな〜って思ってたんですが、去年263kmで上位入賞したラン友さんが、100kmなんて必要ないよ〜って言ってくれて。
でもその人は、毎月100kmの大会出てるし、月間500kmだし、サロマ8時間一桁だし…。
確かに、壊れるくらいならしっかり50km走を何回か走り込む方がいい気がするんですが…。
大会前の最長練習に関して、是非げんさんのご意見を聞きたいです
【結論】地獄の124km走…(-_-;) 必要ありません(笑)
Rさん、こんばんは♪
いつもメッセージやご質問、ありがとうございます!
7月の”みちのく津軽ジャーニーラン”177kmの部に向けたロング走の距離について、ご質問を頂きました。
結論から言えば、地獄の124km走は必要ないと思います^^;
キーワードは2つ。
1.「距離適性」
2.「目指す目的」
です。
1.距離適性について
例えばRさんのお知り合いの方。
おそらく超スタミナタイプの方なんでしょう。
同じように、北海道が誇る100km日本代表であり、スタミナ界の女王(笑)藤沢舞さん。
練習では50km程度しか走らないと言います。それでも7時間40分でサロマ100kmを走ります。
フルマラソンも速いですが、2時間45分ほど。3’55/km~キロ4程度の巡航ペース。
藤沢さんは100kmを4’30/kmほどで走りきってしまいます。その差は約30秒/km…
そんな超長距離の素質(持久力・耐久力・スタミナ)のあるランナーの言う事、聞いてはいけません!!(笑)
私たちはウルトラ弱者なんです。
ウルトラの素質があるランナーに
「50kmを超える練習とか、いらないから」
「厚底シューズが必要かって?薄底で問題ないでしょ( ´,_ゝ`)フッ」
「なんで50kmとか60km程度で撃沈するの。遅すぎて走りのリズムが悪いんじゃない?もっと速いペースで巡航すれば?」
などと言われても、私たちのような弱者には理解できない、高レベルの話(笑)
ちなみに私はフルPBの平均ペースが4’05/kmほど、サロマ100kmはサブ10ギリなので、ならすとキロ6ペースがやっと。
その差は、なんと2分/km(笑)
ウルトラ弱者は、とにかく身体、特に距離を踏むための脚の耐久力がないんです。根性論とか精神論では全く太刀打ちできない、本当に身体がダメになってしまう。
フルマラソンでも、30km走などをたいしてしなくても速い人がいます。
ウルトラも同様です。
そこは厳然たる”素質”(遅筋が多いとかですよね)が影響する部分です。
で、ウルトラの素質がない我々がウルトラに向かう時、やるべき事はなにか。
ここで
「目指す目的」別になると思います。
2.目指す目的
ウルトラで何を目指すか。
まずはウルトラでは前提条件があります。
必ず潰れるという事です。
カッコ良くゴールまで走れるなんて、まずありません^^;
トップクラスの選手を除いて、一般市民ランナーなら誰でもどこかで潰れます。
そして、どこでどの程度潰れるかが問題です。
フルでも10km~20kmでガッツリ潰れたらヤバいですよね。
ウルトラでも同じです。
177km走るのに50km~60kmで潰れたら大ピンチ。
復活の可能性もありますが、リタイアの可能性も高まってしまいます。
可能な限りゴールに近い距離まで潰れるのを先送りしたいところ。
フルマラソンに置き換えると分かりやすくなります。
最初は10km~20kmで潰れていたランナーが30kmまで潰れないように、35kmまで潰れないように、ゴールまでイーブンでいけるように、年月をかけて徐々に身体を作っていくと思います。
そうやって、ゴールに近いところまで潰れないように努力をしつつ、タイムを狙っていく。
ウルトラだって、まずは潰れるのを先延ばしする事がタイム短縮や自分の能力(スピード)の全てを出し切るために最も重要な事です。
そのための過程を通過していない人にアドバイスを求めても不毛です。
なぜなら、素質のあるランナーはそんな事しなくてもゴール近くまで走れちゃうのですから。
「なんで、げんさんはそんなに走れないの?」
と長距離の素質があるランナーに言われ、軽くディスられたような気持ちになったのは一度や二度ではございません(個人の感想です笑)
少し脱線して、個人的な恨み節になりましたw 話を戻します。
決してアドバイスをくれた方が悪気を持っている訳ではないのですが、ウルトラでタイムを狙いたい、目標達成したいと願う”スピードタイプ”でスタミナの無いランナーに
「50km以上走る必要はないよ」
というのは、その人がそれで100kmでも200kmでも速く走れちゃうだけで、私たちに当てはまるものではないと考えています。
もし私たちのようなランナーがウルトラ(例えば100km)でタイムを狙うとしたら、フルのタイムを縮めるために何度も30kmレースペース走で脚を棒にしたように、ウルトラのレースペースで何度も60km~70km走って脚を棒にする練習が不可欠です。
そうすると、ウルトラの本番でも70km~80kmくらいまで潰れずに、ビックリするくらいペースを維持して走れるようになります。
でも今回、初挑戦のみちのく津軽177kmでその必要はないと思います。
目指す目的です。
まずは私たちウルトラ弱者が未知の距離に挑む場合は
とにかく完走
これに尽きると思うんです。
そう考えて臨むのが、実は一番速く、そして確実にゴールにたどり着ける方法だと考えています。
完走目的であれば、フルマラソン初心者に金哲彦さんがアドバイスするように「1時間走れればフルマラソンは完走出来るよ」というのと同じだと思うのです。
そこまでガチでいく必要はないと。
サロマ100kmであれば、マラニックなどで50km~60kmの距離を何度か走って、ある程度のスピード(サブ4.5程度)と根性があれば、完走は大丈夫。
みちのく177kmは制限時間が37時間(12分/km)のジャーニーランですから、途中から歩きがメインになるはず。走るというよりは、限界を迎える前に積極的に歩く。
みちのくが難関たる所以は、「長い」「暑い」「眠い」というのは想像に難くないところ。
走り通せるワケがない距離なので、どのタイミングで歩き始めるか。
むしろ最初からちょいちょい歩きを戦略的に入れるような作戦が必要ですよね。
で、練習について。
怪我のリスクもあるので、完走目的であれば、走る練習での距離は50km~60km(or月間走行距離の6分の1ほど)で充分です。
確実に完走に近づきたいのであれば、夜間走行に慣れておくために日暮れ出発で日付けが変わる前までの暗い時間帯でロング走、もしやる気満々なのであれば(笑)日付けが変わるまで走って、あとは朝までウロウロ走ったり歩いたりするのも良いかもしれません(笑)
夜間走は、いわゆる時差ボケ的なものが発生して、戻るのに2~3日かかったりするのでリスクもありますが^^;
夜間のロングって…眠いのもそうですが、もの凄く疲れるんですよ。これは一度経験しておくと良いかもしれません。
眠さに強くはなりませんが、2~3回やれば暗い場所で走る時の身体の使い方が自動的に身について慣れるのも可能です。
その上でウルトラのタイムを狙うのであれば、Rさんが考えている「レースの70%の距離」などの濃い練習に移行する事になります。
でも今回は必要ないですよ。
【まとめ】
長々と書きましたが、みちのくは「完走目的」で練習に取り組み、本番に臨むのが”健康的”だと思います(笑)
私がみちのく177kmに臨むとしたら、個人的に考える事は
1.ロング走は50km~60kmほどで充分
2.夜間の特殊な疲労具合に少し慣れておく(日付けが変わるまでの夜間ロング走でも充分、例えば19時~24時でも5時間ありますしね)
3.スピ練はほどほどにしてジョグで月間走行距離を伸ばした方が効果的なので、日々のジョグを少し多めに
そんなところです。
あとはとにかくダメージを受けにくい走り方をマスターする事でしょうか。
早歩きのような感じで上下動無く滑るように5’30/km~6’00/kmで”移動”できるようになったら最高です(笑)
サロマの終盤では”競歩”をしている人、結構います(笑) そしてそんな人が意外と速いんです^^;
一度競歩のイメージで10kmでも移動してみてください。ダメージ少なくてビビりますw
身体が温まっても走っちゃダメですよ!!(笑)
フルマラソンで速く走れる人でも、ウルトラマラソンに参加する時は
「お楽しみラン」
「旅ラン」
そんな気軽な感じでゆっくり景色を楽しみながらタイムはさほど気にせず、リタイアにならない程度のスピードで走る人も少なくないですよ。
かく言う私も、実はウルトラマラソンではそこまでタイム的に速く走りたい!という気持ちは少なめです。
これから挑戦する予定の野辺山100kmや、ウルトラトレイルなども
「とにかく制限時間ギリギリでも良いから完走を!」
というのを一番大事に考えて参加するつもりでいます。
ご参考までに。