死力を尽くして本命のレースを終えた後は2週間~4週間ほどは休養を取り、それから再び次のレースに向けて練習再開するのがオススメだと、以前記事にしました。
その際、
「1週間何もせず休んだって、2週間ほどジョグばかりでポイント練習しなくたって、たいして走力は落ちません。少し落ちたって、すぐ戻るんです。」
と記載しましたが
「すぐ戻るって、どれくらいの期間で戻るんだよっ!」
というご意見も頂きました(笑)
レース後の計画的な休養や、怪我や疲労・病気などによるブランクが明けた時、どれほどの走力低下があり、どのような練習をして走力を戻していくか。
ダニエルズのランニング・フォーミュラを参考にしながら、考えていこうと思います。
目次
【解説動画】休んで落ちる走力の目安と、その戻し方。コレを知って休めば、むしろ速く・強くなれる!
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
休養やブランク後のVDOT(練習強度)の調整
計画的な休養の重要性とは
ランナーは時折、2~3習慣の休養を計画してトレーニングを休むべきである。 ~中略~ ランナーというものは往々にして休みたがらないものだが、全体的な向上という点では、休養は有益であることがほとんどである。休むことによって、負担の非常に大きいトレーニングとレースの期間にいったんピリオドを打ち、心と身体を立て直す時間を作ることができる。
「ランナーというものは往々にして休みたがらないもの」という事は、全世界共通なんですね(笑)
月間300km走るより、1週間ランオフする方が難易度が高い^^;#ランナーあるある#お試し投稿#Runtrip
— げん@ハシルコト (@hasirukoto_gen) May 13, 2021
休養にはマイナス効果になる休養と、プラスの効果をもたらす休養があります。
それは
怪我や疲労などによる”計画にないトレーニングの中断”によって練習を長期中断せざるを得ない”マイナス効果の休養”となるより、年間計画として”プラス効果”の休養を取る方が絶対に良いですよね。
それでも取らない人は取らないけど^^;
トレーニングを休まない人が考える事の中に
・休む事によって走力が大幅に低下するのではないか
・低下した走力を戻すのに、長い日数がかかるのではないか
という不安があるのではないでしょうか。
あと
・走らないので、太っちゃわないか心配
とかね(笑)
休養中に太らない方法についてはまた別の記事で書きますが(ホントかよ笑)、今回は走力の低下と走力の回復について、詳しく解説していきます♪
単純な走力低下の目安
トレーニングから離れていた期間によってトレーニングの強度を調整するための、目安となるガイドラインは以下の通りです。
休養前のVDOTに表の中の適切な数字を乗じる事で、練習再開時の練習強度を決められます。
休養日数 | 運動無し | クロストレ実施 |
---|---|---|
~5日間 | 1.000 | 1.000 |
1週間 | 0.994 | 0.997 |
2週間 | 0.973 | 0.986 |
3週間 | 0.952 | 0.976 |
4週間 | 0.931 | 0.965 |
5週間 | 0.910 | 0.955 |
6週間 | 0.889 | 0.944 |
7週間 | 0.868 | 0.934 |
8週間 | 0.847 | 0.923 |
9週間 | 0.826 | 0.913 |
10週間 | 0.805 | 0.902 |
休養期間に全く運動をしていなかった場合と、自転車やスイミング・軽いジョギングなど、ある程度のクロストレーニングを実施していた場合とで、乗じる数値は異なります。
レース後にポイント練習だけ休んで、ジョグは続ける形で休養をしていたランナーは”クロストレ実施”の方ですので、さほど走力の落ちは大きくありません。
10週間経過して0.9になった後は、ジョグを続けていればそれ以上落ちないレベルまで下がったという事になります。
なお、全くトレーニングをしなくても、5日間以内であれば走力は一切落ちない事が分かります。
例えば2週間や4週間の休養を取った場合、以下のような走力の下落が見込まれます。
【2週間の休養した場合】
例:VDOT40(ハーフ1時間51分・フル3時間50分)のランナー
運動無 40×0.973=38.92(ハーフ1時間54分・フル3時間55分)
運動有 40×0.986=39.44(ハーフ1時間52分・フル3時間53分)
【4週間の休養した場合】
例:VDOT40(ハーフ1時間51分・フル3時間50分)のランナー
運動無 40×0.931=37.24(ハーフ1時間58分・フル4時間04分)
運動有 40×0.965=38.6(ハーフ1時間55分・フル3時間57分)
※ハーフ・フルのタイムは、おおよその目安です。
体重の増加を考慮に入れたVDOTの調整
しかしながら、もし休養前と休養後に体重の変化があった場合には、体重も考慮に入れた計算をする必要があります。
算出方法は以下の通りです。(ダニエルズのランニング・フォーミュラ、旧版の101ページ、新版223ページ)
従って、4の数値である38が体重で調整したVDOTになります。
体重3kg増でVDOTが40→38,2段階下がってフルマラソンのタイムで10分ほど遅くなる。
奇しくも巷で有名な「体重1kg減るとフルマラソンは3分速くなる」の法則通り、1kg増える毎に3分ちょい遅くなってますね^^;
そして、体重で調整したVDOTに前述の休養期間に合った数値を乗ずる事で、再開するトレーニングの基準となるVDOTを求める事が出来ます。
上記の例、4週間の休養を取ったランナーであれば、
VDOT40(ハーフ1時間51分・フル3時間50分)のランナーが4週間の休養で体重が3kg増加した場合
運動無 38×0.931=35.38(ハーフ2時間03分・フル4時間14分)
運動有 38×0.965=36.7(ハーフ2時間00分・フル4時間08分)
体重増加があると、走力の低下が大きくなるのは致し方のないところですね。
休養やブランク後の距離の調整
VDOTによる練習強度の調整は前述の通りですが、走る距離の調整もしないといけません。
トレーニング中断後に再開する際のトレーニング量について、詳しくは私たち市民ランナーの教科書的な存在であるダニエルズのランニング・フォーミュラ(旧版102ページ、新版224ページ)を参照してほしいですが、簡易的に記載すると以下の通りです。
休養期間 | トレーニング量 | 調整例1 | 調整例2 |
---|---|---|---|
5日以内 | E(100%) | 5日間:E(100%) | |
6~28日 | 前半:E(50%) 後半:E(75%) | 6日間の場合→3日間E(50%)+3日間E(75%) | 28日間の場合→14日間E(50%)+14日間E(75%) |
4~8週 | 前期:E(33%) 中期:E(50%) 後期:E(75%)+WS | 29日間の場合→9日間E(33%)+10日間E(50%)+10日間E(75%)+WS | 8週間の場合→18日間E(33%)+19日間E(50%)+19日間E(75%)+WS |
8週以上 | 3週毎に距離を増やす | E(33%)→E(50%)→E(70%)+WS→E(85%)WS+R→E(100%)WS+T+R | |
Eはイージーペース、WSはウインドスプリント、Tは閾値走、Rはレペティション |
ちょっとゴチャゴチャして分かりづらいですね^^;
簡単にすると、基本は2つ。
1.休養期間と同じ日数を使って徐々に走力を戻していく
2.主にEペースを実施、少しずつWSやR・Tを入れていく
という事になります。
表の内容を説明します。
5日以内の休養
5日以内の休養であれば、5日間休養前と同じ距離(100%)をEペースで走る事で調整終了。
6~28日間の休養
休養日数に合わせて、調整期間を前半と後半で分けます。
調整例A:6日間の休養の場合は前半3日間をEペースで、休養前に走っていた距離の半分50%を走り、後半3日間はEペースで休養前の75%の距離を走る。
調整例B:28日間の休養の場合は前半14日間をEペースで、休養前に走っていた距離の半分50%を走り、後半14日間はEペースで休養前の75%の距離を走る。
【例】休養前に週間50km走っていたランナーが28日間休養した場合
前半14日→Eペースで週間25km(50%)
後半14日→Eペースで週間37km(75%)
4~8週間の休養
休養期間に合わせて調整期間を3つの期に分けます。
調整例A:29日間の休養の場合は前期として9日間をEペースで、休養前に走っていた距離の33%、中期として10日間をEペースで50%の距離、後期として10日間はEペースで75%の距離+WS(ウインドスプリント)を実施する。
調整例B:8週間の休養の場合は前期として18日間をEペースで、休養前に走っていた距離の33%、中期として19日間をEペースで50%の距離、後期として19日間はEペースで75%の距離+WS(ウインドスプリント)を実施する。
【例】休養前に週間50km走っていたランナーが8週間休養した場合
前期18日→Eペースで週間17km(33%)
中期19日→Eペースで週間25km(50%)
後期19日→Eペースで週間37km(75%)+WS
8週間(2ヶ月)以上の休養
8週間以上の休養をした場合は1段階を3週間毎・5段階に分け、徐々に距離を伸ばしていきます。
最初の3週間は休養前に走っていた距離の33%をEペースで、次の3週間は50%の距離をEペースで、次は70%の距離をEペース+WS、次は85%の距離をEペース+R、最後に100%の距離をEペースで+T+Rを実施する。
【例】休養前に週間50km走っていたランナーが8週間休養した場合
第1段階21日→Eペースで週間17km(33%)
第2段階21日→Eペースで週間25km(50%)
第3段階21日→Eペースで週間35km(70%)+WS
第4段階21日→Eペースで週間43km(85%)+WS+R
第5段階21日→Eペースで週間50km(100%)+WS+T+R
まとめ
ダニエルズさんは書籍を通じて「保守的」であり「安全策」を基本としています。
実際のトレーニングの現場では、ご紹介した調整ペースよりも早く走力を回復されていっているランナーも少なくないでしょう。
私も当初はダニエルズさんの言う通りに調整期間を経て走力を戻していましたが、そのうち
「もう少し早いペースで練習強度を上げても、大丈夫だろ」
と思って、自己流でやってみました。
2018年防府読売マラソンで左の膝に怪我。1ヶ月の休養を経て、練習再開。
4週間(1ヶ月)の休養、怪我する前は週間100kmなので本来は
前期10日→Eペースで週間33km(33%)
中期10日→Eペースで週間50km(50%)
後期10日→Eペースで週間75km(75%)+WS
ですが、
前期10日→Eペースで週間28km(28%)
中期10日→Eペースで週間75km(75%)+T
前期で良い感じだったので、中期で調子に乗って距離と負荷を上げすぎ、また痛めましたorz
休養期間後は自分が思っているより怪我をしやすい、という事を改めて実感^^;
焦ってしまったが故に、せっかく疲労から回復してやる気のある身体を怪我でダメにしてしまったり、怪我から回復したのに再び故障者リストに入ってしまうのは悔しいもの。
「ダニエルズさん、慎重すぎるでしょ!」
と思わず、自分のペースで走力を戻すにしても、徐々に少しずつ、を忘れないでください。