目次
【第1回】ハシルコト・アドバンス「走力レベルとフルマラソン終盤」
【記事の内容は、以下のYouTubeでも見ることが出来るようになる予定です!】

多くの市民ランナーにとってフルマラソンで良いタイムが出るかどうかは、とにもかくにも30km以降に大きくペースダウンせずにゴールまでたどり着けるかどうかに”かかっている”と言っても過言ではないですよね。
そのために”脚作り”と称して40kmなどの長い距離をゆっくり走ったり、30km走を何度も繰り返したり、週末にセット練習としてフルマラソン以上の距離を踏んだり、様々なトレーニングを実施するわけです。
そして真面目に1年・2年と頑張ってきた市民ランナーはもれなく、遂にフルマラソンをイーブンで走れるレースが生まれ
(ようやくオレも(私も)最後までペースを落とすことなく、フルマラソンを走れるようになった!)
みたいな状況になって大きな喜びと達成感を覚え、さらに上のレベルを目指すのですが…
しかーし!
その後のレース、特に走力が上がれば上がるほど、普通に30km以降でビルドダウンしちゃうことが多々あるという^^;

(何でだ…練習をサボってる訳じゃなく、それなりにロング走もセット練も繰り返し実施してるのに(TдT))
何が原因なのか、あるいは何が悪影響を与えているのかが分からないと対策も進化も出来ずに
・ただただ、ひたすら30km走を繰り返す
・月間走行距離を増やして、何となく身体を強くするイメージで取り組む
・何回かに1回訪れる概ねイーブンでいけるレースを、くじ引きのように待ち続ける
どうでしょうか。身に覚えが、ありますでしょうか^^;
ハーフまでは(ペースさえ大きく間違わなければ)そうそう撃沈することはないのに、フルマラソンはホント苦手、そもそも自分はフルに向いてないのでは…そんな方は是非とも今回の記事を読んで参考にしてください!
では原因と対策、やっていきましょう!
【復習と発展】フルマラソンの失速の原因
フルマラソンを走るにあたって30km以降に失速してしまう原因は、一体何でしょうか。
まずは代表的な失速の原因を、復習がてら簡単に基礎を2つほど確認、そして発展編として2つほどあげてみますね。
基礎1.筋持久力不足(脚が出来ていない)

主に走歴が浅い頃にありがちなので、短い距離とフルマラソンのVDOTが大きく離れているような場合に顕著な現象。
フルマラソン、42.195kmの距離に身体が対応出来ていない(脚が出来ていない)ため、速く走ろうが遅く走ろうが、どっちにしても20km~30kmで疲れてペースダウンしちゃうってヤツです。(機械的疲労によるストライド低下・接地時間の延長)
なので走り込みや脚作りを念頭に、月間走行距離の積み上げを少しずつ実施する訳です。
イージーランニング、ロング走、マラソンペースランニング(一部のランナーに限る)はすべて、重要な生理学的特性を向上させる効果がある。その効果は持続するが、獲得するのに高い強度は必要ない。
Eランニングの効果は、ケガに対する耐性をつくる、心筋を強化する、血液の酸素運搬能を改善する、筋繊維をランニングに有利な性質に導く、ということである。
リディアード的に言えば「有酸素性運動能力の開発」というやつです。
・ミトコンドリアや毛細血管の発達
・42kmという距離に耐えられるだけの脚力
・RE(ランニングエコノミー)の向上
・ランナーとしての土台の構築
などが主になりますが、その他にも長距離走に必要な能力は練習の8割を占める「ジョグ」によって身に付くというやつです。
よくハシルコトで引用する文言に
「オリンピック・チャンピオンや世界記録保持者がどんな練習をしているかなんて興味を持つ必要はない。彼らが10年前、駆け出しの頃どんな練習をしていたかに注目すべきだ。」
というのがありますが、上記の文言の前には
「まずリディアードが推奨するような週10時間、あるいは100マイルの有酸素ランニングを10週間行うことで、土台、生理学的な「受け皿」を鍛え上げる必要があるのです。」
という文言があるのですが
「よ~し、今週から週100マイル(160km)走るぜ!」
とかにならないでくださいね (さすがにハシルコトの読者は、ならないか笑)
それほど有酸素性運動能力は重要である、という理解でいてくださいm(_ _)m
まだ1度もフルマラソンをまともに走り切れたことがない市民ランナーは、
・少しずつ週間、月間走行距離を増やす試みをしていき
・ランナーとしての土台、受け皿を強固なものにする
ことが、フルマラソンという距離を最初に攻略するための、しっかり走り切って良いタイムを出すための、確定している最短距離です。
基礎2.脂肪をエネルギーに変える能力の不足

脂質代謝能力、つまり身体の燃費が良くないとフルマラソンの終盤にエネルギー切れになっちゃうというものです。(終盤で糖依存が高まり、ペース維持が困難になる)
「マラソンにおけるスタミナとは、いかに速いペースで走りながら、糖質の消費を抑えて脂肪をエネルギーとして使えるか(グリコーゲンスペアリング作用)に集約される。」
「優れたマラソンランナーは、脂肪利用能力が鍛えられている。この能力により、貯蔵したグリコーゲンを温存し、枯渇させずにゴールまで走りきることができるのだ ~中略~
つまり、マラソンのレースで言えば、「壁」の登場が限りなくフィニッシュライン近くまで遠のき、ついには無くなってしまう、ということである。」
現場レベルの練習で言えば、初心者~中級者だと
・LSD(Long Slow Distance・ゆっくり長く走る練習)
・週末セット練
・朝食前の枯渇ラン
・ガチゆる走
などがありますし、上級者になるほど
・単なるゆっくりジョギングではなく、モデレートでの25km~35km走
→モデレートでのロングは実戦的であり、脂肪がエネルギーとして効率よく使われる領域&無理なく長い時間の持続が可能
・夕食で炭水化物を抜くor少なめにした上での、翌日朝食前の距離走
→圧倒的に糖質が少ないと判断すると、身体は生き残るために脂肪を燃やすスイッチを強力に入れますが…上級者でないとハンガーノックになりやすいので、要注意です^^;
上記のようなトレーニングで、出来るだけ糖に依存しないで脂肪を使う身体のシステムを作り上げ、速いペースでも長い時間走れるようにする訳です。
基礎3.メンタルタフネス(メンタル耐性)不足
フルマラソンにおけるメンタルの重要性については、何度もハシルコトの記事で紹介していますので、ここで改めて長々と書くのは控えます^^;
【発展1】マラソンペースがLTの速度域に近づいている影響

VDOTが低いランナーと高いランナーを比較した際、走力レベルが向上するにつれてTペースのとMペースの速度に差が少なくなってくるというのは定説ですし、現在では一般常識レベルになっています。
特に走歴初期、脚が出来ていないだけで”短い距離のスピードはある”という場合だと、実際に練習で実施するTペースと本番のフルマラソンで走るペースの差は顕著。
私(げん)は全くフルマラソンに向いていない身体だったこともあり、サブ4に3度目の挑戦をして3度目の失敗をした後の初めての閾値走(2013年9月)から4分20秒/km台で実施してましたが…マラソンのペースは5分30秒/km(1分/km以上遅いとか笑)
| 日付 | 距離 | タイム | ペース | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2013.9.25 | 4km | 17’35 | 4'24/km | |
| 2013.10.9 | 5km | 21’48 | 4'22/km | |
| 2013.11.13 | 5km | 21'41 | 4'20/km | |
| 2013.11.21 | 5km | 21'27 | 4'18/km | |
| 2013.11.27 | 5km | 21'50 | 4'22/km | |
| 2013.12.5 | 5km | 21'22 | 4'17/km | |
| 2013.12.11 | 5km | 20'53 | 4'16/km | |
| 2013.12.17 | 4.8km | 20'31 | 4'17/km | |
| 2014.1.23 | 5km | 20'36 | 4'07/km | 失敗 |
| 2014.2.4 | 3.6km | 15'29 | 4'19/km | 撃沈 |
| 2014.2.11 | 7.3km | 30'12 | 4'10/km | 失敗 |
| 2014.2.20 | 5km | 21'05 | 4'17/km | |
| 2014.2.25 | 5km | 21'12 | 4'18/km | |
| 2014.3.1 | 4.8km | 20'28 | 4'16/km |
スピード的にはサブ4レベルを大きく超えているのが明らかですので、脚や身体がある程度出来て挑んだ2014年3月の能登和倉万葉の里マラソンで、一気にサブ3.5する訳ですが^^;
その後もある程度TとM(本番でのレースペース)の差を確保しながら走力レベルを上げてきたのですが、徐々にTとMの速度差が少なくなってきました。
サブ3以降は、特に。
| 日付 | レース名 | 当時のT | 巡航ペース | TとMの差 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014.3 | 能登和倉 | 4'15/km | 4'45/km | 1分30秒/km | 初サブ3.5 |
| 2014.10 | 大阪 | 4'05/km | 4'35/km | 30秒/km | 初サブ320 |
| 2015.1 | つくば | 3'55/km | 4'25/km | 30秒/km | 初サブ310 |
| 2016.11 | つくば | 3'50/km | 4'13/km | 23秒/km | 初サブ3 |
| 2017.11 | つくば | 3'48/km | 4'05/km | 17秒/km | 初サブ255 |
| 2020.3(コロナ) | 自主練 | 3'45/km | 4'00/km | 15秒/km | 初サブエガ |
| 2023.3 | 東京マラソン | 3'40/km | 3'54/km | 14秒/km | 2時間45分51秒 |
| 現在(2025.12) | 3'37/km | ? | 姫路&青森 |
そうなると、どのような現象が起きるか。
以前は余裕度がたっぷりあった、比較的ラクだった本番のマラソンペースが生理学的に高強度化・限界強度化しているという状態になります。
つまりそれは、小さな変化(当日の身体のコンディション・気温・風・坂・集団のペース変化・補給遅れなど)で「このペースでいける」と練習で感じていたペースであっても、本番では一気にオーバーペース(LTに限りなく近づいてしまう)に転じてしまって、道中でとても苦しかったり、終盤に大きくペースダウンしてしまう可能性が急激に上がってしまうということです。
LTに近づくほど
・糖質への依存度がアップ(糖質優位)
・脂肪利用がダウン
・筋グリコーゲン消費がアップ
・血中乳酸濃度の上昇(乳酸の除去、再利用が間に合わない)
・心拍や呼吸がジワジワと上がる”心拍ドリフト”が、通常時より早い段階でレッドゾーン
・余裕度が低くなって補給が面倒になったり、やめたくなる気持ちが大きくなり、考える力も低下
することになってしまいますので「いつもと同じマラソンペースだぜ」と自分では思っていても、消耗速度は段違い。
なので脚が出来上がった上での走歴の浅い頃は(LTとMが大きく離れているため)フルマラソンで割と安定的に走れていても、その後、身体はフルマラソンに対応出来るモノを持っているにも関わらず”何故か撃沈してしまう”というレースが増えてくるランナーが出てくる、ということになります。
「じゃあ、どうすれば良いんだよ!」
その対策については、また後ほど。
【発展2】カーボンシューズの与える影響

カーボンシューズは2019年にNIKEのヴェイパーフライ4%が発売されてから、少しずつ各メーカーで進化が続いてきました。
そもそも”4%”という名称は、ランニングエコノミーが平均して4%アップするという研究結果からの名称ですし、厚底フォームによる脚への負担減とカーボンプレートによって苦しさの度合いは同じ(心肺・代謝的には楽)でもスピードが上がりやすい、必然的にレースのタイムが良くなる、という効果も期待…というか”確定”していたので、トップ選手や箱根駅伝のようなレースに出るランナーのみならず、市民ランナーの間でも爆売れしました。
実際に縦方向(着地時)の衝撃は低下して骨・関節系のダメージは減りやすい(脚に優しい)のは確かですが、強い反発力を受け止めて体を前に押し出すための”反発衝撃の受け皿”となるの股関節や体幹周りの怪我が多くなることが何年も前から現場では報告されています。
つまり筋や腱にダメージを受けやすい、という事が分かっています。
厚底シューズ着用期間内と着用期間外の部位ごとの単位年数あたりのランニング障害発生数の関連を検討した結果,厚底シューズの着用により臀部,股関節,大腿,膝関節,下腿,アキレス腱,足関節,足部の障害の発生が有意に増大していた。
それは怪我までいかなくとも、フルマラソンのような距離の長いレースだと筋や腱へのダメージがレース中に自分のキャパシティーを超えてしまい、文字通り”脚が動かなくなる”(脚が棒のように感じる)に繋がっていく…という可能性も大きいと考えられます。
それはランナーであれば本能的に理解していて
「あ、このシューズはハーフまでかな」
とか
「10kmレースくらいまでで使うシューズにしよう」
みたいな”感覚”を感じ取る方も多いと思います。
でも「巡航ペースを1秒/kmでも速くしたい!」という、タイム的な目標を目指すランナーの”欲望”みたいなものに抗(あらが)うのは中々難しく、どうしてもレースでは反発の強いカーボンシューズを使いがち。
そこを諦めきれずに色々なカーボンシューズを試すけど、撃沈続き…みたいな市民ランナーは、意外と多いような気がします。
あ、私(げん)もですが(笑)
「じゃあ、どうすれば良いんだよ!」
というのは、こちらも次の章で(*^^*)
【発展編】フルマラソンの失速・解決方法

基礎的な3つのこと「筋持久力不足(脚が出来ていない)」「脂肪をエネルギーに変える能力の不足」「メンタルタフネス(メンタル耐性)不足」についてはハシルコトのブログを読んでくださっている皆さまならすでに対策はご存知だと思いますし、記事にも都度記載していますので、大丈夫だと思います。(え、知らないですって!?笑)
もし「教えて欲しい!」という場合は、脚作りならこういう記事↓や
脂肪をエネルギーに変える能力については、こんな記事↓などをご覧になってください。
ここでは走歴が重なって走力レベルが高くなったようなランナーが陥りがちな、【発展編】の失速原因について解説していきます。
★発展1解決!★マラソンペースがLTの速度域に近づいている影響

目標としているフルマラソンのタイム・巡航ペースがある場合、そのペースを楽にしようとするのであれば「Tペース(LT値)を上げよう!」あるいは「トップスピードを上げよう!」と考えて、本番のレースから遠いフェーズでトラックの3000mや5000mなどのタイム向上を目指したりすると思います。
走力がグングン向上しているランナーはそれでバッチリだと思いますし、スピードにノビシロのある方もそれでOKだと思います。
問題はVo2maxのノビシロが少なく…

Vo2maxは早いと半年、遅くとも1~2年で概ね全員プラトーになるんでしたね
LTもランニングエコノミーも、長い走歴があって相当のレベルまで向上している場合です。
その場合の解決策は…
① LT(Lactate Threshold・乳酸閾値)のスピード帯で、出来る限りボリュームを取ってさらなるLTの向上を狙う
Vo2maxはある程度以上は伸びないばかりか、生理的に徐々に低下してくことが分かっています。
対してLTやRE(ランニングエコノミー)は、年齢や走歴に関係なく向上していくため、こちらを意識してトレーニングのボリュームをたくさん取った方が可能性があります。
持久性パフォーマンス発揮のためには、Vo2max、エクササイズエコノミー、乳酸閾値が重要となる。エクササイズエコノミーと乳酸閾値は加齢による影響をあまり受けないが、Vo2maxは加齢に伴い徐々に低下する。
なのでヤコブ(ノルウェー式)の二重閾値走みたいな方法で、Tペースを小分けにしてダメージを極力受けないようにして、合計の刺激時間(ボリューム)をたくさん取ったりするんですね。
LT向上の鍵はミトコンドリアの大きさや密度などを育て、そして乳酸輸送体(MCT)の働きを高める必要がありますが、この能力の向上には”特異性”が特に重要。(え…いきなりムズッ!やめて!笑)
つまりLTを上げたければ、いかにLT付近のスピードの総刺激時間を多くするかが勝負なので、分割してでも総時間を確保することが、代謝能力の改善に大きく役立つ訳ですが…これも難しい!難しいの嫌い!眠い!!(笑)
じゃあ、簡単に意訳すると…
インターバル形式でも良いので、たくさんLTやれ!以上!
ですww
LTを改善するためには、筋繊維を取り巻く毛細血管の数を増やしたり、筋細胞中のミトコンドリア内で働く酵素活性を改善することが必要です。~中略~
LT付近の強度で行えばLTが、OBLA付近で行えばOBLAが改善すると考えられています。つまり運動強度の特異性に着目して行うことが基本です。
※難しいついでに(笑)、LTは血中乳酸濃度が急激に上昇するポイント、OBLAは乳酸が4ミリモルのポイントになりますので、2つは異なります。(あー、こういうの辛い~ですよね笑)
OBLAは血中乳酸濃度が上昇しはじめる屈曲点を指しているのではなく、特定の血中乳酸濃度(4mmol・L⁻¹)に到達する運動強度(あるいは酸素消費量)として定義される。
② モデレートでのロング走(30km~35km)
前述しました通り、走力が上がってくるとマラソンペースがLTに近づくため
・糖質への依存度がアップ(糖質優位)
つまりエネルギー源の多くを糖質(グリコーゲン)に依存することになるのですが、体内に糖質を蓄えられるのは限界(約2,000kcal)があります。
フルマラソンでは、とにかく糖質を終盤まで残すために節約して進んでいく必要があるので、みんな血眼になってレース前に
「これ、カーボだから♪」
とか言って、どうにか糖質を身体に蓄えようと(してるのかどうなのかw)食べまくる(笑)

特に走力レベルの高いランナーだと巡航ペースが速いので、速いペースではあるけれど出来るだけ糖質を節約出来るような身体のシステムにしていく必要性があるので、そこをピンポイントで鍛えることが必須。
なので
・可能な限り速いスピードで長く走る(持続的な最大化運動)、つまり一定のスピードでなるべく長くその状態を継続させる(脂質代謝が活性化するスピードで出来るだけ長い時間鍛える)ことが必要
となると、
通常練習で繰り返し実施するには、LTやMだと比較的短い時間しか継続出来ない&ダメージも心理的負担も大きいため、モデレート(Mより15秒~20秒/km遅いペース)が比較的安定して長い時間走れるので効率が良く、そしてダメージも比較的少なめなので必須
ということになります。
「ロング走は、スロージョギングになってはならない。スロージョギングは単に長時間脚を動かしているだけである。ロング走の適正ペースは、トレーニング全体におけるその練習の位置づけ、目的により異なるが、最も効果的な強度はたいていレースペースから10~20%遅いペースのゾーンである。(2~3回は、目標レースペースで行うロング走も必要である。」
③ マラソンペースとLTのスピードの幅を、再び広げる

前述のVDOT表から見たTペースとMペースのスピード差について、必ずしもその表の通りの”差”で走らなければいけない、ということにはなりません^^;
VDOTの数字通りに、全ての距離の記録が横並びになることがほとんど無いように。
走力レベルが上がったからと言って必ずしもTとMの差を少なくしなければ”いけない”訳ではなく、そこは個別性の原理ということで。(いくらVDOT表に”目安”はあっても、キツいものはキツいからね^^;)
なので自分のVDOTにおけるTとMの”差”にとらわれて、あるいは目標とするタイムに縛られて巡航ペースを決めることはないということです。
今まで自分が安定して結果を残していた頃のレース、巡航ペースが”ジョグ”のように感じていた、その当時のTペースとMペースの差を振り返ってみてください。
そしてフルマラソンのレースがキツく感じ、辛いものになってきた”転換期”のレースを見付けてください。
そのTとMの差があなたの個別性に合う、フルマラソンを上手に走るために適切なスピード差なのかもしれません。

私は、この辺りまでが楽だったかなー。17秒/km差。今はTが337なので…3分55秒/km前後の巡航が、比較的楽で良いところかもしれない
自然体で走れるマラソンの巡航ペースを上げたいのであれば、前述のTペースを上げる取り組みをしたり、(筋肉は減らさずに)除脂肪体重を減らすなどしてランニングエコノミーを向上させたりすることが必要になります。
改善なくフルマラソンの巡航ペースを上げようとすると、どうしてもLTに近づいてしまうためにレース結果が安定しなくなり、苦しいレース、やめたくなるような辛い時間が多くなります。
レベルが高くなってからの失速は”根性不足”や”マラソンに不向き”ということではなく、純粋にマージン(余白・余剰)不足によるもの、エネルギー代謝の問題に過ぎません。
TとMの”差”を見直し、正しくLT値を上げるトレーニングを継続的に積み上げていけば、再び高いレベルで安定したフルマラソンのレースが出来ることは、間違いありません!
★発展2解決!★カーボンシューズの与える影響

いくらトレーニングを積んで走力を上げていったとしても、その他の要因で簡単に失速してしまうことがあるフルマラソン。
その代表的な要因の1つが、カーボンシューズ。
巡航ペースは数秒/km速くなるものの、中盤から終盤のどこかのタイミングで脚が棒になってしまったら、その下落幅は簡単に序盤の貯金を取り崩して大きな借金となります。
ただ脚が棒になってペースダウンした際に「これはカーボンシューズのせいだ」と気付くのが少し難しく
・走り込み不足(練習不足)なのかな
とか
・テーパリング(疲労抜き)で失敗しちゃったから
など、他に理由を求める方も多いですよね。
でもあなたの失速原因、実はカーボンシューズによる筋損傷や、強烈な反発を身体で受け止める”受け皿”のダメージ、つまり「シューズ負け」しているのかもですよ?
じゃあ、どうしたらこれを解決出来るのか。
カーボンシューズをやめて、ノンカーボンにすれば?というのはナシで(笑)
※以下の解決方法はランナー個人個人で効果があるかないか、有益かそうでないかは分かれるところですので、参考程度で。
→私もこうしたトレーニングは数カ月~数年単位で実施してきておりますが、最新のカーボンシューズに対応出来なかったこともありましたm(_ _)m
① ★基本★筋持久力&耐衝撃性を高める「ジョグの質」や坂・補強を意識

厚底カーボンの反発に耐えるには、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」への耐性を高める必要があります。
なので、基本中の基本ではありますが
・不整地ジョグ
→着地角度の分散で怪我しにくいという他にも、不安定な路面で走る事による好影響
・坂トレ
→起伏走、特に下りは着地衝撃が強烈なので鍛えられる。でも怪我しやすい^^;
・プライオメトリクストレーニング
→アンクルホップ(縄跳び的な動作)やドロップジャンプ(段差から飛び降りた瞬間に高く飛ぶ)で、腱や筋肉の”バネとしての剛性”を鍛える
② シューズの履き分けによる適切なトレーニング

・ジョグやEペース(あるいはスピード練習)では適度な厚底のノンカーボンや薄底シューズを使う
→カーボンプレートが足関節(足首)の代わりのような役割を果たすため、ふくらはぎの筋肉が自ら縮んで力を出す必要性が減ってしまいます。
→つまり進むための仕事を”肩代わり”してしまうことがREを向上させる要因であるがゆえに、生理学的にはあたかも廃用性萎縮(使わないと退化する)のように、使われない筋肉は長期的には弱化する可能性が高いということです
参考:カーボンプレートを内蔵する厚底マラソンシューズが走行中の内側腓腹筋の筋および腱の挙動に及ぼす影響 – 順天堂大学
ただ「カーボンシューズを履いた状態でのロング走」の繰り返しによって、その反発に耐えうる筋肉・下半身の強固さを養う、みたいな考え方もありますので、その辺りは今後の研究や実際の練習現場でのランナーが感じる情報を収集していきたいです。
ちなみに私(げん)は「ミズノ・ウェーブリベリオンプロ3」や「サッカニー・エンドルフィンエリート2」でしばらくロング走やスピード練習を実施して”どうにか鍛えて慣れたい!”と継続しましたが、いくら頑張っても全く慣れませんでした(いつまでも脚が棒になる状況から抜け出せず^^;)
まとめ

初めてとなるハシルコトADVANCEの記事、結局1万文字以上の長々とした記事になってしまって…スミマセン^^;
でも、いかがでしたでしょうか。お役立ちとなっていれば、良いのですが…。
【第1回ADVANCE記事のまとめ】
としてのキーワードは4つ
1、意識的なLTのボリューム増で、走歴を重ねて高いレベルにあるLTのさらなる向上を狙う
2、モデレートでのロング走を繰り返す事で、速いペースでの脂質代謝をこれでもかっ!と鍛える
3、Tペースと本番の巡航ペースを、改めて見直してみる
4,カーボンシューズを使うにあたって「シューズ負け」しないようなトレーニング、ノンカーボン厚底シューズや薄底シューズの利用
また違う観点からもレベルが高くなったランナー向けに、様々な内容のハシルコトADVANCE記事を書いていこうと思いますので、良かったら応援してくださいね!
もし
(こんな記事が無料なんて…申し訳なさすぎる!)
という神様がいらっしゃいましたら、いくらでも記事下にブログサポートのご案内がありますので、ご遠慮なくどうぞ!(笑)😂
あ!そうそう、1月24日(土)13時~大阪・長居公園で練習会をやろうかな~と思っています!

先日の東京練習会
近日中にその告知&参加者募集しますので、関西圏の方は、良かったらご予定を空けておいてくださいね!
翌日にタイムが出やすい大阪ハーフが開催されますので、出場される方は難しいと思いますが^^;


