【コラム】体感や直感・経験知に反する事への理解と実施とか

体感や直感・経験知に反する事のへの理解と実施とか

【記事の内容は、以下の動画でもご覧になれます!】

(この記事は2022年5月の練習日誌に”サブタイトル”として記載された記事を、改めて加筆・修正して記載したものですm(_ _)m )

人から走り始める、私たち中高年・一般市民ランナーにとって

「速く走れば、速くなるに決まってるでしょ」

とか

「たくさん走れば、どんどん強くなれるはずだ」

みたいな、感覚的に間違いないと思えること直感的に”おそらく合っているハズだ”と感じられる事からの脱却は、誰が何を言っても本人が”合ってる”と思っている限り、なかなか難しい。

得てして私たちは、経験から判断しがちな側面もあるので

実際に一定期間はそれで速くなった「成功体験」があると、長い目で見た時にそれが実は”普遍的※1なものではない”、なんて決して思わないですからね^^;

※1 普遍的:時や場所を超えて、変わらず当てはまる性質や価値観

画家のピカソが、次のような言葉を遺しています。「成功は危険だ。自分の成功をコピーし始めてしまう。それは創造性の不妊を招く」

成功体験が、新しい発想・知恵を生み出すことを妨げてしまうというのです。成功を収めたことによって冷静な判断力を失い、状況が変化しても同じことを繰り返し、転落への道を突き進んでいく。

成功体験は9割捨てる

たとえ「それは怪我しやすいよ」とか「練習内容を変えないと、走力の伸びに限界があるよ」なんてアドバイスされたって

「うっせーわ、バカヤロウ!俺は今までコレを信じて頑張ってきて、その結果、強く・速くなったんだ!」

ってなるだけ(笑)

多くのスピード練習、いけるかどうかの速いペースで走るポイント練習、あるいはタイムトライアルのような“最大努力”を何度も実施して鍛えられたという実感・経験があれば、それこそが速くなる近道だと考えるのは当然。

毎月たくさんの距離を走って、それこそ月間走行距離400km・500km・600km、あるいはそれ以上を毎月頑張って走って速くなった、強くなったという実感・経験があれば、それこそがランナーとしてレベルアップする最短距離、と考えるのも当然。

全力を出し切ったハーフやフルマラソンのレースの後にたいして休養を取らず、すぐに通常練習をしないと「もったいない」ような「走力が落ちる」ような感覚さえ芽生えたり、それによって強くなる、あるいは実際に”強くなった”ような感覚があったり。

走力向上の魅力に取り憑かれると、頑張らずにはいられなくなります。

★★★

時は2022年6月。

とある地元のレース(道民ランナーにはお馴染みの、千歳JAL国際マラソン)の42km地点で、沿道から走っているランナーに応援をしている時のこと。

もうすぐスタートから4時間が経過しようとしている所で、良く知っている顔の仲間が帰ってきた。

膝にグルグルとテーピングが巻かれていて、歩くようなスピードでボロボロになって帰ってきた。

「ナイスラン!よく帰ってきた!おかえりなさい!!」

そう声をかけた。

でも

「ナイスサブ4です!!」

とは、とても言えない。

恥ずかしいのか情けないのか、苦笑いをしながら手を少し上げて顔をうつむきながら通過する彼を見ていると、何とも”いたたまれない”ような気持ちになる。

その男は私が初めてサブ3を狙って撃沈した2016年洞爺湖マラソンで、同じく初サブ3を狙って私より前で巡航し、見事2時間58分で達成したランナーだ。

まだヴェイパーフライを始めとする厚底シューズが世に出る2018年より前の、みんなが薄底シューズで走っていた時の古い話です^^;

2016年3月のサンスポ古河はなももマラソンで3時間5分切りを達成(3時間04分28秒)し、その勢いのまま 「よし!次はいよい...

彼とはそれまで一緒にロング走などを走ったりして、共に苦しい練習を積み上げ「お互い、いけるハズ!」と挑んだレース。

しかしそのレースでは、残念ながらサブ3から8分も遅れてゴールしてサブ3ならず、落胆する私。

そして対象的に私がゴールした時、彼はサブ3を達成した仲間同士で、歓喜の渦にいた。

厳しいポイント練習を含め、月間400km以上の距離をこなしていた彼を見て

(私より遥かに頑張ってたんだから、達成して当然なのかもな)

と、心から思いました。(その頃の私は、主に月間300km前後でした)

お互いにSNSで繋がっていたので、レース後は改めて

「本当におめでとうございました!」

という至って紳士的なコメント(笑)をしたものの、その返答は

「まだまだ俺は先に行く。お前もせーぜー頑張れよ!」

的な、”遙かな高み”からディス込みで返されて、イラッとしたものですw(たくさん冗談を言い合う、同じ年齢・同級生の間柄です笑)

それから彼はさらなる記録の向上を信じ、何ヶ月も連続して月間500km以上を走るようになってました。

もっと高いレベルの目標に向かうんだから、もっともっと走って、さらに頑張るんだ!という声が聞こえてくるような頑張りようでした。

ポイント練習もしっかり実施しながら、走力向上に余念なく取り組んでいる様子に、純粋に

(こんな事して身体は壊れないのか。とても真似出来ない。でも、もしかしたら…こういう人が上にいくのかもな)

と感じたものです。

そう感じてはいたものの、私自身は自分の持っている身体に無茶をさせない範囲、自分が学んできた”出来る範囲”の練習しか出来ないので、信じてそれを積み重ね、2016年5月の撃沈・洞爺湖マラソンから半年後、2016年11月のつくばマラソンで一足遅く初サブ3を何とか達成。

当然ながら薄底シューズで走ったので、レース後は足裏が燃えるようでした^^;

2016年11月のつくばマラソンで、とうとう念願の初サブ3を達成しました。 サブ3を目指す方の参考に少しでもなれば幸いかと思い、掲載させて...

しかし月間500km以上に増やして走力向上を図っていた彼は、私が初サブ3をした頃にはもう、思うように走れなくなっていました。

体調不良や怪我が慢性化して、思うように走力を上げていく事が難しくなってしまったんです。

時と場所は戻って、2022年の千歳JAL国際マラソン、42km地点。

3時間50分台で帰ってきた彼を見て、

(6年前もし「うっせーよ!このバカヤロー(笑)」と言われながらも「月間500kmを何ヶ月も続けるはやめろって。走力が上がるどころか、走れなくなっちゃうぞ」とアドバイスしていたら、未来は、今は変わったんだろうか…)

と、心の中で少しだけ痛みを感じた。

★★★

走力を上げていって記録を向上させる事への欲望や達成感・満足感、承認欲求が満たされること、あるいは体型が維持される事も含め、ある一定以上の領域になると“中毒性”すら感じるようになります。

running addict(ランニングアディクト、ランニング中毒・ランニング依存症、軽いニュアンスだとrunholic・ランホリック)っていうヤツですね。

(走らないと、走力が落ちるんじゃないか)

(距離を減らしたら、太ってしまったり弱くなってしまうのでは)

(毎週ポイント練習しなきゃ…スピードが落ちるのは、早いっていうし…)

こういう感情が”ある程度”心の中にあるのは、トレーニングの継続性や長年に渡る右肩上がりの走力向上に大事なこと。

とはいえその思いが強すぎると、えらい目にあう人がいるもの、疑いようのない事実。

個人個人、身体が耐えうる、耐えてくれる負荷や強度・その年数は全く異なります。

逆に「信じられない!」という練習をしても、全然へっちゃら!という人がいる、というのも現実なんですよね~^^;

あなたのラン友さんや、SNSで繋がっているお知り合いの方でも、いらっしゃるんじゃないですか?ドHENTAIとしか思えないような、異常性のある人が(笑)

だから一概に、全員に「月間500kmとか600kmとか、やめろってー」とは、言えないんですよ^^;

凄く速く走るランナーや、とってもたくさんの距離を走る強いランナーの練習を、単純に表面上で見て

(さらなるレベルアップのためには、もっとやらなきゃ!)

(俺も(私も)、あの人みたいな練習をすれば、今より速く・強くなるはず!)

そういう気持ちに、誰でも一度はなるのではないでしょうか。

それはそこまでで得てきた、自分の成功体験や直感・体感も影響したりすると思います。

とはいえ憧れるランナーの見るべきポイントは、今やっている”表面的に見える”練習ではありません。

「オリンピック・チャンピオンや世界記録保持者がどんな練習をしているかなんて興味を持つ必要はない。彼らが10年前、駆け出しの頃どんな練習をしていたかに注目すべきだ。

リディアードのランニング・トレーニング

それまでの成功体験や直感に反して「もっと距離を!もっと厳しいスピード練習を!」という気持ちに、ブレーキをかけられるかどうか。

そこにこそ、さらなる走力向上の”肝”が隠されていると言っても、過言ではないかもしれません。

ある経営者が、「成功を続けている人は、成功体験を捨てられる人だ」と言っています。 ~中略~ さまざまな分野・立場で成功を続けられている人は、冷静に成功体験と向き合い、環境変化に応じて、柔軟に考え方や行動を変えているのです。

成功体験は9割捨てる

ここでの“環境の変化”とは、私たちランナーで言えば「身体の変化」や「加齢」という部分を指すかもしれません。

若い頃にランニングで身体を酷使していない私たち市民ランナーは、多くの距離や厳しいスピード練習をしても、まだ筋や腱がフレッシュに近いので数年~人によっては10年くらいまでは耐えられたりします。

その”耐えられた期間”の走力向上が”成功体験”となるのですが、それを捨てられるかどうか。

身体が頑張って耐えてくれている、まだ大きな怪我をしていない今のうちに成功体験を捨てて、適切な負荷の練習に変えられるかどうか。

怪我なく、無理なく、10年・15年とレベルアップを図っていくには、どうしたら良いか。

怪我なく走り続けるための勉強と、長期に渡る適度な負荷で、間違いなく走力は上がっていくという信念を持つこと。

自分の出来る範囲の負荷を把握して、サボり過ぎず、やり過ぎず。

年齢や走歴によって年々変化していく、怪我なく疲れすぎず、出来る範囲内に収まる負荷の”塩梅(あんばい)”を常に模索しながらやっていく

という事も市民ランナーのマラソン練習の1つの醍醐味でもありますし、ランニングライフ10年生・20年生と楽しみながら速くなっていく、とっても大事なポイントなんでしょうね。

数ヶ月~1年・2年程度の練習で自分のポテンシャルを全て引き出して、レベルの高い、素晴らしいフルマラソンのタイムが出るなら誰も苦労しない^^;

何年も継続して、ようやく自分の中の最高のLT(閾値)レベル・ランニングエコノミーが獲得出来て、ランニング1年生の頃には夢にも思わかなった生涯ベストを生み出せるのが”抗いようのない仕組み”です。

「今年や来年、どんな成績を出すかよりも、5年先、7年先にどんな走りをしているか常に念頭におくべきだ。」-人間の身体が成熟するのに約20年(とビル・ベイリー)。1年や2年で爆発的進化を期待するほうが無理。それよりも理に適った正しいトレーニングを積むことで、長期的見地に立ったトレーニングへのアプローチをすること

リディアードのランニング・トレーニング

1日も早く・一刻も早く高いレベルに到達したい、速くて強いアイツに追いつきたい!と思うのは、意識を高く持って頑張るランナーは、みんな同じ^^;

そういう意味での体感や直感に反して自分を抑え、ほどほどのトレーニングを実施していく”逆説的”なことも、とっても大事なこと。

私たち市民ランナーにとってのマラソン練習の真髄・走力の向上の最短距離は、とにかく焦らないことです。

来月や来年の走力、次のレースでのタイム更新を考えたいのはもちろんだしそれも頭の片隅にはあるけど、それをメインにして、それ”だけ”を考えるような練習は、やっぱりダメです。

それが結局のところ、ランニングライフを”太く長く”、つまり自分のポテンシャルも全て引き出せて高いレベルに到達でき、到達するまで、そして到達後も怪我や病気などの大きなトラブルなく、10年・20年・30年と走る事を楽しめることになると思いますよー(*^^*)

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ありがたい事に大…

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