改めて考える、フルマラソンの終盤対策【下】

改めて考える、フルマラソンの終盤対策【下】

こちらは「改めて考える、フルマラソンの終盤対策【下】」です。

【上】は以下からご覧になれますので、まだ【上】を読んでいない方は以下からどうぞ★

改めて考える、フルマラソンの終盤対策【上】 【記事の内容は、以下のYouTube動画風サムネイルから動画で見ること…は、今回も出来ません(...

【上】では

「フルマラソン・42.195kmという距離を、いかにうまく・最後まで走り切るか!」

というテーマに関して、バイオメカニクス的な観点から

日々のジョグ~Eペース下限はアップダウンのある場所で実施

・峠走や登山・トレイルなどの山活動

という2つのトレーニングから、しっかり脚筋力を鍛えていくことを推奨しました。

特にこれからの暑い時期、25℃~30℃を超えるようなコンディションで”速く・長く走る”のは難しいので、ジョグやEペース下限のランニングをアップダウンのある場所でやったり、週末などの時間が取れる日に登山やトレイルなどの山活動をして鍛えるのは、ほんとオススメ。

そして今回は【下】として真夏の基礎構築的なフェーズが過ぎて、いよいよレースが2~3ヶ月後に迫ってきた時に実施すべき、つまり特異性を高めていくフェーズでオススメの練習と、最後に補助的なトレーニングとしての”レジスタンストレーニング”、つまり筋トレ(体幹トレ)についてご紹介していきたいと思います(*^^*)

数万回の着地衝撃に耐えうる下半身の獲得

Mペースより速いペースでのロング走・変化走

2024年1月28日に開催された大阪国際女子マラソンで、前田穂南選手が19年振りに野口みずきさんの日本記録を更新し、2時間18分59秒で優勝しました。

その前田穂南選手、レース後のインタビューで

「距離をしっかり走り込んで、変化走を中心に練習をやってきたことが自信になって、スタートラインに立てた」

と、お話していました。

この変化走。

ブログの通常記事ではあまり触れていませんでしたが、2021年に書いた有料記事「1日も早くフルマラソンの終盤に強くなりたい人へ。」の中で、最大30kmにも及ぶ変化走の、フルマラソンにおける重要性を詳しく記載しています。

1日も早くフルマラソンの終盤に強くなりたい人へ。 未経験から始めた中高年市民ランナーにとって、フルマラソンの30km以降にペースダウン...

疾走とレストの距離・速度の設定が適切な変化走は、生理学的に”乳酸の再利用能力”(閾値走で鍛えられる”乳酸の処理能力”とは違う能力)、いわゆる”乳酸シャトル”の能力向上が期待出来るのですが…マニアックな読者向けの有料記事ではないので、ここは省略^^;(詳しいことは前述の記事に記載がありますので、気になればお読みください)

つまり“スピード持久力”と呼ばれる、速いペースで長い距離を押せる(生理学的)能力を大きく向上させる事が出来るのが、変化走です。

ただし記事の【上】でも記載しましたが、いかんせん生理学的能力を向上させても、その能力を発揮するためには

・メンタルタフネスの向上

・バイオメカニクス的な能力の向上

が同時になされていかない限り、向上させてきた生理学的な能力を限界まで発揮出来ないわけです。

そこで、ベースの能力としてすでに解説してきた

日々のジョグ~Eペース下限はアップダウンのある場所で実施

・峠走や登山・トレイルなどの山活動

を実施した上で、特異性の高い(レースの状況に近い)トレーニングを実施するフェーズに移行する時に

レースペースより速いペースでのミドル~ロング走、レースペースより速いペースを織り込んだ変化走

これが生理学的な能力向上と共に、バイオメカニクス的にも非常に有効になってきます。

そもそも生理学的な能力向上は元より、バイオメカニクス的な能力向上によるパワーアップは、持久力を向上させます。

最大筋力や最大パワーを増大させると、最大化運動時の筋力や筋パワーの発揮がより余裕を持ってできるようになり、持久力の改善にもつながります。

アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学

ここが非常に大事ですが…

・フルマラソンのレースペースで30kmを実施するバイオメカニクス的な負荷

・フルマラソンのレースペース以上で実施する30km走や変化走のバイオメカニクス的な負荷

どちらが負荷が高く、能力向上が図れそうかは…感覚で分かりますよね^^;

サブ4をしたくて5’30/kmで巡航したい。

サブ3.5をしたくて4’50/kmで巡航したい。

サブ3をしたくて4’10/kmで巡航したい。

そんな目標があるのであれば、思い切って

・レースペースより5秒~10秒/km速いペースでの20km~出来れば30km走

・レースペースより5秒~10秒/km速いペースで2km、20秒/km落としで1kmレスト×5セット~出来れば10セットの変化走

を繰り返し実施することで、確実に脚筋力は鍛えられて(もちろん生理学的な能力向上も大きく上がって)フルマラソンの30km以降でもしっかり脚が動くようになること、これは間違いなしです(*^^*)

なお、最初からレースペース以上のスピードで30km走とか変化走は確実に地獄を見ますので(笑)、15kmや20km(変化走なら4~5セットから)など少し短い距離(セット)から無理なく実施したり、レースペースの30km走が出来てから、さらなるレベルアップを目指して取り組んでくださいね★

有酸素能(ジョグの距離)があるだけでもダメ(ベースとしては超大事)、スピードがあるだけでもダメ、パワーがあるだけでもダメ、全てを高いレベルで揃えて”融合”させる練習がフルマラソンんのタイムを大きく向上させることになります。

それこそが速いペースで長い距離を走るペース走・変化走であり、単発ではなく、繰り返し繰り返しの実施で(すぐには効果が出なくとも)1年後や2年後に大きく飛躍出来ます!

④レジスタンストレーニング(筋トレ)・体幹などの補強運動

スピードはパワーから、という文言は以前からブログでも度々紹介していますが、

ヒルランニングはRトレーニングの一種である。距離の短い坂道を上るきついトレーニングであり、比較的長い休息時間で区切る。ヒルランニングにはレペティションと同様の効果があり、ランニングの経済性が増し、スピードを生むパワーも向上する。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ旧版 

「走るための筋肉は、走ればつくでしょ!」

「補強(補助)運動?筋トレとか体幹トレ?面倒くせーから、やらねー」

という方、実は多くないですか?

なぜなら、かつて私がそう思っていたから(笑)

でもラン友さんから色々な話を聞いたり、ブログやYouTubeで筋トレ・体幹トレの重要性などを見たりして

(やっぱり体幹トレや筋トレは、やった方が良いのかな~)

などと考えて、試しにやってみた方もいるのでは!

しかーし!ランニングは続いても、体幹トレや筋トレは続かなかったりします^^;

なぜか。

「これって、やる意味あんのか?」

となりやすい、

即効性を感じにくいトレーニング

に他ならないですよね。

やっぱり「絶対に効果がある!」って確信を得られないと、何をしても中々続きません。

あと私たち中高年ランナーは、とにかく忙しい!!

補強運動してるヒマがあったら、ボケーっとしていたいし、ゴロゴロ寝ていたんだ!!(笑)

なので星の数ほどある筋トレ・体幹トレから、

これだけはやっとけ!速くなるし、強くなるから!

というのを厳選して

・こういう種類の体幹・筋トレをすると、走るために効果的ですよ

というのを今回ご紹介し、以下は次回の記事にて解説します★

・軽い負荷で回数多めか、重い負荷で回数少なめか、どちらがランナーに効果的か

・週に何回くらいやったら良いのか

・持久系トレーニングと並行して実施していく際に、大事なことは何か

では筋トレについて、いってみましょう~♪

主運動の能力を向上させるには、単一のトレーニングよりも複合トレーニングの方が効果が高いといえます。また複合トレーニングを行う場合、主運動の能力を増幅させる効果は、補助運動の違いによって異なってくるといえます。

アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学

1.レジスタンストレーニング(筋トレ)で大事な、3つの種類

簡単に言うと、長距離ランナーの力発揮の質を向上させるためのトレーニング手法の1つに

「レジスタンストレーニング」

というのがあります。

これが、いわゆる筋トレです。

長距離ランナーが実施するべきレジスタンストレーニングには3種類あります。

1.最大筋力向上トレーニング:スクワット・トラップバーデッドリフト・ブルガリアンスクワット・ランジなど

2.爆発的な筋発揮力向上トレーニング:オリンピックリフトやジャンピングスクワット、カウンタームーブメントジャンプなど

3.反動を用いるレジスタンストレーニング(プライオメトリクス的なやつ):ボゴジャンプやボックスジャンプ、ランの動きで言えばバウンディングなどもコレにあたる)

有料記事並みに難しい用語が並んでいますが…ごめんなさい^^;

これらを併用して実施する事で、ランナーにとって良い影響が及ぼされる事が研究で分かっています。

すべてのタイプのレジスタンストレーニング(最大筋力向上、爆発的な筋発揮、反動を用いる筋力トレーニング)は、3km及び5kmのタイムトライアルパフォーマンスや、ランニングエコノミー、vVO2max、ランナーの最大嫌気走行速度(maximam anaerobic running velocity:vMART)を向上させる事が示されている。

コンカレントトレーニング 最高のトレーニングを引き出す「トレーニング順序」の最適解

3km及び5kmのタイムトライアルパフォーマンスや、ランニングエコノミー、vVO2max、ランナーの最大嫌気走行速度を向上させる」

走力アップが確実だと、分かっているんですよ!

ほら、やりたくなってきませんか!!(笑)

筋肉が強化されるので一歩の力が強くなりますし、今回の記事でのメインテーマである、フルマラソン終盤での強さも(バイオメカニクス的に効果大ですので)向上します♪

それでは3種類のレジスタンストレーニングについて、それぞれ解説していきますね★

①最大筋力向上トレーニング

筋トレ初心者の方(特に女子)は、まずはスクワットやランジを自重で10回1セット出来るようになるまで鍛えてください。

【スクワット】

【フロントランジ】

慣れてきたり、すでに筋力にある程度自信がある方は、ブルガリアンスクワットの実施を。

【ブルガリアンスクワット】

まずは自重から出来る範囲の回数(6回~10回ほど)をやってください。

動画内にもありますが、ハムと臀部にしっかり効かせるために「歩幅広め」で。

慣れてきたら、軽めのダンベル(2kgとか)を持って実施してください。

「最大筋力向上」が狙いなので、常にギリ5回~10回出来るくらいの重さが良いです。

とはいえ、いきなり片手に10kgずつ、計20kgでやるぜ~~!とか、鼻息荒くやるのはダメですからね(笑)

10回以上余裕で出来るようになれば、少し負荷を上げる…そんな感じでOKです♪

(私は現在、15kgのダンベルを両手に1つずつ、計30kg持って実施していますが、1kg・2kg・3kg・5kg…と、段階を経て15kgずつのダンベルを持てるようになってます)

②爆発的な筋発揮力向上トレーニング

オリンピックリフトを自宅で実施するのは難しいので、ジャンピングスクワットが現実的かなと思います。(ジムに行ける人は、ジムで正しいやり方を学んで実施してください)

こちらもまずは、自重から出来る範囲の回数(5回~10回ほど)をやってください。

【ジャンピングスクワット】

最初は飛ぶ高さが低めでも、徐々に高くジャンプする事を意識して。

慣れてきたら、ダンベルなどの重りを持って実施するのも良いですし、私は足首に巻くタイプの重りを付けて実施しています。(amazonや、ホームセンターなどで売ってます)

③反動を用いるレジスタンストレーニング

これはプライオメトリクストレーニングと言われているカテゴリーの練習です。

プライオメトリクストレーニングの効果について、書籍では

プライオメトリクスとは、ほとんどすべてのスポーツ・パフォーマンスにおける重要な構成要素である爆発的パワーを発達させるためのトレーニング方法である。そのパフォーマンス向上効果は、今日プライオメトリクスをトレーニングに取り入れている多くのコーチや選手たちによって確かめられており、競技力向上のための計画を立てる上での不可欠な構成要素となっている。

爆発的パワー養成 プライオメトリクス

プライオメトリクストレーニングには”なわとび”のような、軽いジャンプを繰り返す練習もあるのですが、ごく初心者のランナーの方むけです。(LSD的な感じ)

レベルが高くなってきたら、プライオメトリクスも「最大努力」に近いやり方の方が、より費用対効果が高くて効果的。(短期間で強くなっていける)

ランニングの動作に一番近い、効果的なトレーニングは、よくご存知の

バウンディング

です。

日々長い距離を走るだけでは、バネの能力には過負荷の刺激はかかりません。バウンディング運動がそのような刺激を与えることで成績が改善したといえます。~中略~

長距離系の選手でも徐々に導入すれば実施は可能で、長い距離を走り込むだけよりも質の高いトレーニングになります。

アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学

バウンディングも意外と奥が深いので、まずはしっかり学んでから実施。大事です。

バウンディングが出来ない場合は、ボックスジャンプやポゴジャンプ(アンクルジャンプ)でもOKですし、併用も可です。

ボックスジャンプは着地の負荷が高めなので、土や芝の上でやるのが基本です。

自宅でやるなら、床が比較的柔らかめのところで。まずは5回~10回で充分。

慣れたら徐々に回数を増やしていきます。

ポゴジャンプは以下の動画に詳しいです。

下半身の固め方、上半身の使い方などを学んで実施くださいね。

以上がランナーにとって効果のある、3つのレジスタンストレーニングになります(*^^*)

なお、ダンベルを持つ場合や重量を増やす場合は、慎重にお願いします。

無理をすると、簡単に肉離れなどの怪我をするのがレジスタンストレーニングです。(もう何年も前ですが、私はハセツネというトレイルレースに向けた筋トレ中に、肉離れの経験ありです^^;)

マラソントレーニングも焦れば焦るほど、早く目標に到達したい!という思いが強すぎると過負荷になりやすく、継続して良いトレーニングが出来なくなりますよね。

レジスタンストレーニングも同じです。過負荷にせず、ちょっとずつ。

少し長くなってきましたので、

・持久系練習とレジスタンストレーニングを実施する際の相互影響
・【レジスタンストレーニングの実施例】
・【コンカレントレーニングの実施例】
・体幹トレーニング
・リカバリーに関しての考え方

については、また来週にでも(*^^*)

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ありがたい事に大…

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