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【第2回】ハシルコト・アドバンス「VDOTの設定ペースを守って1000m×3本、落として5本、どっちが効果的だ!?」
【記事の内容は、以下のYouTubeでも見ることが出来るようになる予定です!】

疲労を抜いていくテーパリング、調子をレース当日に合わせるピーキングなどで最高の準備をし、自分にとって最も速く走れるカーボンシューズを選び、気温や風・レース展開などに恵まれるなどして出した、レースで出しうる最高の結果を参考にして算出する”VDOTの設定ペース”というのは、いわゆる鬼設定(あるいはムリゲーw)である(笑)
日常の練習ではノンカーボンを使っていたり、仕事で疲れ果てていたり、妻(夫)とケンカ中とか(笑)、体調イマイチ、メンタル的に全くやる気が出ない、暑すぎる・寒すぎる、向かい風で地獄w…などなど
無数にコンディションやパフォーマンスを下げる要因がある中で、常に設定VDOT通りの練習をするとどうなるか。
答えは、簡単だ。
いち早くモームリ(笑)

400mレペ10本のつもりが8本で限界になったとか、1000mインターバル5本の予定が3本で肺が潰れそうになったとか(笑)、30kmを走る予定が思いのほか息苦しくて25kmで「怪我したり疲労を残してもいけないから、あえてやめよう」とかもっともらしい理由をつけてやめるとかw
理由はどうあれ、真面目にタイム向上に取り組む市民ランナーであれば、一度は経験しているはず!(経験してない人がいたらごめん笑)
ここで思うのが
(予定より距離は走れなかったけど、速いペースで頑張れたんだから良かった)
(少し遅いペースでやるよりも、絶対に効果は高いはず!)
(良い練習が出来た!)
誰しも自分が実施した練習について正当化をしたがるので「よくやった!」「頑張った!」という評価を、自分に下(くだ)しやすいもの^^;
でも薄っすら心の奥で思うわけです。
(少しペースを落として予定の本数や距離を実施したのと、撃沈したけど速いペースで頑張った今回の練習と、本当はどっちが良かったんだろう)
ね?
さて多くの場合は、どちらが”効果的”で”合理的”であると言えるのでしょうか。
結果は何となく分かっているかもしれませんが(笑)
練習を始める前からペースを落とす”勇気”を持ってもらうために
客観的に整理しましょう!
VDOTの設定は”義務”ではなく、”目標値”である

そもそVDOTの(TとかIとかの)設定ペースというのは、
であるということを、ちゃんと理解しておく必要があります。
ということはどういう事かと言うと…
体調や気温、風、やる気、仕事でのイライラ(笑)などで前後する最適な”その日”のペース調整は、自分でやってね♪
ということであり
真面目に守る必要は、全くない!
ということです。
ここで気になるのが、その効果ですよね。
設定ペースを落とした時の効果の違いは?

走ることによる能力向上は”特定のごく狭い範囲のスピード”でしか効果がない、範囲を少し外れると急激に効果が減少する、みたいなことは全くありません。
乳酸の処理や再利用を促す能力を上げていくための、おなじみの閾値走であっても、例えば
VDOT55のランナーは3分56秒/kmペースで20分の閾値走を実施”しなければならない”ということではないですよね。

ダニエルズのランニング・フォーミュラでも、ペースや疾走時間によって様々なTペース走があるように。
以下、表1のLT1・LT2・OBLAを見ると分かりやすいですが

血中乳酸濃度は
・比較的LT1やLT2、OBLAのポイント辺りで傾斜が少し急になる
という感じのポイントであり、大事なのは乳酸が多めに産出される”その辺りの範囲”で、なるべく可能な限り刺激時間を増やすというのが能力向上のポイントでした。
刺激時間を増やすために、LT向上が期待出来る範囲で多少ペースを落とすような練習は効果的であるということは、おそらく確実。
“おそらく”というのは、科学的に明確な結論として実証はされていませんが、トップクラスの選手が実施するトレーニング理論と練習、そしてレース結果を見ると”おそらく確実”ということです。
二重閾値走で話題になったノルウェー式(ヤコブ・インゲブリクトセン選手が実施している事で有名ですね)でも(少し難しい用語を使ってしまえば)2mmol~3.5mmolの間でペース(厳密に言えば血中乳酸濃度)を徹底的に管理しながらボリュームを重ねています。
ヤコブ選手のメニューで言えば
・6分間走×4~5本(2.5mmol以下)
・400m×25本(3.5mmol以下)
・1000m×10本(3.5mol以下)
が広く知られていますが”mmol(ミリモル)”で書いてると、何が何だかさっぱり分からない(笑)
VDOT的&市民ランナー的に翻訳すると
・6分間走×4~5本(Mペース前後)
・400m×25本(20分閾値走のペース)
・1000m×10本(20分閾値走から3秒~5秒/km遅いペース)
みたいな感じで実施すると、キツすぎないけど間違いなく良い刺激になる負荷のボリュームを確実に積み上げていけることになる、という感じです。
つまりLT練習で言えば
少々ペースが遅くなろうが、効果は大して変わらない
ということにも繋がりますので、安心して少し遅めで走ってください(笑)
これはRペースやIペース・CVペースであっても3~5秒/km落として全本数を「1~2割の余裕を残しながら完遂」の方が
・心拍数が高い状態で安定(撃沈すると苦しい割に心拍が下がって効果も下がる)
・神経系への刺激も安定
・受けるべきではない疲労やダメージを受けてないので、次の練習に悪影響を及ぼさない
となりますので、完遂優先が正解です。
ノルウェー式のトレーニング理論について
ノルウェー式(ヤコブ・インゲブリクトセン選手の練習方法に代表されるトレーニング理論)は数年前に話題となり、多くのブログやYouTubeでその内容については散々解説されてきていると思いますので、あえて私が今さら詳しく解説することもないかなと^^;
ただ前述で少しノルウェー式の話題が出ましたので、今回の話題に絡めて
・速さよりも、完全にコントロールしたスピードでボリュームを取る事が重要であること
・LT強度に対するジョグのボリュームと、その(ジョグの)強度について
・怪我防止の他に重要な意味を持つ、ジョグのボリューム極大化
について、それぞれ簡潔に。
閾値走のペースをコントロールする重要性
ノルウェー式はとにかく、ポイント練習も低強度のイージーランも
想定している負荷よりも、決して大きくさせないように細心の注意を払っている
という印象が強いです。
練習中に身体に与える負荷を大きくさせない代わりに、全体のボリュームを可能な限り増やす、みたいなイメージですね。
負荷と回復のバランスを綿密に調整し、トレーニング中もその想定を超えないようなランニングをすることで、いや、そうしないと高ボリュームで閾値近辺の負荷を頻度高く実施し、ジョグのボリュームも非常に多く取る(週間160km~)ことは出来ないという”考え方”が行間から読み取れます。
「z1での高いトレーニング量と、z2およびz3での中程度のトレーニング量の組み合わせは、現代の長距離ランナーには非常に一般的なパターンです。この組み合わせはパフォーマンスの向上をもたらし 、高度なトレーニングを受けたエリート中長距離ランナーにおいて非常に高いパフォーマンスと関連付けられています」
Z1=ジョグ Z2=マラソンペース Z3=10kmペース
高ボリューム低強度アプローチにおける乳酸誘導閾値インターバルトレーニングは、長距離走トレーニングの進化における「次のステップ」となるのでしょうか?
そして高強度のトレーニングを少量挟みながらも、LT強度(LT1~LT2~OBLA)の刺激をメインに多く取っていくことは大きな成果があると、概ね確定していると思われているためです。
vLT2付近/でのトレーニングとパフォーマンスの向上およびその生理学的決定要因との関係を説明する基礎メカニズムは明らかではありません。しかし、この特定の運動強度を使用することで、乳酸産生の減少とは対照的に乳酸の除去を含む筋肉特異的適応が改善されるという仮説が立てられています。
高ボリューム低強度アプローチにおける乳酸誘導閾値インターバルトレーニングは、長距離走トレーニングの進化における「次のステップ」となるのでしょうか?
結構な昔から
「マラソンは結局LTである」
と言われてきましたが、10年20年の長さで見ると様々なトレーニング・トレンド(高強度の優位性が言われたり、LSDがメインになったり、みたいな流行)が出現しながら、最終的に再び
「やっぱりLTだよね」
に戻ってきた感があります^^;
LT強度に対するジョグのボリュームと、ジョグの強度について

前述しましたが、ノルウェー式の肝の1つと言えるのが、週間走行距離・月間走行距離の多さです。
その中でも最大のボリュームとなるポイント練習間の”回復日”とも言えるジョグを実施する際、ヤコブ選手は負荷の管理(心拍ベース)を異常なほど徹底されていて“軽い”と言われます。
ペースではなく心拍で管理しているのは、疲労や睡眠不足、そして気温や湿度などの外的コンディションによっても、同じペースで負荷は大きく変わりますからね。
ヤコブ選手は週間180kmくらいは走りますが
・LT36km(20%)前後
・ジョグ135km(75%)前後
・その他9km(高強度スピード、レースなど5%)前後
で実施しています。概ね従来の「80:20」の法則通りですね。
そのジョグの強度は
最大心拍の60~65%以下(最大心拍190なら114~124以下)
が絶対的なルールであり、その心拍をキープするためには登りや向かい風でのペースダウン、あるいは歩きでさえも”いとわない”という考え方です。
ジョグの最中、心拍見て「いけない、いけない」って、歩きます?(笑)
大人になってからランを始めた市民ランナーにとって、ちょっと衝撃じゃないでしょうか^^;
心拍120前後なんて外ランで少しペースを上げたり坂があるとすぐに超えてしまいますので、試してみてください。なかなか難しいですよ(笑)
少し前の記事で「超回復を手助けしてあげる余白を、”あえて”身体に作る」とか「わざと手を抜く”ようなトレーニングをしなければいけない」と書きましたが
ノルウェー式ではことさら回復日の管理が厳しく、とにかく“トレーニングにしない日”というようなイメージの練習日であり、全てはLT練習などのポイント練習を成功に結びつけるための
“効果を何も期待しない”くらいの「最も高度なトレーニング技術」
と言っても過言ではないくらい、前述の記事で記載した「低強度で身体をコントロールし続ける」ことが必要です。(走力が高いランナーでも、LSD的なランに慣れている方は大丈夫だと思いますが^^;)
ただ多くの市民ランナーが日常的にジョグの日をある程度の”トレーニング効果日”にしている現状を見ると、効果を期待しないようなランニングを実施する、その難易度の高さを感じませんでしょうか。
回復日のジョグは
・回復を阻害(邪魔)しないための、ただの移動
・回復日は”負荷が低すぎる”、あるいは”遅すぎる”ということは一切ない
・走り足りない、で終わる
ということを、心に刻むべきです。
怪我防止の他に重要な意味を持つ、ジョグのボリューム極大化

ジョグのボリュームを大きくしていく考え方は、ある意味では古典的であり、リディアードさんのトレーニング理論(まず週160kmいっとけ)に代表されるやり方です。(いや、まず週160kmって鬼かオイ笑)
「ランニングで最も効率よくスタミナをつける方法は、週160km、自分の最高安定状態よりやや低いレベルのスピードで走り、さらにやる気もあって時間も許すならば、できる範囲でジョギングのような軽いランニングを補助的に行う、というプログラムを実行することである。」
この”ジョグのボリュームを増やす”という効果は、心肺能力や骨・筋・腱の強化や回復力の向上や怪我の防止などの有酸素運動に付随する順応などの効果も含まれますが、
・ランニングエコノミー(RE)の向上
にも、大きく寄与していると考えられています。
もちろんLTペースなどの速いトレーニングで、速いペースでのランニングフォームが洗練されていきますが
・ゆっくり走るランニングでも、走る動作の効率化
が図られます。
これは走歴や生涯走行距離でランニングエコノミーは高まっていくという、従来から知られている事実からも明らかです。
初心者の場合、ランニングエコノミーを向上させるファクターなかで最も重要なのは、どんな練習をするかということよりも、今までに走ってきた年数(および走ってきた距離)だろう。
まとめ

前回は通常記事を1つ挟んで、今回は第2回のハシルコトAdvanceとして記事を作成してみました。
特にヤコブ選手の実施しているノルウェー式を解説しようとすると、どうしても少し難しくなりますので…Advanceとしました。
【第2回ADVANCE記事のまとめ】
としてのキーワードは5つ
・VDOTの設定に縛られることなくペースは柔軟に、無理なく全行程の完遂を目指すイメージで!
・少しペースを落としたからといって、効果に大きな違いはなし!むしろ途中でやめちゃうと、効果は大幅減少と思うくらいでOK!
・LT強度はM~Tペース強度までを目安に、無理のないところで実施してボリュームを取る!
・回復日のジョグは、最大心拍の60%~65%くらいを目安にゆっくり、身体が頑張って回復しようとしている邪魔をするな!
・その弱い強度のジョグでボリュームを大きく取るような意識を持って、有酸素運動の効果やランニングエコノミーを最大限向上させろ!
次回もまた違う観点から、レベルが高くなったランナー向けに様々な内容のハシルコトADVANCE記事を書いていこうと思いますので、良かったら下の”いいね”を押してもらって、応援してくださいね!
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★★★
1月24日(土)13時~長居公園でハシルコト大阪練習会を開催する予定です!
ご予定の空いている方は、是非ご一緒しましょう~★



