フルマラソンでサブ3.5を達成したランナーが次の目標として狙うターゲットは、3時間20分切り(サブ3.20)ではないでしょうか。
サブ3.5は4’50/kmで巡航していれば、終盤ゆるやかにペースダウンしても3時間27~28分でゴール出来ました。
しかし、3時間20分となるとそうはいきません。
42.195kmを4’44/km平均で収める必要があります。
スタミナタイプのランナーやロング走を充分に実施したランナーであれば、巡航ペースが4’40/kmでも、終盤もほぼイーブンで走って達成できるかもしれません。
しかし、終盤にゆるやかにペースダウンする事を考えると、可能であれば4’35/kmに近いペース、つまり余裕を持った状態で2時間18分(4’36/km)~19分(4’38/km)ほどで30km地点まではいきたいところ。
そして30km地点を通過した後、わずかなペースダウンをしながらも、2時間42分(4’38/km)~43分(4’40)で35km地点まで到達すれば勝利はかなり濃厚。
残りの7.195kmが万が一、5’07/km平均まで落ちても3時間20分を切れます。
そう考えると、ある程度の余裕を持って終盤に入れますし「もうダメだ…」と、気持ちが切れてしまう可能性を低く抑えながらゴールまでたどり着けます。
私が初めて3時間20分切りに挑戦した際も、4’35/kmでの巡航をベースにしてレースを進めました。
サブ3.5ランナーであれば、4’45/km~4’50/kmでの巡航は現実味があっても、4分30秒台/kmの巡航となると軽く別世界になって「本当に終盤までペースを維持できるだろうか…」と不安になる事もあるのではないでしょうか。少なくとも、私はそうでした。
サブ3.5から3時間20分切りまで走力をアップさせる為には、どのように練習に取り組めば良いのか検討してみたいと思います。
目次
記事の内容は、以下の動画でも解説しています!
3時間20分切りをするために安心なペースは4’35/km~4’40/km、つまり4分30秒台/kmでの巡航というのは前述の通りです。
ダニエルズのランニング・フォーミュラ
VDOT | 5km | 10km | ハーフ | フル |
---|---|---|---|---|
47 | 21'02 | 43'36 | 1'36'38 | 3'21'00 |
48 | 20'39 | 42'50 | 1'34'53 | 3'17'29 |
49 | 20'18 | 42'04 | 1'33'12 | 3'14'06 |
※VDOTについては、こちらの記事に詳しいです。
男子に多いスピードタイプのランナーであれば、5km20分をすでに切っている方もいるでしょう。
10kmやハーフのタイムもVDOT48の基準より良いタイムを持っている方も少なくないと思います。
スピードタイプのランナーであれば、4’35/kmの巡航ペースについては心配していないでしょうか。
逆に女性に多いスタミナタイプのランナーであれば、5km21分以上だったり、ハーフも1時間37分台・38分台というベストタイムの方もいるでしょう。
そういう方にとって4’35/kmでの巡航は難しい場合がありますよね。4’40/kmで巡航、終盤もペースダウンを最小限に抑えたレース運びを目指していきましょう。
上記のように、ランナーのタイプによって必要な練習や本番のレース運びは異なるのですが、レースでの自己ベストタイムをVDOTの表に照らし合わせ、閾値走やインターバルなどの練習メニューを実施する際のペース設定について目安にしながらやっていくと、無理なく走力がアップしていきます。
VDOT | Eペース | Mペース | Tペース | Iペース |
---|---|---|---|---|
47 | 5'34/km | 4'46/km | 4'29/km | 4'07/km |
48 | 5'28/km | 4'41/km | 4'24/km | 4'03/km |
49 | 5'23/km | 4'36/km | 4'20/km | 3'59/km |
Eペース:イージーペース Mペース:マラソンペース
Tペース:20分間閾値走ペース Iペース:インターバルペース
どちらかというとスピードタイプである私の場合を例に。
3時間20分切りに挑戦するレースから半年程前の、サブ3.5を達成する為の練習をしていた頃から、すでにVDOT48のTペースやIペースで走れていたので、それから半年経過した時点ではVDOT50程のTペースやIペースでは自然に走れるようになっていました。スピード的には充分な状態です。
インターバル・閾値走のスピードはあったものの、4分30秒台/kmという速いペースで長い距離、まずは30km地点まで走り続ける「スピード持久力」に不安がありました。
したがって、Eペースでのロング走を重ねたり、レースが近づいてきたら本番のレースペースである4’35/kmでのロング走を実施しました。
大事な事が3点。
1.スピードタイプにとっては、週末のロング走実施が大変重要。
2.平日のスピード練習で出し切ってしまい、週末のロング走が出来ない、やる気が出ない、追い込めない等の弊害が出ないよう、平日は追い込みすぎないようにして週末に備える。
3.可能な限り、ロング走をした翌日もある程度走る(セット練)。可能であればジョグペースでも良いので2時間走などをして脚作り。
4.ミドルレンジ(15km~20km)の距離をMペースで走る※
※本番で走るMペースを利用して15km~25kmの距離を走る事は、特異性の原理から考えても、練習効果は高いです。
4’30秒台/kmのスピードに、徐々に身体も心も慣れてきます。
通しでMペース走でなくても
・Mペース2km+Eペース1km、3km×5~8セット
・慣れてきたらM4km+E1km
などEペースでの休息区間を設けながら実施、レースが近くなってきたら通しでMペース25km~30kmをやるなど、無理なく4’30秒台/kmとお友達になっていってください♪
私の場合、8月~10月末のレースまでにロング走8回・軽めも含めてスピード練習13回実施、確実に4’35/kmでの巡航が可能となるスピードと、レース終盤まで大きくペースダウンしないような脚を作って本番に臨み、3時間20分を切りました。
またスピード持久力を養成するため、スピードタイプのランナーがスピード練習をする際、少し距離長めで実施した方が、良い結果が得られる可能性が高いです。
1000m(4’00/km)インターバル5~7本ではなく、2000m(4’05/km)3~5本や3000m(4’10/km)2~3本のインターバル
20分閾値走(4’20/km)ではなく、40分の閾値走(20分閾値走よりキロ当たり10秒前後ペースを落とすので4’30/km)
また、前述のようにMペースを利用した15000m~20000mの変化走やビルドアップ(5’00/km~3’50/km)、ハーフを4’30/km~4’35/km、などの練習です。
カッコ内のペース設定は参考ですので、自分のVDOTに照らし合わせて、適切なペースで実施してください。
スピードタイプのランナーにとっては、どれも短い距離のスピ練より若干気持ちが重くなりませんか?
弱点を強化する練習はえてしてキツいものです。ノーペイン、ノーゲイン(苦労なくして利益なし)です。
気持ちや気分に流される事なく、目的に向かう「意志力」で「気分」を抑えこみ、必要な練習に取り組めるランナーは凄く伸びます。
<スピードタイプ・3時間20分切り参考練習メニュー>
月 休養
火 ジョグ~Eペース60分~90分+WS
水 30分~40分閾値走+ジョグ5~6km
木 ジョグ~Eペース60分~90分+WS
金 休養
土 15km~25km変化走(Mペース+Eペース)
日 30km走(ジョグ~Eペース)
太字:ポイント練習
水曜日ポイント練習 参考例
閾値走20分
10km~15kmビルドアップ(5’20/km~4’10/km)
400mレペ×5本~10本(Rペース走)
1000mインターバル3本~5本(Iペース走)
週末ポイント練習 参考例
時間走(2時間~3時間ジョグ)
Mペース走(通しで20km~30km)
スタミナタイプのランナーであれば、5km21分・10km43分など3時間20分を目指すために必要な段階とも言える短い距離の目安を達成出来ていないかもしれません。
特に中高年の男子スタミナタイプ、女子ランナーの多くは、フルマラソンの巡航ペースとしての4’30秒台/kmに恐怖にも似た感情がある方もいらっしゃるでしょう。
「マジで無理。ホント、速い」
みたいな^^;
そんなランナーにとって、スピードタイプのランナーのように4’30/km~4’3
5/kmほどのペースでたっぷり貯金を獲得しながら巡航するというのは難しい。
4’40/km~4’44/kmの、達成可能な平均ペースに近いギリギリのペースで、いかにゴールまで概ねイーブンで走り切るか。
それが狙うべき戦略ですよね。
では、どのような事を考えながら練習すれば良いのでしょうか。
まだ走り始めて数年であり、Vo2maxに刺激が効率的に入るような”1000mインターバル”などに、あまり取り組んでいないという方。
そういう方であれば、Vo2maxへの刺激が主目的となるような練習に取り組む事により、走るためのエンジン自体が大きくなってトップスピードが上がり、結果的にマラソンペースの大きな向上につながる可能性が高いです(^^)
無理だと思っていた4’30秒台/kmでの巡航も、夢ではありません。
大きく貯金しながらの巡航が可能であり、さらにスタミナに自信があれば、一層高い目標を掲げる事も可能になります。
平日のスピード練習では長めの距離のインターバル・ショートインターバル・ヤッソ800などのメニューでVo2maxを刺激して効率的なトレーニングを。
ジョグの日にはランニングエコノミー向上のためにWS(ウインドスプリント)を必ず実施。
そして週末は持ち前のスタミナを維持・さらに向上させるためのロング走や、Mペースのミドル走(or変化走※)で実践的なレースペースでの活動筋強化や心身共にそのペースに慣れる練習を。
※通しのMペース走でなくても
・Mペース2km+Eペース1km、3km×5~8セット
・慣れてきたらM4km+E1km
などEペースでの休息区間を設けながら実施、レースが近くなってきたら通しでMペース25km~30kmをやるなど、無理なくレースペースに慣れてくださいね(^^)
<走歴の短いスタミナタイプ・3時間20分切り参考練習メニュー>
月 休養
火 ジョグ~Eペース60分~90分+WS
水 1000mインターバル×3~5本+ジョグ5~6km
木 ジョグ~Eペース60分~90分+WS
金 休養
土 15km~25km変化走(Mペース+Eペース)
日 30km走(ジョグ~Eペース)
太字:ポイント練習
水曜日ポイント練習 参考例
閾値走20分
ショートインターバル
ヤッソ800
400mレペ×5本~10本(Rペース走)
週末ポイント練習 参考例
時間走(2時間~3時間ジョグ)
Mペース走(通しで20km~30km)
すでにインターバルなどの練習を真面目に何年も取り組んできているなら、Vo2maxへの刺激が主目的となるような練習は少し控えめにした方が良いでしょう。
その代わり、LT(閾値)・ランニングエコノミー・クリティカルパワー向上を目指すメニューを厚めに実施していく。
これを平日の中心に据え、週末は実践的なMペース(マラソンペース)を様々な方向から使うようにし、精神的に4’40/km前後のスピード感、精神的な壁を壊していく。
加えてスタミナもしっかり維持する取り組みも忘れずに。
そんな内容で3時間20分切りにアプローチするのが良いと思います(^^)
<走歴の長いスタミナタイプ・3時間20分切り参考練習メニュー>
月 休養
火 ジョグ60分~90分+坂ダッシュ5本
水 クルーズインターバル10分×3、15分×2,20分+10分+5分など
木 ジョグ60分~90分+坂ダッシュ5本
金 休養
土 1000m Mペースインターバル×10本~15本(レスト60~90秒)
日 30km走(ジョグ~Eペース)
太字:ポイント練習
水曜日ポイント練習 参考例
閾値走20分~40分(通しで走っても良いですし、クルーズインターバルでLTへの刺激時間を増やす取り組みも良いです)
1000mインターバル(月1回などやり過ぎない程度で)
400mレペティション×5~10本
ヤッソ800※(800m:3分20秒)
10km~15kmビルドアップ(5’30/km~4’20/km)
週末ポイント練習 参考例
時間走(2~3時間・ジョグ~Eペース)
Mペースでの15km~20km走※
10km~15kmビルドアップ(5’10/km~4’30/km)
※通しのMペース走でなくても
・Mペース2km+Eペース1km、3km×5~8セット
・慣れてきたらM4km+E1km
などEペースでの休息区間を設けながら実施、レースが近くなってきたら通しでMペース25km~30kmをやるなど、無理なくレースペースに慣れてくださいね(^^)
私が初めて3時間20分を切ったレース前3ヶ月間に実施していた練習内容はこちら
初めて3時間20分を切った、大阪マラソンのレースレポはこちら!
ペースに関して心理的な壁があったとしても、スピード練習で鍛え、マラソンペース近辺で何度も繰り返し練習をする事で、徐々にその不安は解消されていく事が多いです♪
そしてレースが近づいてきて、マラソンペースでの30km走をある程度余裕を持って実施出来るようになれば…
もう3時間20分切りという高い壁のヘリに、片手はかかっています!
あとは、どうやってもう片方の手をかけて身体を引き上げるか。
レース3週間前から始める疲労抜きのやり方があります。
レース1週間前やレース当日に心得ておくべきこともあります。
レースに向けた様々な対策も勉強して万全な状態でスタートラインに並べば、あとは一生懸命練習して計画してきたマラソンペースをトレースするだけとも言えます。
補給・給水も予定通り行い、ゴールまで身体を運ぶ作業だけです!
本番での素晴らしいゴールを思い浮かべてモチベーションを高め、日々の練習を頑張ってくださいね(^^)