目次
「WS(ウインドスプリント)をやるとランニングエコノミーがアップするんだよね~」
とか
「レペティションも、ランニングエコノミーを向上させるらしいよ!」
なんていう事が言われます。
この”ランニングエコノミー”。
「走の経済性」と訳される事もありますが、少しフワッとしたイメージはないでしょうか。
「効率的な走り方をすれば、速く走れるっていう事だと思うけど…フォームとか着地を良くすればランニングエコノミーが高まるのかな。詳しくは分からないけど^^;」
みたいな感じで、何となく分かってるような、分かってないような。
そんな方のために、深堀りすると中々難しい話になってしまいがちな”ランニングエコノミー”について、分かりやすく、簡単に解説していこうと思います(^^)
記事の内容は、以下の動画でも解説しています!
一定量の酸素でどれだけ速く走れるかということ。もし同じ酸素消費量で他のランナーよりも速く走れるなら、自分のランニングエコノミーがより優れているということになる。逆に、ランニングエコノミーは、ある一定ペースで走る際の酸素必要量と考えることもできる。
「ほうほう。同じ酸素消費量で他のランナーより速くなれるのが、ランニングエコノミーか。なるほど、なるほど…」
ってなって、全て理解出来る人はいますでしょうか?
理解出来る人は頭が良い!(私は無理でした笑)
ランニングエコノミーについて語る場合、ちょっと表現が難しい解説が多いような気がします。
実際にランニングエコノミーを言葉で表現しようとすると、難しい単語を使って長い説明をする必要は確かにあるのですが…
簡単にいきたい!
ですよね。
ランニングエコノミーの中身についての種類、そしてそれを鍛えるための練習。
難解な表現を翻訳し、誰でも分かるように、ごく簡単にいきます(^^)
ひと言で”ランニングエコノミー”っていう言葉を使いますが、その中身については色々なものが複雑に絡み合っています。
よくランナーの走る能力について、車に例えられたりします。
・ランナーの土台としての”骨組み”
・速く走るための”エンジン”
・効率的に走るための”経済性”=ランニングエコノミー
それぞれをバランス良く鍛えよう、みたいに言いますよね。
今回深堀りするのは黄色い下線、効率的に走るための”経済性”です。
単純に言えば、
マラソンを走るために効率的になるものは、全てランニングエコノミーの向上(経済性アップ)につながるという事になります。
上記のように車で例えるのであれば、
車のエンジンの燃費が良ければ、同じガソリン量・同じスピードでも、長い距離を移動する事が出来る
という事になりますよね。
車の燃費は様々な要因が関係して最終的に決まりますので、これはランニングエコノミーについての”総合性”という事が言えます。
それは分かりますよね(^^)
でも大事なのは、総合的な”燃費”を決める様々な要因(各パーツ・各能力)を明らかにすること、そしてそれをどう向上させていくか、ということではないでしょうか。
前述の車の例で言えば、車体を軽くすれば同じエネルギーで走るにしても軽い方が効率が良いので=ランナーの体重は”適切に軽い”方が有利(酸素を効率良く使える)、という風に考えられますよね。
この”軽量性”については、ランニングエコノミーの中身(パーツ)の一つです。
「体重が1kg減ると、フルマラソンのタイムが3分良くなる」
そんな話がまことしやかに語られますが、実際にダニエルズのランニングフォーミュラでも、休養後に体重が増えた場合のVDOTの下降については、おおむね1kg=3分の走力低下としています。
軽くなるとランニングエコノミーがアップ、経済的に走る事が出来てタイムアップ出来るんですね。
それでは”軽量性”の他に、ランニングエコノミーの”中身(パーツ)”について、どのようなものがあるのでしょうか。
ランニングエコノミーを決定する主なファクターは、速筋線維と遅筋線維の割合、バイオメカニクス上の諸条件の相互作用、トレーニング歴であると考えられる。
書籍ではちょっと難しい表現になってますが、3つ出てきました。
1.速筋線維と遅筋線維の割合
2.バイオメカニクス上の諸条件の相互作用
3.トレーニング歴
それぞれを簡単な表現に置き換えて、解説していきます。
遅筋線維の占める割合が重要なのは、速筋線維よりも遅筋線維のほうがミトコンドリアを多く含み、酸素の利用効率が高いからである。
走るために必要なのは、言うまでもなく”筋肉”です。
その筋肉には
・速筋:一瞬の力(短時間で大きな力)を発揮するときに使われる
・遅筋:一定の力を長時間発揮する持久力があり疲れにくい筋肉
という2種類があります。
ここでも詳しく説明しようとすると速筋線維にもタイプⅡa(遅筋の性質に近い中間筋)と、タイプⅡb(純粋な速筋)があるのですが、ここでは難しくなるので省略します。
このうち、速筋も大事ではありますが、フルマラソンを走るためにより重要なのは、有酸素運動を担う「遅筋」という事になりますよね。
いくら速筋が優れていても、フルマラソンは何時間も身体を動かし続けるスポーツ。
そのため遅筋の割合を増やし、そしてその遅筋の性能(ミトコンドリアの数や大きさ、そして毛細血管など)を向上させる事で酸素の利用効率を高まり、つまりランニングエコノミーが向上するという事になるんです。
ただしフルマラソンでPBを狙うような”速いペース”で長時間動き続けようとした場合は速筋も重要な役割を果たすので、速いペースを楽に走るための”ランニングエコノミー”も大事になります。
なのでスピード練習も実施して、目標とするペースを楽に走れるレベルの速筋も鍛える必要がある(速いペースでのランニングエコノミーも必須)という事になるんですね。
・LSD・ジョグ・Eペースなど、有酸素運動で長時間身体に刺激を与える
・朝食前の朝ラン(空腹ラン)
・閾値走(LT向上も立派なランニングエコノミーアップです)
・Iペース以外の、少し遅めのスピードで走るインターバルなど
バイオメカニクス的なファクターなかで、ランニングエコノミーの向上につながると考えられるのは、ランニング中の上下動とストライド長を最適化すること、そして、筋肉と腱の力を向上させ、着地したときに蓄えたエネルギーを、次の一歩のために再利用できるようにすることである。
スポーツにおける”バイオメカニクス”とは、運動しているときの体の動きや動作の仕組みなどを、物理や力学といった知識を使いながら理解していこうというものになります。
上記の文言の中で、ランニングエコノミーの向上につながるものとして
1.ランニング中の上下動とストライド長を最適化すること
2.筋肉と腱の力を向上させ、着地した時に蓄えたエネルギーを、次の一歩のために再利用できるようにする
と、2つ上げています。
これはそれぞれ簡単に表現すれば
1が”ランニングフォーム”
2が”スピードを生むのに必要なバネ・パワー”
ということです。
特にランニングフォームに関しては、様々な動きが複雑に絡み合っていて奥が深いです。
なので、なかなか頭で1つ1つを考えて動けるようになるのは難しい。
「フォアフットで着地してみよう」
「ストライドを伸ばしてみよう」
そんな事を考えて走ると”あっという間に”怪我する事になるのは、走る動きに協調性が無く、自分にとって無理な走り方になってしまっているからです。
しかしながらランニングフォームを効率化することで、走るための必要な労力・エネルギーは確実に減りますし、筋肉の負荷も変わりますので、自分にとって最適なフォームを洗練させていく作業は、日常的に実施すべき練習の一つです。
・WS(ウインドスプリント)
・レペティション
・坂ダッシュ
・ドリル(神経回路系、動きづくり、動きの協調性)
ドリルは以下の動画は、比較的代表的な動き作りのドリルが入っている&数分で実施出来るので、オススメです。
ただ1つ1つの動きの意味やコツについては説明が無いので、そこを詳しく勉強すると継続のモチベーションにもなるのではないかなと思います。
初心者の場合、ランニングエコノミーを向上させるファクターなかで最も重要なのは、どんな練習をするかということよりも、今までに走ってきた年数(および走ってきた距離)だろう。
これは分かりやすい表現ですので、書籍の文言をそのまま利用します^^;
速くなる人の特徴として3つのパクるべき事を上げた記事でも紹介しましたが、私たち中高年市民ランナーが自分の走力を、持っている能力の最大限まで伸ばしたい!と思った場合、最も大事なのが
怪我なく、燃え尽きず、ある程度テキトーに長期間走ることを継続すること
でした。
マラソンが速くなるためのLT(閾値)上昇や、ランニングエコノミーの向上は一朝一夕では身に付かず、何年もの長期間に渡って適切な練習を継続する事で(驚くほど!)最大化します。
市民ランナーあるあるで、2~3年の走歴のランナーが
「もう天井だ。自分の能力的には、ここまでだと思う」
なんて感じたり、SNSで発言したりしますが、希望を失う必要は全くありません。
確かに最初の2~3年ほど急激に走力アップするのは難しいかもしれませんが、LTやランニングエコノミーなどの能力アップを適切に実施し続ける事で、長きに渡って能力は漸増し続けます。
マラソンランナーがランニングエコノミーを向上させようとする場合、いちばん効果が期待できる方法は、ケガをせずに時間をかけて距離を踏む、レジスタンストレーニング(※)を行う、ヒルトレーニングを行う、短い(80~120m)ランニングを速くリラックスして繰り返す、の4つである。
(※)レジスタンストレーニングにはウエイトトレーニングやプライオメトリックトレーニング(ジャンプ系トレーニング)があり、いずれも長距離ランナーのランニングエコノミーを向上させる事が分かっていますが、ここでは長くなりますので詳しい説明は省略します。なお坂ダッシュもレジスタンストレーニングの一種であり、かつランニングの動作に特異性のある効果的な練習です。
ただジョグやLSDをするだけでランニングエコノミーは上昇していきますが、速筋のミトコンドリアや速筋の性能向上などを考えると、日々WS(ウインドスプリント)や坂ダッシュ(ヒルトレーニング)も合わせて実施する方が、より効果的です。
こういう事を少しだけ勉強して、日々の練習にWSやヒルトレーニングをちょっとだけ加えてあげるだけで、長い期間で見ると大きな差になります。
是非ランニングエコノミーの効果的な向上を目指し、コツコツと積み上げていってくださいね(^^)