マラソンに活かすための筋トレ・体幹トレ

筋力強化トレーニングを1習慣のトレーニングプログラムに組み込むということは、基本的にはよいことである。初心者ランナーにとって、筋力強化はランニングそのものと同じぐらい重要であるといえるし、経験を積んだ選手にとっては高い目標に手が届くかどうかの決め手となるかもしれない。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

マラソンランナーにとって筋肉トレーニング・体幹トレーニングは

「全くやっていない。走っていれば必要な筋力は付く」

という人と

「ランニングの補助となるような筋トレ・体幹トレは大事だ」

と感じている人、いずれもいらっしゃると思います。

ちなみに私は前者、筋トレはやらなくても大丈夫では?という考えでした。

だから成長が遅かったのかもしれません^^;

私の身近にいる福岡国際に出場するような方(2時間35分を切るランナー)は、筋トレはしないと言いますし、皆さんのお知り合いの中で、もっとレベルの高いランナーの方でも筋トレをしないという方はいらっしゃるかもしれません。

逆に大迫選手のインスタには、ちょいちょい筋トレの動画がアップされてるので、しっかり筋トレもランニングと平行してやってるようです。

オレゴンプロジェクトでは体幹トレーニングや高重量・低回数の筋トレが行われているようです。

ダニエルズのランニングフォーミュラでは、数種類の筋トレの種目を順次行う「サーキット形式」を取る事が推奨されています。

マラソンのための筋トレや体幹トレについて、初心者編としてご紹介していきます。

なぜマラソンで筋トレや体幹トレが推奨されるのか

もちろんランニングそのものがもっとも重要なトレーニングであることに変わりはないが、故障に対する耐性が高まるのであれば、補助的トレーニングに時間を費やす価値はある。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

筋トレや体幹トレでマラソンに良い影響を与えるものとして考えられている点は、基本的には3つ。

筋トレ・体幹トレの効果1.故障予防効果

2.質の高いトレーニングの頻度を増やす事が可能になる

3.ランニングの経済性向上

上記は全て”マラソンのタイム短縮”や”怪我のない楽しいランニングライフ”につながっていきます。

なので、地味ではありますが、筋トレや体幹トレは大事なんですね。

1.故障予防効果

当たり前のことですが、走っているとき、人は片足で着地します。このとき、この片足にかかる衝撃は、実に体重の3倍にも達するのです…1キロ走るだけでも何百回となく衝撃は繰り返されます。

マラソンは毎日走っても完走できない 小出義雄

ジョギングを始めた当初は、誰でも膝や股関節・足首などが痛くなって数日~ランニングを中止した経験があるのではないでしょうか。

走るときに受ける着地衝撃は大きく、それが日々のジョグでさえ何百回・何千回、フルマラソンになると4万回~6万回は着地衝撃を受け止めても問題のない身体を作らないといけません。

故障せずに脚を強くするために”脚づくり”と称して、多くのランナーがゆっくりペースで長い距離を走ったりします。

しかし、初心者の方が急に長い距離を走るのは、それだけで怪我の元。

少しずつ月間走行距離を増やして脚を強くしていく事が必須ですが、無理せず距離を伸ばす計画を立てて実施しようとすると、結構日にちが必要です。

身近なライバルや仲間、あるいはブログなどをやっている走力が近い市民ランナーの方が 「今月は300km走りました!」 とか...

そこを筋トレ・体幹トレで補い、効率的に早く怪我のない身体を作っていこう、という事なんですね。

まずは怪我をしない身体・ランナーとしての土台を作る!という事は、考えている以上にランナーとしてのアドバンテージは大きいです。

マラソン練習で一番多くの時間と距離を費やすであろう「ジョグ(ジョギング)」。 「疲労抜きジョグ」「回復ジョグ」「強化(...

2.質の高いトレーニングの頻度を増やす事が可能になる

筋力トレーニングの一番の効果は、主だったランニング障害に対する耐性ができることにある。つまり、筋力トレーニングによって走力が向上するというよりは、ケガに対する耐性ができるために、故障せずに走る量を増やしたり、スピードを出したりできるということだろう。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

ジョグや筋トレ・体幹トレでガチガチの土台を作ると、どうなるか。

ジョギングだけの練習からポイント練習(マラソンが速くなるための練習)を計画に入れた練習に移行した時、

「あっちが痛い、こっちが痛い」

というような事が少なく、練習を継続出来ます。

「すでにポイント練習をしているけど、すぐにあちこち痛くなる」

というランナーの方であれば(私がそうしたように)ポイント練習を全て土の上で実施するのも検討の余地に入りますが、2~3ヶ月ポイント練習は控えて土台作りから始めてみるのも良いでしょう。

ポイント練習を実施出来る下地が出来上がってから走ってみると、脚に痛みを生じる頻度が激減するはずです。

少なくとも私はそうでした。

ランナーによっては土台を作る前に、走る時の上下動が激しい・ピッチが少ない・ストライドが大きい、などの事から脚に受ける衝撃が大きくなって痛みが生じる事もありますので、そのような場合は走り方を修正する必要もあります。

ピッチが160前後でストライド走法的な走りを一般市民ランナーがしていると、怪我をしやすいと言われます。

【解説動画】ストライド走法とピッチ走法、結局どっちが良いんだ!? 結論はコレだ! ブログの内容は、以下の動画でも解説しています! ...

3.ランニングの経済性向上

よく街中で走ってるランナーを見かけると

「おぉ、あのランナーは只者じゃない。すごく速そうだ」

とか

「まだ走りはじめなのかな」

などと感じる事がありませんか。

それぞれのランナーでフォームは異なりますが、走れるランナーはブレや上下動が無く綺麗。

綺麗な走り方を支えているのは、体幹や筋肉。

体幹や筋力が強化されると身体がブレなくなり、バランスが改善されてランニングの経済性が向上、少ないエネルギーでより速く走れるようになる、という事になります。

また、初心者の場合は走る事によって自然と筋力や体幹もある程度しっかりしていきますが、補強運動としての体幹や筋トレで筋力UPが早まるのに伴って、走力の成長度合いも早くなる事が考えられます。


筋トレ・体幹トレのメニュー

パフォーマンスの向上が証明されている補助トレーニングの1つに、レジスタンストレーニングがある。どんなランナーも、このレジスタンストレーニングトレーニングを、ぜひ毎週のプログラムに組み込んでほしい。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

※「レジスタンストレーニング」とは、筋肉に一定の負荷をかけて筋力を鍛えるトレーニングの事であり、いわゆる筋トレです。

では、マラソンに効果的な筋トレ・体幹トレは、どのようなメニューをやれば良いのでしょうか。

ダニエルズのランニング・フォーミュラでは(旧版と新版で内容が異なりますが)、新版で以下のようなサーキットトレーニングが掲載されています。

サーキットトレーニングとは、筋力および持久力の養成を目的とした練習法。
ウェイト・トレーニングに似るが,比較的小さい負荷の運動を何種類か組み合わせ,休息をとることなく繰り返し練習する。
全身のすべての筋肉や機能が運動に参加できるようなサーキット(循環)をつくるのが要点。 出典:コトバンク
No.内容回数など
1腕立て伏せ1分間・最大回数の半分
2サイドレッグリフト片脚10回ずつ
3もも上げ片脚30回ずつ
4クランチ1分間・最大回数の半分
5リカバリーラン1分間走か400m走
6ストレッチ2分間
7スクワットスラスト10回
8レッグリフト片脚10回ずつ
9アーム・レッグフラッピング20回
10リカバリーラン2分間走か800m走

出典:ダニエルズのランニング・フォーミュラ

サーキットトレーニングをやる際は、例えば最初に腕立て伏せ”1分間・最大回数の半分”とありますが、事前に1分間で何回腕立て伏せが出来るか試してみて、サーキットトレーニング内では何回くらい実施するか決めておく必要があります。

それぞれのトレーニングについての詳細や注意事項はダニエルズのランニング・フォーミュラを手元に置いて実施してほしいと思いますので、ここでは簡単に。

ダニエルズのランニングフォーミュラで紹介されている、サーキットトレーニング

1.腕立て伏せ

腕立て伏せはポピュラーな筋トレなので問題ないと思います。

事前に最大回数を調べておき、限界回数の半分程度の回数を実施します。

「上半身がムキムキになったらマラソン遅くなるでしょ!」

という心配は無用です。この程度の自重腕立てでムキムキにはなりません^^;

マラソンに必要な上半身の強さ・安定感を手に入れる程度です。

筋トレとして誰でも知ってるような”腕立て伏せ”ではありますが、正しいやり方でやってる人は意外と少ないです。

ポイントは

・腕は肩からまっすぐ2秒かけて下ろす。1秒で上げる。

・胸が床に付く位まで、しっかり下げる。鼻や顎が付く程度では浅い。

2.サイドレッグリフト

床に横たわって、上になった脚を上下に動かす筋トレです。

片脚10回ずつやります。

3.もも上げ

もも上げもポピュラーですが、連続でやると意外にキツいです。

片脚30回ずつの実施です。

膝は腰の辺りまでしっかり上げるのがポイントです。

4.クランチ

クランチとは腹筋です。仰向けに寝て膝を曲げ、手は頭の後ろへ。

書籍では頭と肩を上げていって、上半身が真っ直ぐになる位置まで上げるような”シットアップ”の説明になってますが、身体に無駄な力が入りやすく腰痛の原因になったりもします。

クランチは身体を丸める程度で充分です。

5.リカバリーラン

リカバリーランを1分間ないしは400m実施します。ペースはゆっくりジョグ。

6.ストレッチ

ストレッチを2分間。どんなものでも良いと書籍に記載があります。

ここでのストレッチは”静的ストレッチ”で良いと思います。

ここまでに使った上半身・下半身の身体の部位で疲労感のある部分をほぐすイメージで実施すると良いでしょう。

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7.スクワットスラスト

スクワットスラストを10回。

スタートポジションは直立姿勢。次に両手を地面に付けて両足を腕立て伏せの状態になるように後方へ持っていきます。すぐに両足を戻して、再び直立状態になって1回。

8.レッグリフト

レッグリフト20回。

書籍では片脚ずつのレッグリフトが記載されていますが少し難しいですので、両脚のレッグリフトで代替するのが良いと思います。

9.アーム・レッグ・フラッピング

アーム・レッグ・フラッピングを20回。

うつ伏せに寝て、両腕と両脚を交互に上下に動かしていきます。

10.リカバリーラン

最後にリカバリーランとして、2分間走か800mをゆっくりジョグで走ります。

以上がダニエルズのランニングフォーミュラに記載されている、サーキットトレーニングでした。



まとめ

なぜ筋トレ・体幹トレが大事なのか、そして何をやれば良いのかについてご紹介しました。

ただ、今回ご紹介したトレーニングは初心者~中級者用と言っても良いと思います。

世の中には様々な筋トレや体幹トレがあり、自分の弱い部分を理解した上で、弱点を強化するために必要な運動を選んで独自のサーキットを組むのも大事ですし、走る時に必要な1歩1歩の力を大きくするためのトレーニングも存在します。

次回は、実際に私が日々行っているサーキットトレーニングや、走る時にストライドを伸ばすためのトレーニングについてご紹介します。

げん