ガチユル走って知ってますか?
NHKのランニング情報番組「RUN×SMILE」、ランスマで紹介されているので知ってる方も多いかもしれません。
ランニングをしている方にとってはお馴染みの方も多い、筑波大学の鍋倉教授が提唱している練習方法です。
先日「効果的な30km走のやり方。フルマラソンの終盤に強くなるために。」という記事を書きましたが、
「そもそも日常で30km走なんて無理!」
「長い距離を走らないでスタミナを付ける方法はないのか」
というランナーにとっては、うってつけ(笑)
このガチゆる走ですが、初心者にとっても良い練習なのですが、上級者にとっても少し応用をする事で、スピード練習にも関わらずフルマラソンの終盤の粘りを付けるにも効果的な、一石二鳥の非常に良いポイント練習になります。
ガチユル走の効果とやり方について考えていきます。
目次
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
ガチ・ユル走とは、アップジョグをした後、練習の一番最初に全力走(ガチ)を実施してまず糖(グリコーゲン)を使います。
その後にジョギング(ユル)を続けて実施する事で、比較的短時間の練習でレース後半の糖(グリコーゲン)が少なくなった状態を再現しつつ、脂肪をエネルギーとして使えるようになる効果があります。
【練習例】
2kmアップジョグ、1km全力走-3分休憩-1km全力走、ジョギング10km・ラスト1kmだけペースアップ、2kmダウンジョグ
上記のようなメニューが一般的です。
フルマラソンを走るのに大事でありながら、すぐに無くなってしまいがちな「糖」を節約し、体内に大量に存在するエネルギー源である「脂肪」を積極的に使える身体にする事で、持久力アップを図るという訳です。
以前、当ブログでも脂肪を使える身体になるためのトレーニングについて記載しました。
上記の記事の中で、以下の4つの練習方法について明記しています。
1.長い距離をゆっくり走るトレーニングで脂肪を優先して使う身体にしていく
2.空腹(筋肉中のグリコーゲン量が少ない状態)でのトレーニングで、脂肪をエネルギーとして利用する身体にしていく(週末早朝ロングジョグなど)
3.ポイント練習(ペースラン・ビルドアップ走など)を始める前に「2000m全力」など、糖をある程度使ってしまってから本当のポイント練習に入る
4.週末セット練など、2日間連続して強めの負荷をかける。1日目でグリコーゲンを減らし、十分にグリコーゲンが回復していない状態で2日目も頑張る
黄色いアンダーラインを引きましたが、3番に記載している「最初に全力走をして糖を使う」という考え方が、ガチ・ユル走と同じ効果を狙ったものになります。
脂肪が使えるようになる事による持久力アップに加えて、全力走というスピード練習が入るので、初心者が取り組むとVDOTの向上・つまりマラソンで巡航出来るペースの向上が期待出来ます。
「ガチ(全力走)」をどの程度のスピードで実施したら良いのか、「ユル(ジョギング)」は何キロ位走ったら効果的か、サブ4やサブ3.5・サブ3を狙うランナー向けであれば、どのようなメニューにすべきか、色々と疑問も出てきます。
どのようにやっていったら良いのでしょうか。
ガチ(全力走)の目安は各ランナーの走力によって異なりますが、VDOTを目安に考えると、おおよそ1500m~2000mのレースペース近辺で鍋倉教授はオススメしているようです。
例えばサブ4レベルであるVDOT38であれば、1500mは6分54秒が目安なので4’36/km。
サブ3.5レベルであればVDOT45、1500mは5分56秒が目安なので3’57/km。
サブ3レベルであればVDOT54、1500mは5分02秒が目安なので3’21/km。
そんな感じのペースがガチ(全力走)の目安です。「ガチ」というだけあって、相当キツいペースですね^^;
ユル(ジョギング)の目安もランナーの走力によって異なりますが、概ねEペース前後のスピードで良いとしています。
例えばサブ4レベルであるVDOT38であれば、Eペースは6’35/km。
サブ3.5レベルであればVDOT45、Eペースは5’46/km。
サブ3レベルであればVDOT54、Eペースは4’59/km。
その辺りを目安にしてユル(ジョギング)をすればOKです。
ユルで走る距離は何キロ走っても大丈夫、と鍋倉教授はおっしゃっています。
ランスマの放送内では高樹リサさん(りさっち)がガチ・ユル走を計20km実施し、その負荷は30kmにも相当すると紹介されていました。
本番のレース(鳥取マラソン2017)では、りさっちが苦手としていた終盤もペースダウンする事なく走り切る事ができ、ネガティブスプリットでPB更新。
「持久力ついたー!!」
と喜んでました(*^^*)
前半ハーフ:2時間23分41秒
後半ハーフ:2時間19分13秒
ゴールタイム:4時間42分54秒
りさっちは、その後もガチユル走サブ4バージョンまで経験して走力を上げていますね。
サブ4に挑戦した、2018年田沢湖マラソンは厳しい暑さとアップダウンで5時間オーバーと残念な結果でしたが…高樹さんの公式ブログにも記載してくれている通り、またサブ4に挑戦してくれるでしょう。
【サブ4】(VDOT38相当)
ガチ(全力走)1000m4’36/km×2本(セット間休憩3分)、ユル(ジョギング)6’35/kmか、ビルドアップ10km
(初心者はガチを1分間×5本や、500m×3本、400m×4本などでも可)
【サブ3.5】(VDOT45相当)
ガチ(全力走)1000m3’57/km×2本(セット間休憩3分)、ユル(ジョギング)5’46/kmか、ビルドアップ10km
【サブ3】(VDOT54相当)
ガチ(全力走)1000m3’21/km×2本(セット間休憩3分)、ユル(ジョギング)4’59/kmか、ビルドアップ10km
(上級者のガチは2000m3’30/km×1本、ユルは変化走やキツめのビルドアップなど柔軟に変更可)
ガチ・ユル走はポイント練習になるので、基本的には週に1~2回実施する程度にしておかないと、怪我や疲労のリスクが高まります。
私は閾値走やインターバル、TペースやIペースをある程度の時間継続して走る練習をメインにやってきましたが、
「閾値走やインターバルが辛い」
という方であれば、慣れるまでガチ・ユル走で走力アップを図るのも全然悪くないと感じます。
その上で、慣れたら通常の閾値走やインターバル、ないしは以下でご紹介する”アレンジメニュー”で鍛えていくのも良い練習だと思います(*^^*)
ミトコンドリアの機能改善と量的発達には、長時間走、早朝トレーニング、高強度トレーニング、ガチユル走など、体内の糖レベルを低下させるようなトレーニングなら、何をやってもよいことになります。
ガチ・ユル走の基本的な実施方法は前述の通り
アップジョグ+1000mガチ(全力走)2本(休憩3分)+ユル(ジョギング)7km~10km
というようなメニューになりますが、上級者のポイント練習としては物足りないですよね。
そこで、鍋倉教授の著作に記載してある上記の言葉。
「体内の糖レベルを低下させるようなトレーニングなら、何をやってもよいことになります。」
ここです。
私は日常のポイント練習は「閾値走」+「Eペース走」程度の内容ですが、PBを狙うフルマラソンのレースが近づくと、質を上げます。
その時によく取り組んでいるのが、1000mや2000mを頑張って走った後に「本練習」をするというもの。
そのバリエーションは無数になりますが、例えば
2000m1本+休憩3分+変化走10km
設定ペース例【4’50-4’20-4’40-4’10-4’30-4’00-4’20-3’50-4’10-3’40】
1000m2本(1000m間の休憩3分)+ビルドアップ12km
設定ペース例【5’00/kmスタート、2km毎に10秒/km上げる、など】
このような練習をする事で、通常の変化走やビルドアップより恐ろしくキツくなります(笑)
私は変化走やビルドアップでの30km走をやった事がありますが、最初にガチ1000m×2本や2000m1本をやった後に30kmペース走のスタートをするガチ・ユル走は格別w
最初から
「うわー、ヤベー。キツー」
ってなりますし、20km~25kmも走れば30km以降のような辛さになってきます^^;
2019年4月号の「ランナーズ
35kmまで一定ペースで走って、残り5kmを無理やりペースアップ、わずかに残っているグリコーゲンを絞り出して枯渇させるという練習。
鍋倉教授は「非常に効果がある」としていました。
フルマラソンのタイムアップ、走力向上を目指して目標達成に至るプロセスは様々な練習方法が考えられますが、それぞれの練習を一番効率的・効果的に実施していきたいもの。
そのためには
「なぜレースで糖(グリコーゲン)を節約するのか」
「グリコーゲンの貯蔵量を増やす方法はあるか」
「脂肪を使えるようになると何が良いのか」
「ミトコンドリアが多いと、どうして速く走れる?増やす方法は?」
そんな事も知っておくと、日々の練習をどのようしたら良いのかを考えるようになります。
そうすると練習メニューを少しずつ変えながら効果的・効率的に練習するようになりますので、何も考えないで練習するのに比べて驚くような走力差になるのは間違いありません。
以下の記事でも簡単にまとめていますので、知識を蓄えながら自分に合った練習に変えていきましょう♪