ウォーミングアップ(ウォームアップ)とは、比較的負荷の高い運動をする前に実施する、いわゆる”準備運動”です。
日常的なジョグをする時は、走り始めをゆっくりスタートしてウォーミングアップ代わりにする方も多いでしょう。
さてこのアップ。
ポイント練習の前に入念に実施される方もいらっしゃると思いますが、どのように実施するのが良いのでしょう。
ただジョグするだけで良いのか。強度はどれくらいでやれば?
しっかり汗をかくまでやるほうが良いのか、それとも汗はかかなくとも時間で区切れば良いのか。
WS(ウインドスプリント)なんかも入れた方がより良いのかな。
ドリル的なものまでやる必要がある?
それぞれのランナーがアップとして実施する内容に大きな差があったりするので、どうするのが適切なのかという疑問をお持ちの方、いらっしゃるのではないでしょうか。
今回はフルマラソンのレース前に実施するアップではなく、日常のマラソン練習(ポイント練習)前に必要なウォーミングアップについて、考えていきます。
目次
記事の内容は、以下の動画でも解説しています!
あらかじめ体温を上げ、筋肉を暖めて筋肉が効率よく働くようにしておくことである。冷えている筋肉は硬く効率よく動かないものだが、暖かい筋肉は軟らかく粘性が弱いので、より速く収縮できる。
ウォーミングアップで体温を上昇させる事によって、パフォーマンスの向上が図れる事が分かっています。
体温を上昇させる事は、同時に筋肉や腱の柔軟性を高めたり、血流を末端にまで行き渡らせるという意味があります。
ウォーミングアップをしないで急に速いスピードで走り始めると、非常に息が切れて苦しくなったりします。
これは酸素がうまく体内に運べずに、酸欠のような状態になるからです。
ポイント練習の前に体温を上昇させて身体を暖めておけば、走り出しから良いパフォーマンスで効果の高いスピード練習が実施出来ますよ♪
W-upにおける、体温や筋温の上昇に伴う筋機能の変化は障害予防上意味のある生理学的変化であること、運動に対する冠血流量の適応を早めて心筋虚血を抑制すること、心筋の収縮特性を高め激しい運動の際の危険防止に貢献するとの指摘もあることから、W-upの着実な実行は必要不可欠であると考える。
前述の体温を上げる、筋肉や腱の柔軟性を高める事によって、怪我の予防も期待出来ます。
身体が冷えたまま、筋肉や腱に柔軟性を持たせないまま高強度の運動をする危険性は、何となくでも感じるところだと思います。
加えて、後述しますが、動的ストレッチの実施によっても怪我の予防やパフォーマンスのアップが期待出来ます(^^)
ウォームアップは覚醒レベルを上昇させるが、これはある程度までは望ましく、至適な心構え状態を作り出してパフォーマンスを向上させる。
ウォーミングアップをする事によって、強度の高い運動をする時に経験するストレスを低く抑えてくれる”精神的な効果”もあります。
実際に研究結果も出ていて
ウォームアップをしなかった消防士10人中6人が、激しい運動時に虚血性(心筋への血流低下)心電図異常を経験した。それに対して、激しい運動の前に漸増的なウォームアップを行った消防士は全員が正常な心電図を示した。
気持ちが入ってないと良いポイント練習にならない事もありますし、心ここにあらずでは怪我のリスクさえ上昇します。
どのスポーツを実施するかによってウォーミングアップの内容・構成が異なってきますが、一般的には以下の2種類のウォーミングアップを実施します。
一般的なW-upでは、ジョギングなどで身体を温め、その後にストレッチや徒手体操を実施するが、一度高められた体温や筋温はしばらく持続されるものの、呼吸循環系に対する効果は5~10分の休息で消失することも指摘されているので、W-upの時間や試合に挑むまでの時間の過ごし方に配慮する必要がある。
まず一般的なウォーミングアップとしては、どんなスポーツでもジョギングなどをするという事になります。
ランナーは、もちろんジョグですね。
上記の書籍内で指摘されているように、アップをした後は身体が冷えてしまったり、5~10分で呼吸順関係に対する効果が消失する可能性があるので、アップをして少し休息したら本練習をすぐに開始するのが良いです。
なお、本番のレース前にアップを入念にしても、市民ランナーの私たちの場合は何十分もスタート地点で待機する事が普通です。
したがって、特にフルマラソンのレースの場合、アップをしても筋グリコーゲンの減少や筋疲労などのマイナス面だけが残って、アップのプラスの側面が大きく削がれてしまう可能性が高いです。
「アップしても、どうせすぐに戻る」
そう覚えておいて、なるべくレース前は体力と脚を温存しておきましょう。
専門的W-upは主運動と同じ運動を用いた特異的な運動や動作を含んでおり、トレーニングや競技において、身体が正しく効果的に機能できるようにすることを目的としている。
専門的ウォーミングアップではスポーツの種類によって、そのスポーツに適した(特異的な)動作を含んだアップをします。
投手なら投げる動作をする、跳躍選手なら飛ぶためのルーティーン部分を実施したりしますが、私たちはランナー。
本練習がスピード練習なのであれば、少しスピードを高めて走るWS(ウインドスプリント)が適切です。
速く走るための技術的な要素、そして一定程度の強度を身体に与える事で、走り始めから質の高いパフォーマンスを発揮する事が出来ます(^^)
ウォームアップによって筋グリコーゲンが枯渇したり体温が過度に上昇したりすると、パフォーマンスは低下する可能性がある。
ウォーミングアップでの注意点は
やりすぎないこと
です。
「そんな、グリコーゲンが枯渇するまでアップしないわ笑」
と思うかもしれませんし、実際に練習前にそこまで準備運動をする人はいないかもしれません。
しかし真夏の暑い時期に、寒くて身体が温まりにくい冬と同じメニューのアップを真面目にやろうとすると、体温上昇が過度になり過ぎる可能性があります。
また、レースの前にアップをやり過ぎてパフォーマンスが低下する事もあります。
1957年にフィンランドのサルソラ選手という人は、いつも45分~50分かけてアップしていました。
しかし、とあるレース前のこと。
エントリーしていた1500mのレースのスタートの時間が迫っている事に気付かず、彼はホテルのベッドでゆっくりしていました。
そこへ関係者が大慌てで「レースがスタートする!」と飛び込んできた。
数分後にはスタート時間。
サルソラ選手は大慌てで競技場に駆けつけ、いつものアップは出来ないので2~3回だけWS(ウインドスプリント)を実施してスタート。
なんと1500mの世界記録を樹立して優勝(笑)
「いつも通りのアップをしていたら、どれほど凄い記録が出たことか!」
と彼は言っていたそうですが、それからは従来通りの長いアップを再びするようになり、二度とその時の記録を更新する事は無かった…
そんな話がリディアードのランニング・バイブルに掲載されています。
ブログで紹介するため、内容を少し簡略化して記載しました。
アップはほどほどに^^;
最近の研究では、競技前に静的ストレッチ(特に45秒以上)を実施すると最大筋力や瞬発性パフォーマンスが低下するため、避けたほうがよいとされている。
ストレッチには
・動的ストレッチ
・静的ストレッチ
という2種類があるのですが、静的ストレッチはウォーミングアップに適していないというのが研究で分かっています。
ウォーミングアップの前に実施するなら、動的ストレッチです。
静的ストレッチはランニング後には非常に有効なのですが、ポイント練習前のウォームアップで実施するのは避けた方が良いです。
静的ストレッチをやるなら、走ったあとで。
「タカヤマラソン」という、ストレッチをよく紹介してくれるチャンネルは参考になりますよ~♪
色々と記載しましたが、私たち市民ランナーがポイント練習前に実施するアップとしてまとめると
・ジョグ2km~3km(朝など身体が充分目覚めていない時などは少し多めのジョグで、夏など気温が高い場合などは1km~2kmで充分)
・動的ストレッチを取り入れる選択をする方は実施
・WS(ウインドスプリント)2~3本
・上記実施後は、5分以内に本練習スタート
このようなウォーミングアップをする事で、パフォーマンスアップ・怪我防止・集中力が高まって、良いポイント練習が出来ますよ♪
アップをした後のポイント練習の種類や目的などについて、まとめた記事はこちらです(^^)