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ショートインターバルとは、通常の1000m~2000mのインターバルよりも短い距離(200m~400m、まれに100mや500m~600mの距離)の疾走を速いスピードで繰り返し実施するトレーニングです。
インターバルと言えば、1000mなどの少し長めの距離をインターバルペースで疾走する
インターバル走(Iペース走)
というのがあります。
また、400mの距離をインターバルペースよりも速いスピードで繰り返し疾走する練習に
レペティション(Rペース走)
があります。
この2つの練習(インターバルとレペティション)の目的とトレーニング方法の違い、そして2つのトレーニングに似ているようにも思える”ショートインターバル”の練習目的とトレーニング方法の違いは何でしょう。
その辺りを明確に理解して練習に取り組んだ方が、練習で自分が必要としている、狙った能力を伸ばすことができて、全体的な走力アップにつながります。
まずは、おさらいとしてインターバルとレペティションの違いを明確にしつつ、ショートインターバルの練習目的とトレーニング方法について解説していきます。
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
「1000mインターバルがキツいので、400mじゃダメですか?」
そのようなご質問は、繰り返し何度も頂きます^^;
400mインターバルをレスト長めで実施すると、インターバルで狙う目的とは少し異なってきてしまいます。
インターバルとレペティションの違いとは何だろうか。唯一、一致する点は、両者とも「断続的」である、すなわち交互に2つのこと(運動刺激と休息、つまり疾走区間と休息部分)が起きることを意味している、という点である。~中略~ レペティションはVo2maxの向上を最大の目的とはしていない。それよりはむしろ、スピードとランニングの経済性(レースペースで走る際の動きを改善し、消費エネルギーを減らすこと)を向上させることが目的である。
安静時から走り始めると2分後からVo2maxへの刺激が始まるため、その目的を果たすために1000m以上の距離を走って3~5分の疾走時間を持つのが、通常のインターバル走。
休息時間は疾走時間と同じくらいの時間をジョグ、あるいは疾走時間よりも少し短い位しか取らないようにするのが、練習効果を上げるために大事。
レペティションは400m程の距離をインターバルペースより速い”Rペース”で疾走して、ランニングエコノミーを改善させたり、速筋を養成(無酸素性作業能の向上)をする目的になります。
休息時間は息が整うまで。目安はRペース走で走った時間の2~3倍。
休息時間はジョグでも良いですが、ウォークや止まってストレッチなどでも全然OK。
練習効果を上げるためには、しっかり休んで”苦しくてフォームが崩れる”という状態になるのを防ぐ必要があります。
毎回「次の1本が最高の走りになる」という感覚を得られる自信が出るまで休息するのが重要。
ではレぺと同じ距離の400mを”ショートインターバル”として実施する時の練習目的の違いや、そのトレーニング方法はどうしたら良いのでしょうか。
ショートインターバルで狙う最大の目的としての結論は、ズバリこれです。
Vo2Max(最大酸素摂取量)の向上
「え。距離が短くても、普通のインターバルと同じ効果を狙えるんだー。じゃあ1000mより400mの方が楽そうで良いかも♪」
と思われるかもしれません。
でも美味しい話には裏がある(笑)
通常のIトレーニングでは3~5分間走を繰り返すのがよい。~中略~ しかし、これよりかなり短いランニングでも、Vo2maxでの運動時間をある程度積み重ねることはできる。ただし、リカバリーはいつもごく短い時間にしなければならない。
「リカバリーはいつもごく短い時間にしなければならない」
げーー(笑)考えただけで気持ち悪くなりますか^^;
これで一気にキツくなりそうですよね。
そうです。
ショートインターバルはレストを非常に短くしないと、Vo2maxに刺激が入りづらい練習なんです。
本来は安静時からIペースで走り始めて2分後からVo2maxに刺激が入るので、400mを1分20秒(3’20/km)~1分30秒(3’45/km)で走るとしても、2分には届かない。
なのでリカバリー(お休みジョグ)をごく短い時間に設定して息が整わないうちに2本目・3本目と次々に実施して、ようやく数本目からVo2maxに刺激が入り始めて練習効果を得られ始めるという事になります。
前述のショートインターバルを実施する練習目的を理解した上で、ショートインターバルをどうやって実施したら良いのか。
ダニエルズのランニング・フォーミュラ旧版では
400mの練習では、2分ごとにスタートする方法がよい。こうすると400mに80秒かかる場合、残りの40秒を休息に充てることができる(しかし400mに90秒以上かかるランナーは休息の時間が短くなり400mの疾走を適正ペースで走ることが難しくなるので、特に効果的な方法であるとはいいがたい)。
このような説明があります。
練習例としては
アップジョグ3km
(400mインターバル+レスト【計2分】)×10本
ダウンジョグ3km
このようなトレーニング方法が考えられます。
Iトレーニングの疾走区間は、その長さにかかわらず、毎回のペースを適正に保たなければならない。400mインターバルではマイルインターバルより速く走るべきではないと聞いて驚くランナーは多い。しかし、この練習の目的はVo2maxの向上であり、練習マニアになることではないことを、肝に銘じるべきである。
400mインターバルのペースを、1000m以上のインターバルペースより速く実施するランナーは本当に多いですよね。
そんなランナーに、ダニエルズさんからの衝撃的な言葉。
「練習マニアになるな」(笑)
申し訳ございません。ワタクシ、練習マニアでした^^;
つい400mだと力が入って、ビューッ!と出来るだけ速く走っちゃうんですよね(笑)
でもダメなんですって。
何故か。
ショートインターバルの練習目的は、大好きな速いスピードで走ってでスッキリする事でもなく、SNSで400mなのに1km走った場合のスピード(3’00/kmとか)を併記して「○○さん!メチャ速いっスネ!」とか言われるためでもないからです(笑)
ただただ
Vo2maxの向上
を最大限得られる範囲内で、最も低い強度で走るべきだ、という事だからです。
まさに”職人”のような練習。
「そこに遊びはねぇ。徹底的にペースを守れ」
と言われているかのような感じ^^;
そもそもVo2max強度(インターバルペース)で走った時と、それより速く走った時で、Vo2maxに達している時間は変わらないんです。
以下の表は3’26/kmがインターバルペースのランナーが、適切なペース(3’26/km)で5分走った時と、Iペースより遅く5分走った時、速く5分走った時のVo2maxへの刺激がどうなるかの図です。
遅いペースだとVo2maxには届かず、3’26/kmと3’20/kmは2分でVo2maxへの刺激が始まる事を表しています。
つまり、Vo2maxペース(インターバルペース)より速く走っても、練習の目的を上回る効果は得られないというシステム。
練習する際に求められるのは、その目的を明確にすることだけではない。最大限の効果を、最大の刺激ではなく最小の刺激で引き出そうとする賢い取り組みも必要だ。
Vo2maxの向上を目的とする練習で、最も大事なのは
Vo2maxへの刺激時間
ですよね。
仕事や家庭などで忙しい私たち一般市民ランナーにとっては、マラソン練習にかけられる時間も長くは取れません。
ショートインターバルと通常の1000mインターバル、どちらが効率的にVo2maxへの刺激時間を取れるのでしょうか。
それぞれの練習の一般的なトレーニング方法で、比較してみましょう
【例1】
インターバルペースでの疾走時間を5分間、休息は疾走時間と同等の5分間に設定して5本実施
Vo2maxへの刺激は安静時から走り始めて2分後からなので、単純計算で
1本3分×5本=刺激時間は15分
練習時間は疾走5分+休息5分で1本10分、5本で50分。
実際には2本目からは2分経過せずにVo2maxに到達する(疲れている状態からスタートするため)ので、17分~18分ほどの刺激時間が期待出来ます。
【例2】
これを疾走時間4分、レスト2分で5本やった場合
1本2分×5本=刺激時間は10分
練習時間は疾走4分+休憩2分で1本6分、5本で30分
実際には2本目からレストが少なく刺激時間が多めに増えるので、13~14分の刺激時間が期待出来ます。
疾走時間を1分減らしても、レストを短くして実施した方が、練習効率は良さそうですね(^^)
ただしレストが短いと4本目や5本目に疲れてペースダウンしてVo2maxに刺激を入れられなくなってしまう事があります。
【例1】
ショートインターバルを400m90秒(3分45秒/km)で疾走、レストを30秒取って2分で1本実施した場合。
Vo2maxへの刺激時間は2分後からなので、1本目はゼロ。
2本目は10秒、3本目6本目まで45秒、7~10本目まで1分刺激時間が取れるとして(ダニエルズのランニングフォーミュラに記載されている表から刺激時間を推測しています)
10秒+(45秒×4)+(1分×4)=刺激時間は7分10秒
練習時間は2分×10本で20分
【例2】
これを15本にすると
11本目~15本目までの刺激時間を各1分15秒とすると6分15秒刺激時間がアップ。
練習時間は30分
同じ練習時間を確保して、ある程度トレーニング内容を調整して実施すれば、1000mインターバルでもショートインターバルでも、練習時間・刺激時間ともに概ね同じという結果に(笑)
いずれにしてもキツい練習になりそうで、書いてるだけで心拍が上がってくるようです^^;
【結論】以下の条件なら、期待出来る刺激時間は同等
・1000mインターバル:疾走時間4分、レスト2分で5本実施した場合
=刺激時間13分~14分(練習時間30分)
・400mショートインターバル:1本2分で15本実施した場合
=刺激時間13分~14分(練習時間30分)
なお、練習の総距離は
1000mインターバル5本:レストを400m2分(キロ5)で実施=6600m
400mショートインターバル15本:レストを100m(キロ5)で実施=7400m
になります。
それでもやはり、ダニエルズさんはインターバル1本あたりの理想的な持続時間は3~5分としています^^;
インターバルトレーニングの疾走区間の理想的な持続時間は、1本あたり3~5分間である。したがって、私は最大の練習効果を得るために、男子選手には1600mや1200m、女子選手には1200mや1000mのインターバルにほぼ限定して行わせている。
そしてインターバルトレーニングには、心理的な要素も高められるものでなければならないと。
インターバルトレーニングは、生理学的・バイオメカニクス的なトレーニング目標を達成するだけでなく、同時に心理的な要素も最大限に高められるものでなければならない。
なぜか。
結局、刺激時間にある程度の制限(2分後~)がある以上、1本毎の疾走時間を長く取った方が効率が良いからですよね。
実は最高に効率的な練習方法は、別にあるんです(え!早く言えよ、バカヤロウ笑)
【特別メニュー】
インターバルペースでの疾走時間を5分間、休息を2分30秒に短縮して4本実施。
Vo2maxへの刺激は安静時から走り始めて2分後からなので、単純計算で
1本3分×4本=刺激時間は12分
練習時間は疾走5分+休息2分半で1本7分半、4本で30分。
実際には2本目からは2分経過せずにVo2maxに到達する(レストが少なく、特に疲れている状態からスタートするため)ので、16分~17分ほどの刺激時間が期待出来ます。
=刺激時間16分~17分(練習時間30分)
インターバルペースがキロ4分のランナーなら
疾走距離5000m、レスト400mを2分半(6’15/km)で3回・1200m、
総距離6200m
1000mのインターバルをレスト90秒や120秒でやってるランナーであれば、少し疾走時間・距離を伸ばしてレスト多めに取り、効率的に出来るはずです。
5本やるとさらに良いかも!って思うかもしれませんが、4本で充分です^^;
どうしてもやりたい人は、5本実施して”血の味”を味わってください(笑)
★★★
ショートインターバルの練習目的やトレーニング方法、通常の1000mインターバルやレペティションとの違いについて、色々とお話してきました。
ある程度キツめの練習を継続的に実施していかないと右肩上がりでレベルアップしていかないのは、トレーニングの3原理・5原則の中にある”過負荷の原理”の通りで、やむを得ない事ではあります。
しかしながら、自分にとってキツ過ぎる、本当にやりたくない!というような練習を無理して実施しようとするのは、ランニングが嫌いになってしまいます。
特にインターバルのペースは本当に速くてキツい。
走る事が嫌いになる率ナンバーワンのトレーニング(笑)
私たち市民ランナーは仕事で走ってる訳ではなく、趣味でやっているので、本来は楽しく走るべきですよね。
なので、イヤならやらなくても全く問題ないんです( ´ ▽ ` )
この記事を見て
「あぁ、インターバルやらなきゃな…」
と気分を落ち込ませることなく(笑)「まぁ、気が向いたら挑戦するか」くらいの気持ちで、自分にとってやりやすい練習を、楽しんでやっていってくださいね。