いよいよサブスリーに挑戦する本番レースが近づいてきた時。
「どういうペースでいくか…」
と、レースプランや作戦に考えを巡らせているランナーもいる事でしょう。
サブ3に挑戦するぞ!というレベルであっても、フル数十回経験してきたベテランもいれば、フル2~3回目、あるいは初フルマラソンという方まで様々。
私が初フルから3年半・20レースのフルマラソンを経験して到達したサブ3に、初フルや数回目のフルであっさり到達する方々を見る度に「素質の違い」を感じます^^;
話がそれました。
サブ3に挑むランナーのタイプは本当に人それぞれ。
あるランナーは練習でサブ3レベルのスピードが全然出てなかったのに、初挑戦の本番で急に4’10/kmで最後まで走り切れちゃったり、またあるランナーは、練習では2時間50分前後を目指す程の素晴らしいペースで走っていたのに、レースでは終盤に大幅なペースダウンをしてサブ3を逃したり…本当に悲喜こもごもです。
本番でのサブ3達成・未達成、その要因は疲労抜きやテーパリング、本番当日の調子やモチベーションの高まりなど様々な事が考えられますが、レースプランも一因として上げられます。
今回は特に、初めてサブ3達成を目指すランナーを主に考えながら、取るべき作戦と心構えについて検討します。
目次
一般的なレースプランとしては、4種類ほど考えられます。
1.イーブンペースを狙って4’10/km~4’13/km辺りで巡航
2.ネガティブスプリット狙い。序盤は4’15/km~4’20/kmで行く
3.プチ貯金プラン。序盤4’05/km~4’10/kmで行く
4.大きな貯金狙い。序盤4’00/km~4’05/km、あわよくば凄いタイムを手にしたい
それぞれの作戦について簡単に解説すると…
※【欲望度】【危険度】共に5段階評価(勝手な個人の見解です^^;)
《1.石橋を叩くプラン》【欲望度:2 危険度:2】
最もポピュラーであり、採用するランナーが多いプラン。
4’10/kmで最後まで走る事が出来れば、2時間56分前後。終盤は少しペースダウン出来る余裕もあり、走力があれば、不確定要素の多いフルマラソンでも比較的安定したタイムを出せる、確度の高い「石橋を叩く」プラン。
《2.職人プラン》【欲望度:1 危険度:3】
序盤はサブ3の基準となる4’15/kmより遅めのペースで楽に巡航、中盤は4’15/km前後のペース、30km以降は4’10/kmに上げていくようなネガティブスプリットを狙う、終盤に絶対の自信を持つようなスタミナランナーが採用する作戦。
ターゲットとなる3時間をわずかでも切ればサブ3ランナーでしょ、というブレない考えに基づき確実にラップを刻み、2時間59分前後を狙う職人プラン。
もちろん終盤に余裕があれば大きくペースを上げて、2時間55分前後を目指す事も可能。
しかし、レース中盤からビルドアップしてネガティブスプリットをする経験と自信がないと序盤のペースから全然抜け出せず、サブ3するには少し遅めのペースでイーブンか、序盤にラクしたはずなのに終盤ビルドダウンする危険性もあります^^;
《3.心配性プラン》【欲望度:4 危険度4】
スピードタイプの男性ランナーが採用する事が多い作戦。
一般的なレースプランである4’10/kmよりも少し速く走って、貯金をたくさん持って終盤に臨みたい、心配性のランナーが取る作戦。
しかし、フルの終盤に自信があまり無い心配性プラン…と見せかけて、実はオレって4’07/kmくらいで走りきれちゃうかも?と、2時間55分切りをこっそり狙っている、むっつりスケベタイプ(笑)
《4.イケイケプラン》【欲望度:5 危険度5】
これが最も「あわよくば」的な凄いタイムを狙う、欲望度の高い危険なプランであり、いけるところまで4’00/km~4’05/km、序盤は3分台/kmを見るラップすらあるような作戦。
「4’03/kmとかで走り切れちゃったら2時間51分だぜ。何だったら終盤ペースアップしちゃったりしてキロ4イーブン、2時間50分切りもあるな、オィ」みたいな。
終盤にちょろっと撃沈してもサブ3くらいは余裕っしょ、というスピードタイプ・イケイケ俺様プラン(笑)
それぞれのプランを詳しく分析します。
まずは最も一般的であり採用するランナーも多い、4’10/kmをメインの巡航ペースにするプラン。
そもそも4’10/kmでも速いのに、それよりも速いペースでフルマラソンを走るのは難しいし、4’10/kmより遅いペースだと終盤ペースダウンした時にあっという間に貯金が無くなって、サブ3は難しくなる。
そんな理由から、4’10/kmで30kmまで巡航して貯金を作り、30km以降は疲労から徐々にペースダウンしても何とかサブ3に滑り込める「石橋を叩くプラン」が最も現実的な作戦として出てくる訳です。
このプランでサブ3出来なかったら、走力不足だったと諦めもつきます^^;
4’10/kmで巡航する場合、まずは眠ったまま30kmまでペースダウンせず到達する事が必須です。少しずつ力を出して頑張るのは30kmからです。
その際、30kmに到達する目標タイムは2時間5分(4’10/km)。
2時間5分で30kmを通過すれば、残り12.195kmを平均4’30/kmかかってもサブ3なので、少しばかりの余裕を持って残りの距離に挑んでいけます。
私がアップダウンの多い2018年洞爺湖マラソンでサブ3した時は、
30km通過が2時間5分6秒
ゴールタイムは2時間59分23秒でした。
少し遅れて30kmを2時間6分(4’12/km)で通過してもサブ3圏内。
終盤に充分余力のある状態であったり、アップダウンが少なくペースダウンを最小限に抑えられるようなコース設定であれば希望があります。
残り12.195kmを53分52秒(4’25/km)で2時間59分52秒です。
私が初サブ3した2016年つくばマラソンでは、
30km通過が2時間6分7秒
ゴールタイムは2時間59分30秒でした。
30kmの通過が2時間7分(4’14/km)だと苦しくなります。
残り12.195kmを52分51秒(4’20/km)で2時間59分51秒ですが、ほとんどペースは落とせません。
非常に厳しい状態ですが、ここから死ぬ気でイーブンペースを保って粘るか、ペースアップすれば達成可能です。
しかしながら、サブ3達成の可能性としては低くならざるを得ません。
サブ3挑戦に限らず、フルマラソンでネガティブスプリットを刻むのは非常に難しいのは、フルマラソンを経験したランナーであれば多くの方が感じていると思います。
そこをあえて、初サブ3挑戦でネガティブスプリットを選択しようとするのは、これまでのレース経験から、終盤への確固たる自信を持っているランナーであるのは間違いないでしょう。
ネガティブスプリットと言えば、シドニーオリンピック女子金メダリストの高橋尚子さん(Qちゃん)を育てた小出監督。
その小出監督が書籍「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法
平均ペース型 | 後半型 | |
---|---|---|
0km~5km | 21'15(4'15/km) | 22'05(4'25/km) |
5km~10km | 42'30(4'15/km) | 44'10(4'25/km) |
10km~15km | 1'03'45(4'15/km) | 1'06'15(4'25/km) |
15km~20km | 1'25'00(4'15/km) | 1'27'30(4'15/km) |
20km~25km | 1'46'15(4'15/km) | 1'48'45(4'15/km) |
25km~30km | 2'07'30(4'15/km) | 2'10'00(4'15/km) |
30km~35km | 2'28'45(4'15/km) | 2'30'25(4'05/km) |
35km~40km | 2'50'00(4'15/km) | 2'50'50(4'05/km) |
~42.195km | 2'59'20(4'15/km) | 2'59'48(4'05/km) |
4’25/kmから入って中盤は4’15/km、30km以降はサブ3ギリのレベルだと閾値にも近い4’05/kmまでペースアップして12.195kmもペース維持。
「監督!30km以降はずっと閾値走しろとか、マジで無理っす!(笑)」
こんな芸当が出来るのは、石橋を叩くプランなら少なくとも2時間55分を切れるような走力を持つランナーだと感じるのは私だけでしょうか^^;
現実的なネガティブ狙いであれば
スタート~10km 43分20秒(4’20/km)
10km~20km 42分30秒(4’15/km) 20km通過タイム1時間25分50秒
前半ハーフ 1時間30分30秒
20km~30km 42分30秒(4’15/km) 30km通過タイム2時間8分20秒
30km~40km 41分40秒(4’10/km) 40km通過タイム2時間50分00秒
残り2.195 9分52秒(4’30/km)
後半ハーフ 1時間29分29秒
ゴールタイム2時間59分52秒
こんなレースが出来たら、格好良いな♪
ハーフマラソン以下の距離のレースでは、サブ3の基準となるタイムを上回る素晴らしいPBを持っているランナーが選択するプランでしょう。
そんなランナーであれば、4’10/kmよりも速いペースで巡航するのは難しくないかもしれません。
このような作戦を選択するスピードランナーで、終盤に不安を持っている方であればこう考えるでしょう。
「序盤で4’10/kmよりもう少しだけ速いペースで走れば、30km以降に結構ペースダウンしてしまってもサブ3は固いだろう」
そうなんです。もし仮に4’05/kmで30kmまで余裕を持って到達できさえすれば…
30km 2時間2分30秒(4’05/km)
残り12.195km 57分(4’40/km)で走れば、2時間59分30秒ですから、そこまで4’05/kmで走ってきたランナーにしたら、かなり楽なペースなんです。
しかも30km以降もペースダウンを最小限に抑えて52分(4’15/km)で走れれば、2時間54分30秒!一気に2時間55分切り達成!最高です♪
私は2017年つくばマラソンで、4’05/km巡航で30km地点を2時間2分15秒で通過、ゴールタイムは2時間54分38秒でした。
そんな欲望あふれるランナー(笑)が注意すべき点は1つ。
30kmまで、本当に余裕綽々で巡航出来るかどうか、今一度確認を。
本番1ヶ月前などの練習30km走で、2時間2~3分で余裕を持って走りきれているのなら、おそらく問題ないと思います。
しかし、後半に不安があればあるほど、貯金はほどほどにしておいた方が安全ではあるのです。
マラソンでは、前半にわずかな無理をして作った貯金が、後半の大きな借金に繋がる可能性がある事は、経験を積んだランナーであれば体感している事です。
終盤にどうにか耐えられるキツさと、身体が言うことを聞いてくれなくなって全く耐えられなくなる地獄、その分かれ目は30kmまでの走り方です。
30kmまでは「眠る」「瞑想」「ただの移動」、そんな状態で4’05/kmを刻めるなら、2時間55分切りすら狙える、射程圏内の走力です。
もし終盤少し疲れたとしても、ゆるやかなペースダウンに抑えられて2時間56~57分が濃厚でしょう。
そんな走力であれば、自信を持っていってください。
最も欲望度の高いイケイケプラン^^;
とにかく元気なうちに最大限の貯金をする事でサブ3が絶対の安全圏になると考え、終盤に訪れる地獄の事など夢にも思わず、あわよくばとんでもない記録すら狙えると真剣に思っているプラン。
このプランを選択するランナーは、目標がサブ3なのか、2時間55分なのか、50分なのか、確固たるターゲットタイムが若干曖昧な事も多い。
「行けりゃどこまでもキロ4で行っちゃうよ!」
みたいな感じになり、レースプランはあって無いような展開になりがち。
当たれば凄いタイムが出るのは確かですし、終盤に粘れる気力と体力が残っていれば、軟着陸で2時間55分前後のタイムでゴールする事も現実的ではありますので、全くダメな作戦ではありません。
でもありがちなレース展開は、序盤~ハーフ辺りまでは気持ち良く走れても、30kmに到達する前からペースダウンが始まります。
30km地点を、サブ3の基準タイムである「2時間5分~6分」よりもずっと速いタイム(2時間2分~3分)で通過しますが、身体は相当苦しくなり、35kmを過ぎると青息吐息。キロ5やキロ6へのペースダウンは当たり前^^;
大きく貯金したタイムはみるみるうちに無くなり、逆に借金生活でそのままサブ3ならずのゴール。
「オレはチャレンジしたんだ!」
というと格好良くて仲間にもウケが良いのですが、サブ3ランナーになれなかったのは現実であり、足りないものがあったという事。
サブ3に初挑戦するのであれば、練習の中で確実に終盤もペースダウンを最小限に抑えられると思えるペースを理解した上でのレース展開でサブ3を獲り、そこからさらなる高みに挑戦するのが王道でしょう。
ブログの読者の方で、東京マラソン2019に向けて頑張っていた40歳台前半の男性の方がいらっしゃったのです。
その方は今回サブ3初挑戦。なんとフルマラソンは3回目。羨ましい素質^^;
最近の練習では30km走を1時間59分台で何度か走っていましたし、ハーフは1時間20分30秒台。私と走力的には同じくらい。
東京マラソンを数日後に控えて、私に頂いたメールの中で
「やはりサブスリー沼に足を踏み入れたか・・・となるかもです(
と謙遜されていましたが、すでにサブ3の走力より上なのは明らか。
「具体的な目標は2時間55分」
とメールに記載されていたのですが、納得でした。
そして東京マラソンの結果…
まさかのサブ3達成ならず。
レース直前までレースプランに悩んでいたそうでしたが、レース当日の朝の状態から
「安全にサブ3」より「チャレンジしよう」と決意されたとの事。
サブ3や2時間55分を飛び越えて、2時間50分切りを狙った。
おそらく
「2時間50分狙いなら、多少撃沈してもサブ3は安全圏だろう」
と、少し考えていたかもしれません。
序盤は下りという事もあって、3分台/km連発のラップ。
ハーフまでは問題無かったようですが、徐々に脚が固くなるような感覚。
スピードが出せなくなり
「せめてサブ3は…」
ともがくも、全身がこわばっていく。
38km地点でサブ3のペーサーにも追いつかれ、焦りと目標未達の恐怖の中でゴールを迎える事に…。
私としては、練習内容から考えれば妥当な巡航ペースだったように感じました。
ただ、少しだけフルマラソンの経験が少なかったのが難しいレースになった要因だと思います。
フルの終盤で身体が言うことを聞かなくなった時の怖さ。
全く抵抗する事が出来なくなった時の地獄は、大きな経験になったでしょうし、真剣にレースを走らなければ決して得られないものですからね。
でも次のレースは出来るだけリスクを抑え「もう思い切りペースアップしてもゴールまでたどり着ける」という地点まで、4’10/kmで巡航してほしい~^^;
★★★
今回、ブログの読者ご本人さまから
「サブ3を目指すには、どのように走るか迷う方って結構いらっしゃるのではないか」
とのお話を頂きました。
「失敗例として自分の東京マラソン2019サブ3達成ならず!をご紹介頂ければ誰かの役に立つのではないか」
という事で記事作成のご提案を頂き、了解を頂いた上で掲載させて頂きましたm(_ _)m
サブ3を達成するための練習やアプローチ方法は本当に千差万別です。
通勤ラン(ジョグ)だけでポイント練習せずにサブ3するランナーもいれば、月間500kmもの距離と様々なポイント練習を積み上げてどうにかその領域に届いた、という方もいらっしゃいます。
しかし、フルマラソンを経済的に・エネルギーを効率良く使って、レース全体を速く走れるレースプランは比較的限られています。
現在の世界レベルでの主流はネガティブスプリットですが、アスリートではない、私たち市民ランナーの主流は圧倒的にポジティブスプリット。
市民ランナーの大多数は、終盤にペースを上げられるほど身体を鍛え込める時間も、強靭な肉体もございません^^;
つまり、前半少しずつ貯金をしながら30kmまではイーブンペース、終盤わずかなペースダウンで何とか我慢しながら、どうにかゴールまでたどり着くという作戦が現実的。
もし35km以降に元気ならペースアップすれば良いですが、35kmもマラソンペースで走れば誰だって疲労困憊で難しいです^^;
30kmまで余裕を持って到達する事、30km地点が折り返し地点であり、マラソンはそこから始まる、というイメージを常に持って日々の練習に取り組んでいれば、前半に突っ込みすぎて30kmで終わるようなレースは少なくなってくると思います。
ただし、どんなプランでも30kmまでにペースダウンするようでは、サブ3以上のレベルで良いタイムを出すのは難しい。
まずは30kmまで余裕を持ち過ぎるくらい持って、眠りながら只の移動的な走りでイーブン。
それが出来さえすれば、もうサブ3の高い壁のヘリに両手はかかってます。
あとは身体を引き上げるだけ。引き上げる力が残っていれば、必ず越えられます。
30kmまでは絶対頑張らない
それだけは決して忘れず、自分が決めたレースプランで持てる力を全て発揮してきてください!