マラソン練習で一番多くの時間と距離を費やすであろう「ジョグ(ジョギング)」。
「疲労抜きジョグ」「回復ジョグ」「強化(持久力養成)ジョグ」「つなジョグ」「調整ジョグ」
ジョグの前に何かしらの「言葉」を付けて積極的に取り組んでいるランナーも多いですよね。
また、ポイント練習に入る前と後に「アップジョグ」「ダウンジョグ」をするのは「常識」として浸透しています。
逆に、
「平日はとりあえずジョグっとくか」
で、何となく取り組んでいるランナーもいるのではないでしょうか。
閾値走・インターバル・ペース走・ビルドアップ・変化走…etc そういった様々な練習などの中でも「基本」であり「根幹」であるという「ジョグ」。
そんなジョグの意味、ジョグの効果
「良くわからないけどやってる」
「薄っすらと感じてる」
「充分理解して効果も感じている」
取り組み方は様々だと思いますが、ちょっと整理してみようと思います。
目次
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
ジョグに関しては、いつも取り上げているダニエルズのランニング・フォーミュラには、記載がありません。
ダニエルズ式では、日常的に走るのはEペースであり、それより遅いペースでのトレーニングに関する記載が、皆無なのです。
ごく初心者でも
Eペース1分+ウォーク1分、それを15本
とか^^;
ただ、一般市民ランナーにとって日常的なEペースは少し負荷が高くてキツい。
特に平日ポイント練習や週末ロング走を設定しているランナーが平日も全てEペースを実施するのは、あまり現実的ではありません。
そこで今回はリディアードのランニング・バイブルからの言葉を引用したり、ジョグについて考えていこうと思います。
様々な書籍から知見を得て、自分に合ったトレーニングやランニングライフを送っていくのは楽しいですし、とっても大事な事ですからね(^^)
「ダニエルズさんは知ってるけど、リディアードさんは知らない…」
そんな市民ランナーの方もいらっしゃるかもしれません。
リディアードさんは、1960年台にニュージーランドでジョグを普及させ、無名だった選手たちを1960年ローマオリンピック中長距離で大活躍させ、さらに1964年東京オリンピックでは中長距離王国ニュージーランドの名声を確立させた、偉大な名コーチです。
リディアードさんは書籍の中で
私はトレーニングに費やせる時間も考慮し、最高安定状態の70%~100%のレベルで行う有酸素ランニングこそ最も効率のよい有酸素トレーニングであると考えている。
このように記載しています。
“最高安定状態”とは、上限ギリギリの酸素を使って走っている状態、つまりダニエルズ式でいうAT、“閾値”です。
閾値の70%~100%のレベルで行う有酸素ランニングこそ、最も効率が良いとしている。
例えば閾値ペースがそれぞれ下記のようなランナーであれば、70%の強度は
閾値(T) | 70% | 80% |
---|---|---|
5分30秒/km | 7分20秒/km | 6分40秒/km |
5分/km | 7分/km | 6分/km |
4分30秒/km | 6分/km | 5分30秒/km |
4分/km | 5分20秒/km | 4分50秒/km |
どうでしょう。70%と80%を記載しましたが、だいぶジョグっぽいペースが表示されてますよね。
人によっては70%だとゆる過ぎて、80%くらいが良いという方もいらっしゃるでしょう。
この70%のペースから閾値のペースまでが、最高に効率が良い有酸素運動”ジョグ”だというのは、現場での実感も含めて納得できます♪
リディアードさんは書籍の中で
安静時の心拍数が50回/分から60回/分の選手なら、それを100回/分まで上げるようなトレーンングをしただけで、心肺機能は発達するのだ。つまり、どんなペースのランニングでも、最高安定状態でのランニングほどではないが、それなりの負荷を心肺機能に与え、その発達を促すことができるのである。
心拍数が50/kmから60回/kmの人が、100回/分程度までしか上げないランニングというのは、かなりゆるいジョグ。
まさに前述の”閾値の70%”程度の”ゆるジョグ”ですが、それでも心肺機能は(閾値走ほどではないにしろ)発達すると述べてるいます。
ジョグが身体に与える影響として、リディアードさんは
有酸素トレーニングをつづけていくと、まず心臓が肥大しその機能が向上する。つまり、1回の収縮でより多くの血液を全身に送り、強い運動をしたければ、より早く収縮できる心臓をつくれるのである。
という記載や
有酸素トレーニングで体力をつけてくると、たとえば安静時に毎分4Lの血液を送り出してきた心臓は、運動時にはその8~10倍の血液を送り出せるようになる。毎日長時間走りつづけ、適度な負荷を循環器系にかけていくと、着実にその機能は向上し、より多くの血液を身体のすみずみにまで送れる身体になっていくのである。
このように説明し、ジョギングが心臓の機能を強化して血液を身体のすみずみにまで送れる身体に変えていくことが出来るとしています。
また、肺の中の毛細血管が発達してより多くの酸素を吸収できるようになるなどの循環器系の良い変化の記載や、筋肉中の毛細血管網の発達など、着実にスタミナアップにつながるという文言が書籍に並んでいます。
そして目には見えにくいその身体の強化・変化については、心拍数の変化によって知ることが出来るとしています。
心臓の筋肉が発達すると、1回の拍動で送り出せる血液量(心拍出量)が増す。ということは、送り出す血液の量が同じならば、心臓はよりゆっくり拍動すればよいので、心拍数は減少するというわけだ。
いつもガーミンなどのGPSウォッチで心拍を計測して生活している方であれば、日常生活の心拍数の変化によって、自分の成長を目で見る事ができますね。
とにもかくにも、サブ4くらいまでの目標であれば「多くの人は、ジョグだけでいける」という人もいる程
ジョグには持久力向上に高い効果がある!
という事は、リディアードのランニング・バイブルに、たくさん記載があります。
いや、サブ3.5ランナーだってサブ3ランナーだって、さらに速いランナーだって、みんなジョグで土台を築き上げてきて、そしてランナーとしての基礎的な部分をジョグで維持していますよね。
そんなジョグの効果。
やっぱりナメてはいけません!
青山学院大学を卒業してGMOアスリーツに入り、2020年の福岡国際で2時間7分05秒で優勝した吉田祐也選手が練習内容をnoteで公開しています。
https://note.com/yuya__ysd/n/nd4aee2593cf9
福岡国際の前にやった練習で最も重視したのが、ジョグ。
吉田選手のVDOTは、福岡国際のタイムを基準にすると約80、閾値は2分54秒/km。
その70%ジョグは、3分52秒ほど。
Eペースよりさらに遅い、このレベルのジョグを最重要視して結果を出したんですね。
もちろん期分けとしてスピードの下地は作られており、その上でスタミナ練習重視の時期に実施したとは思いますが、市民ランナーにも大変参考になります。
これがフルマラソンだけでなく、ウルトラマラソンだって50kmとか60kmの距離を「ジョグペース」で練習を重ねれば、持久力が付いて100kmだって完走出来るようになるんだから「ジョグ」の持久力向上効果って、実感として本当に凄いと思います。
ジョグでの鍛錬は、確実にフルマラソンを走り切れる持久力が養成される
これは間違いのないところです。
ゆっくり有酸素運動をすると血流を良くして、乳酸や老廃物などの疲労物質を除去する効果があると言われます。
「疲労抜きジョグ」というヤツですね。
Eペースだと軽いポイント練習のようなランニングになりますが、前述のリディアードさんの“最高安定状態の70%”は、疲労抜きにも使えそうなペースではないでしょうか。
実際に私も閾値の70%くらいのペースになると、たいぶゆっくりで心地良い「疲労抜きジョグ」のペースになるような実感があります。
心拍数的には最大心拍数の60%~70%、最大心拍数が180であれば100~120程度が適切でしょう。
でも、そこまで厳密にペース管理する必要はありません。ゆっくり心地良くで良いと思います。
私は純粋に「疲労抜き」という目的であれば、疲労抜きジョグだけでなく、ウォーキング・エアロバイク・完全休養なども選択肢として考えながらやっています。
つい速いペース、つい長い距離や時間を走ってしまうと”疲労増し”になりますので、要注意です(笑)
毎日ポイント練習は出来ません。
ポイント練習とポイント練習の間をどうするか。
もちろん”ジョグ”ですよね。
ランナーにもよりますが、一般的にマラソンの記録向上を目指しているランナーが強度の高い練習を行うのは平日1回と週末。
それ以外は「ジョグ」や「ランオフ」という人も多いと思います。
ポイント練習翌日など、凄く疲れている時は「疲労抜きジョグ」で良いと思いますが、ある程度疲労が抜けている状態で、かつポイント練習実施にはまだ早いという段階で走力・体型維持・フォーム確認などの為に「つなぎジョグ」をやれば効果的だと思います。
つなぎジョグをEペース近辺で実施しているランナーもいますが、日々のジョグがわずかにポイント練習寄りになってしまう事で、本当のポイント練習の日に疲れが残ってしっかり走れない、大事なポイント練習の効果が半減してしまう事があります。
ここもリディアードさんのジョグペースにならい、
“最高安定状態の70%~80%”
で良いつなぎになると感じます。
スタミナ養成も、もちろん非常に効果が高いのですが…
私はランナーとしての
「土台作り」
「怪我防止」
としての側面も大きいように感じており、ラン人生を長く・楽しいものにするための最も重要な練習なのではないかと思っています。
例えばフルマラソンの練習。
シーズン序盤で走り込みがあまり出来ていない時期、急に負荷の高いポイント練習をするとベテランランナーでも怪我をしがちです。
でも、しっかりジョグで距離を踏んでから負荷の高い練習に移行すると、怪我も無く疲労からの回復も早い「強い身体」が出来ている事に気付きます。
ジョグの距離を増やす場合は、安全・確実、徐々に増やしていくのがポイントです。
普段あまりジョグで距離を踏んでない(月間100kmなどの)ランナーは、ポイント練習やフルマラソンのレースがキッカケになって怪我する人って結構いらっしゃるような気がします。
真面目に「ジョグ」練習を重ねているランナーほど怪我が少ない印象がありますし、レース後に疲労も残りにくかったりするようなイメージです。
なお、ジョグでも硬いアスファルトの上で「これでもかっ」って距離を踏むと、ジョグで怪我します^^;
私がフルに向けて強い練習をしても怪我をしない身体・強固な土台を作る時は、近所の公園クロカンコースや土・芝の上で距離を踏みます。
現状の週間走行距離や月間走行距離から、安全に増やしていく方法についてはこちらの記事を見て頂くと詳しく分かります。
土の上での練習といえば、テーパリングとはという記事で紹介したザトペック効果。
400m×100本を2週間続けてやるという、とんでもない練習をしてオリンピックチャンピオンに輝いた選手ですが、ザトペックはポイント練習を「森の中」で実施していたので、こんなありえない強度の練習でも怪我をしなかったんです。
詳しくは以下の書籍に記載がありますが、日本語訳が出てないので全編英文の洋書ですorz
ジョグとはいえペースを示したジョギングについて色々とお話してきましたが、私たち市民ランナーにとって最も大事なのは
楽しく、気持ち良くジョギングをすること
ですよね( ´ ▽ ` )
「今日は乗り気じゃないなぁ」
「仕事で疲れてゴロゴロしたいな~」
そんな時でも、ごくごくゆっくり、少しだけお散歩に行くような気持ちで走り出すと、徐々に身体が動いてきて、結果的に
「スッキリした!」
「気持ち良かった」
「最後はEペースまで上げられて気分良し♪」
そんな事って、よくありますよね♪
私はそんなジョギングで、全く問題ないと思います(^^)
やっぱりダメな感じなら、すぐ帰ってくれば良いだけですし^^;
私たちはプロランナーではなく、趣味で楽しく走る市民ランナー。
深刻な顔で走りに行く必要はありません(笑)
その上で、気が向いたらジョグとポイント練習を両輪としつつ、バランス良く練習を積んでいく事で、故障知らず、マラソンの記録も少しずつ伸ばしていけます!
ランナーが日々の練習の中で一番親しんでいる「ジョグ」。
ジョグを大事にする事で深刻な怪我や疲労とは無縁、スピードも出せるしゆっくりランも楽しめる幸せなランニングライフを、末永く送れるようになると思いますよ!
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こんばんは いつも楽しく拝見しています。げんさんの文章力と記事の内容の濃さ とても興味深く見させていただいてます。
ブログ村から突然いなくなったのはちょっとビックリしたのですが、いろいろ考えがあっての事 参考になるネタが多いのでこれからも楽しく見させて下さい。よろしくお願いします (^_-)-☆
静岡県民さん、おはようございます!コメントありがとうございます♪
弊ブログの中に少しでも参考になった部分があったとしたら嬉しいです♪
ブログ村の件は驚かせてしまってスミマセン^^; 引き続きブログはやっていきますので、たまにのぞいてみてください(*^^*)