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LSDトレーニングとはLong(長い)Slow(ゆっくり)Distance(距離)の頭文字を取った略で、ごくゆっくりのペースで長い距離・時間を走る練習の事を言います。
ゆっくりなペースなので故障のリスクが低く、特に初心者ランナーにとっては有酸素運動で得られる様々な効果の獲得が期待できて、長距離ランナーとしての土台を築く事が出来る練習方法です。
歴史は意外と古く、元々はドイツ人医師でコーチでもあるエルンスト・ファン・アーケンさんという方が第一人者。
1969年に、ランナーズワールド(日本でいうランニング月間情報誌”ランナーズ”のアメリカ版的なもの)の元編集長であるジョー・ヘンダーソンがトレーニング方法として推奨した事に端を発します。
日本では、LSDの祖と言われる佐々木功さんの書籍「ゆっくり走れば速くなる(1984年)」が有名です。
佐々木監督は、ソウルオリンピック女子マラソン代表の浅井えり子さんを指導された事でも知られています。
監督は1995年に悪性黒色腫で52歳の若さで亡くなってしまったのですが、その後は現在に至るまで、弟子とも言える浅井えり子さんがその遺志を引き継いでLSDトレーニングを広めています。
様々なメリットがあるLSDトレーニングですが、インターネットなどで様々な情報が溢れていることもあり、正しい実施の方法について少し困惑する場合があります。
今回はLSDの祖とも言われる佐々木監督の書籍を引用しながら、LSDトレーニングで実施すべき正しいペースや走る時間・距離、そしてその効果について学んでいこうと思います(^^)
LSDトレーニングを実施する際のスピードについては、様々な意見があります。
「キロ6分より遅くなければいけない」
「キロ7分より速いと効果が薄い」
「歩いている人に抜かれる位じゃないとダメ」
結局どれが本当なんだっ!(笑)
ここはやはり、佐々木監督の書籍で勉強するのが一番の近道。
佐々木監督は書籍の中で、こう記載しています。
ゆっくりと、といってもその人によってスピードは当然違ってきます。
~中略~ 目安としては全力の40%~60%あたりまででしょう。脈拍でいうと130以下のところでやるのはLSDといえるでしょう。
全力の40%~60%
という目安の記載があります。
つまり全力の1km走が
3分→1kmのペースが5分40秒~6分20秒ほど
3分半→1kmのペースが6分40秒~7分20秒ほど
4分→1kmのペースが7分半~8分半ほど
そんな基準になってきます。
一律にキロ○分より遅く、というのは少し違うという事が分かりました。
分かりやすい基準で言えば、
おおむね1km全力走のペースの倍のタイム
それが1km毎のペース設定という事になると思います♪
全力走のタイムが分からないという方でも
脈拍130以下
という基準も示してくれてますので、光学式のGPSウォッチなどで計測出来る脈拍でも判断できますね。
私の場合は全力走がキロ3分ほど、LSDペースはキロ6分前後、それくらいのペースだと脈拍は130前後くらいになりますので、脈拍の基準も大体合ってると思います(^^)
では、どれくらいの時間・距離を走れば良いのでしょうか。
まずLSDは基本的に、”距離”ではなく”時間を”目安にして走るトレーニングです。
佐々木監督は書籍の中で、このように記載しています。
時間的にはこれといった基準はありません。グリコーゲンの枯渇状態を作り出して走る場合など4時間以上ということもありますし、全く未経験なジョガーであれば1時間でもLSDといえるでしょう。我々の場合、だいだい2時間から4時間ぐらいの範囲に入ることが多いでしょう。
固定的に決まった時間の縛りはないんです。
ランナーのレベルや、練習の目的にもよるということ。
すでにある程度練習を積んでいてフルマラソンに挑戦したいというランナーであれば、2時間~4時間が推奨されてます。
では、自分に適切なペースで2時間~4時間LSDトレーニングをすると、どのような効果が期待出来るでしょうか。
大原則として知っておくべきことは
LSDは有酸素トレーニング
という事です。
したがって
有酸素運動で得ることが出来る運動効果は、当然得られる
という事になります。
どんな練習だって走りさえすれば、走るために必要な様々な能力の向上は見込めます。
練習の種類や強度によって、効率的にアップする能力の違い、そして上昇幅が異なる、という事です。
ではLSDの代表的な効果として、佐々木監督が書籍で記載しているものは何か。
血管自体はあり、筋肉のなかを通っているのに、その中に血液が流れていない。いわば眠ってる抹消毛細血管。これを目覚めさせ、その血管の中に血液を送り込み、生きた血管としなければなりません。そうしなければいくら送り込まれる血液の量を増やし、酸素の量を増やしても、その酸素は消費されずに無駄となってしまうのです。
呼吸をして酸素を体内に取り入れ、血液と血管を通じてヘモグロビンと結合させて体内に送って走るためのエネルギーとします。
しかしせっかくエネルギーを送りたくても、運搬する道路(血管)が隅々まで通ってないのであれば、エネルギーを運べません。
有酸素運動をする事によって、眠っている抹消毛細血管を目覚めさせる。
そして道路を開通させて、エネルギーを身体の隅々まで届ける。
これは長く走り続けるための必須の能力です。
それをLSDで鍛えることが出来るのです。
身体運動学的に見みて、左右のアンバランス、ムダな動きはロスであり、損です。そして故障につながっていきます。~中略~
左右のバランスがいいフォームの方が効率はいいのです。つまり、得です。同じ力なら、正しいフォームで走る人の方がいいタイムを出せるといえます。そういうフォームをLSDのなかでつかむ必要があります。
書籍ではLSDを実施している際、正しいランニングフォームを試しながらつかんでいく事が良いと記載されています。
これはこのブログでいつもご紹介しているダニエルズさんやリディアードさんなど、世界的な指導者の考え方とは少し異なります。
ダニエルズさんはWS(ウインドスプリント)やレペティショントレーニングのような、速いスピードで動くランニングで自分に最も適した、ランニングエコノミーの高いフォームを獲得していく考え方。
またリディアードさんも、ドリル的な要素を交えたりしたヒルトレーニング(坂練習)でフォームを正していくという方法です。
私個人としてもランニングフォームは習うより慣れろ、考えるな、感じろ!派^^;
速く走るために自分に最も適したフォームは、速く走る中で自然に体得すべきであるという考えです。
ただし、LSDトレーニング中にフォームや体の動きの事を考えるのは、全くの無意味という訳ではありません。
様々な気付きもありますので、実際に自分で試してみて、必要かどうかの判断は自分で下すべきかな、と思います。
体に疲労がたまっているときは、いい汗をかかなければいけません。でも、そこで汗をかくために激しい運動をしてしまっては元も子もありません。~中略~ 軽い刺激を十分な時間を与えて、いい汗をかく。その汗とともに疲労を体の外へ出してやるのです。
強い負荷のトレーニングで疲労した場合、その翌日などにごく軽い有酸素運動をする事(アクティブレスト)で血液循環が良くなり、疲労物質が筋肉や肝臓などでより効率的に処理されるという事があります。
軽い運動なら新たな乳酸もあまり発生しません。
軽い運動でも全く疲労が増すことは無い、というわけではありませんが、適切な距離・時間であれば、新たな疲労より疲労解消の効果が大きくなるという科学的な根拠はあります。
ゆるめのサイクリングや水泳、ウォーキングなども同様の効果になります。
LSDのみならず、有酸素運動を実施すれば様々な効果を得る事が出来ます。
例えば
・関節や筋の発達
・心肺機能
・グリコーゲンの貯蔵量を増やす
・遅筋のミトコンドリアが増加
・脂肪燃焼効果
などは、有酸素運動の代表的な効果ですし、LSDのように長い時間走る事をすれば
・長い時間運動するメンタルの強化
も期待出来るでしょう。
LSD練習の基礎編として、そのペースや走行時間・効果について解説してきました。
LSDトレーニングは、長距離を走るために有効な効果が数多く詰まっており、ランナーとしての土台を築く事が出来ます。
なによりLSDは私たち市民ランナーにとって
★走り出す時のハードルが低い
★リフレッシュが出来る(LSDペースで疲労抜き的な短時間ランの場合)
★様々な事に思いを巡らせる事が出来る
★ゆっくりなので、おしゃべりや風景を楽しめる
このような、趣味としてランニングを楽しむ私たち市民ランナーにとって、代えがたいメリットがあります。
そのため中高年の市民ランナーにLSDトレーニングはとても人気があり、練習効果もさる事ながら、上記のようなメリットだけでもLSDの存在意義は充分あるのではないでしょうか。
ただし。
LSDだけをやっていれば、フルマラソンを速く走るためのスタミナがどんどんつく、どこまでもスピードがアップする、というものじゃないというのも確かなんです。
LSDトレーニングには、限界もある。
そして同じ有酸素トレーニングである”ジョグ(ジョギング)”や”Eペース”との違いは何なのか。
なぜ上級者はLSDトレーニングを取り入れないランナーが多いのか。
そんな、LSDトレーニングについて一歩踏み込んだ解説をLSDトレーニング【発展編】として、次回公開します。
お楽しみに(^^)