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トレイルレースにおける補給食の量と種類について

この夏、トレイルのレースに初めて参加されるという数名の方から

「補給食や給水はどれほど持てば良いのでしょうか」

というご質問を頂いていました。

トレイルランの場合、フルマラソンのレースのように2~3km毎にエイドステーションがある事はありません。

したがって、ザックを背負ってハイドレーションパックソフトフラスク・ペットボトルなどに水分を入れて適宜給水、同じように補給食も持参して必要な時に摂取する必要があります。

しかし、補給食や給水は持ちすぎるとザックが非常に重くなってパフォーマンスに影響します。

かと言って少なすぎると食べ物が無くなってハンガーノックになって動けなくなったり、水切れで地獄を味わう、ないしはリタイアにつながってしまいます。

どれくらいの補給食や給水を持つのがベストなのかを考えていこうと思いますが、今回はまず”補給”についてのお話です。

トレイルレースにおける補給食について

運動中にエネルギーが切れる”ハンガーノック”という状態は、何もトレイルランニングだけではなく、マラソンや他のスポーツでも起こる事はご存知だと思いますし「フラフラする」「力が入らない」「頭がぼーっとする」などの症状を経験した事がある方も多いと思います。

そうなってしまった時、ロードのレースであれば近くのエイドステーションで休んだり、コンビニに立ち寄って補給をする選択肢もあるでしょう。

しかしながら、フルマラソンなどのロードレースと異なり、エイドステーションが少ないですし、エイドステーション間の距離も10kmや20kmは当たり前だったりします。

なので、トレイルのレース中にハンガーノックになって山中で動けなくなる事は大変危険な事。

それを避けるためには、いかに効率よくエネルギーを補給し続けるかが大事なポイントになりますが、何をどれほど持っていけば良いのかが問題になります。

まずは補給食の量について


補給食の量

少しだけ難しい用語が出てきますが、出来るだけ簡単に説明しますのでお付き合いくださいm(_ _)m

エネルギーの消費量は”METZ(メッツ)※”を使って計算します。

※”METZ”とは「Metabolic equivalents」の略であり、運動を行った際に安静状態の何倍の代謝(カロリーの消費)をしているかを明示しています。座って安静に過ごしている状態が”1METZ“です。

エネルギー消費量の個人差は当然ありますので、参考としての利用が良いです

出典:厚生労働省

上記の表を参照すると、例えば

「ランニング:134m/分(7’28/km)」であればMETZ8なので、安静状態の8倍

「ランニング:161m/分(6’13/km)」であればMETZ10なので、安静状態の10倍

のカロリー消費があるという事になります。

そして、消費カロリーの計算式は

消費カロリー(kcal)=1.05×METZ×時間×体重(kg)

となりますので、例えば

体重60kgのランナーが6’13/kmで42.195kmを走ると4時間半弱かかりますので

1.05×10×4.5×60=2835kcal

2835kcal消費する、という事になる訳です。

さらに詳しいMETZデータがこちら(PDF)にありますが、それによると

【サブ3.5ペース(4’58/km)】

→METZは11.5(安静状態の11.5倍、フルでの消費エネルギー2535kcal

【サブ3ペース(4’15/km)】

→METZは凡そ12.5(安静状態の12.5倍、フルでの消費エネルギー2362kcal

だと分かります。

同じ距離を走っても、速く走るほど消費カロリーが少ないという悲しい現実^^;

活動時間が短いからしょうがないですが。

肝心のトレイルレースの場合はどうなるか。

これが結構難しいですよね。比較的一定の強度で走り続けるロードのランニングと異なり、トレイルは登りでは心拍数が一気に上がるし、疲労してきたらフラットや下りでも歩く場面があったりする。

ランナーによって、またコースによって大きく異なるのでは、という事が想像出来ます。

例えば自分の場合、フルマラソンを走る場合はサブ3のスピード・METZ的には12.5ですが、トレイルではそんなに速く走りません。

林道などの走れるパートでも5’30/km前後で進む事が多いです。

5’30/kmペースのMETZは10.5

なので、比較的アップダウンの少ない林道であればロードでの5’30/kmと同程度の消費カロリーと思って良いと思われます。

そして山岳パート。

前述の表で

「山を登る:約1~2kgの荷物を背負って」

というのがあり、メッツは7.5。

さすがに荷物はもう少し重いし登るスピードも速めなので、

歩いて登る山岳部のMETZは8

と考えます。

コースやランナーの走力にもよりますが、自分の場合はならして

トレイルでのMETZは9程度

であると思って、補給食を用意しています。

ここはランナーの走力やコースによって変わりますので、自分の走力などを確認して決めてください。

以上を消費カロリーの基本的な考え方とします。

身体に蓄積している糖質エネルギーを考慮する

じゃあ林道16km・山岳4kmの20kmレース(体重60kgランナー)なら、

・林道16km(5’30/km)=1時間30分

・山岳4km(15’00/km)=1時間

合計2時間30分のレースと予想して、METZ9で消費カロリーを計算。

1.05×9(METZ)×2.5(時間)×60(体重)=1418kcal

1492kcalの消費だから、1500kcalの補給食を持っていけば良いんだ!

とはなりません。

20km・2時間半のレースでそんなに補給食を持っていく人はいない(笑)

体内には、元々蓄積されている糖質エネルギーというのが存在します。

一般的な男性で1500kcal~2000kcalと言われています。

仮に朝ごはんをしっかり食べて、レース前にもジェルやカステラでエネルギー補給バッチリで臨むフルマラソンのレース、体内の糖質エネルギーが2000kcal満々にあるとしたら、フルマラソンで2500kcal消費したとしても…

足りない500kcalを補充すれば良い

という考え方になり、私がいつも愛用しているアミノバイタル パーフェクトエネルギー 130g(180kcal/1パック)を、レース中に2本(+スポーツドリンクで)補給すれば充分という事になります。(スポーツドリンクは500mlで150kcalほど)

ジェルで充分なのに、エイドで散々飲み食いしたら、フルを走ったのに体重増加というショッキングな事があるかも(笑)

冗談はさておき、仮に10時間のトレイルレースに臨む場合でも

1.05×9×10×60=5670kcal

ここから体内に蓄積させている糖質エネルギーを引いて

5670-2000=3670kcal

3670kcalの補給食を持参、1時間に360~370kcalの補給をすれば良いという考えに至ります。

「えっ、1時間に180kcalのジェル2個…無理っす^^;」

「そんないらないでしょ」

という声が聞こえてきそうですが、おっしゃる通り!(笑)

給水のスポーツドリンクでもカロリーを摂取しますし、少ないながらトレイルにだってエイドはあるので、エイドの給食で補給もするでしょう。

しかし、忘れてはいけないのが

体脂肪からのエネルギー利用

です。

マラソンでも体脂肪からのエネルギー利用を促進させるような練習をしますよね。

脂肪を使える身体にする(ハシルコト別記事)

自分が経験してきた感覚では、計算式で出される”必要なカロリー”に0.6~0.7を掛ける位の補給で充分だと感じています。(個人差あり。私は0.6を利用)

前述の10時間トレイルレースに臨むのであれば、

3670kcal×0.7=2569kcal

2569kcal、つまり1時間に257kcal。(0.6なら2202kcal、1時間に202kcal)

1時間にジェル1本(180kcal)やオニギリ・ナッツ(柿の種)などの補給+ちょいちょいスポーツドリンクの給水と、エイドが来たら補給・給水。

そんな感じの補給計画でレースを進めれば、ハンガーノックの危険性は回避出来ると思います。

(消費エネルギー - 体内の蓄積エネルギー)×0.7=必要な補給総カロリー


何も摂取しないで進むとどうなるか

「けっ!そんなに補給なんてしなくても大丈夫でしょ( ´,_ゝ`)」

という、エネルギー効率の良い方もいらっしゃるでしょう。

実際フルマラソンで何も補給せずに走り切る人もいますし、朝起きて麦茶1杯飲んですぐ走り出し、30kmでも35kmでも無補給・無給水で走りきれちゃうランナーもいる訳です^^;

実際、体内に1500kcalの糖質エネルギーが蓄積されていて、脂肪エネルギーを使う体内システムが良く出来上がっているランナーであれば、METZ9くらいの強度で3時間走るとしても

1.05×9×3×60=1701kcal

わずか200kcal足りないだけで、脂肪エネルギーを使えば充分まかなえる程度の運動になります。

同じように、フルマラソンくらいの距離であれば、蓄積された糖質エネルギー+体脂肪エネルギーで、さほど多くの補給・給水をしなくてもゴールまで走れてしまうランナーは少なくありません。

私も実際にウルトラマラソンで走っていると、フルの地点までは身体がさほど補給や給水を求めない事が多いです。

でも、しっかり序盤から補給・給水します。

何故か。

補給が少ないと、50km~60km以降で顕著にエネルギーが枯渇して走れなくなってくるからです。

ハンガーノックは食べて少し休めば回復していきますが、多少時間がかかります。

短い距離のトレイルはまだしも、ミドル~ロングのトレイルに参加する場合、序盤でお腹が空いていなくても食べ続ける事が、終盤の身体の状態を大きく左右すると知っておきましょう。

「お腹が減ったら食べれば良いよ」

と思っても、レース中盤以降は胃が食べ物を受け付けてくれない事もありますので要注意です。


補給食の選択

持参するべき補給食のカロリーは分かったけど、何を持っていったら良いのか。

基本はジェルやグミ・ようかんなどです。

特にジェルは軽くてコンパクト、カロリーが多め、消化が速くて短時間でエネルギーに変わってくれます。

そして味も様々なものが販売されています。

ジェルはおなじみのアミノバイタルやショッツ、パワージェル、スティンガーやマグオン、メダリストなど様々なものが発売されていますので、好みの味を探すのも楽しいですよね♪

あんこ系が割と好きなので、かさばらないスポーツようかんも持参します。

甘いものばかりだと飽きるので、電解質の補給という意味も含めて、しょっぱいものも持参します。

一口大にラッピングしたオニギリ、ナッツ・柿ピー

そんな補給食です。

私の場合、序盤は胃腸も元気なので米パワーを注入しつつ巡航、中盤以降はジェル+ナッツ系、たまに羊羹、という事が多いです。

補給食の選択については、日々のトレーニングの中で必ず試してみて「大丈夫だ」と感じる事が出来たものを選んでください。


まとめ

【トレイルで補給食の量を決める場合】

体重60kgのランナーが10時間ほどでゴールに到着するレースに着く場合

1.消費カロリー:(1.05(係数)×9(METZ)×10(行動時間)×60(体重)=5670kcal

2.体内エネルギー分を引く:5670-2000=3670kcal

3.体脂肪利用分を引く:3670kcal×0.7=2569kcal

補給すべき総カロリーは2569kcalが目安になり、1時間当たりでは257kcalです。

ジェル1本180kcal+スポドリ250ml75kcal=255kcal、というようなイメージになります。

最後に、長い時間動く必要がある、長い距離のトレイルレースの場合「これだったらレース終盤でも食べられる」という自分なりの補給食を見極めておくことが大事です。

ジェルだけだと飽きる人がいます。私です(笑)

フルマラソンでも本番前の練習で試していないものを使うのはご法度ですが、トレイルレースではより一層その気持ちを強く意識して、練習で色々と試してみましょう~♪

次回はトレイルのレースにおける、水分補給の量や種類について考えていきます。

げん

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げん