夏の暑い時期…というよりは、本州や四国・九州に住んでいるランナーにとっては5月や6月から、すでに日中は25℃以上の高温が続き、多湿も加わって走りづらくなってきます。
そして7月や8月になれば日中は35℃を超える日も多く、もう走れないほど^^;
以下のようなご質問を頂く機会も多いです。
「ダニエルズさんのペース表どおりに走ろうとすると、暑さのためすぐ
に心拍数や息が上がってしまいます。 走力向上のためペース表通りに走るには脚はもつけど身体面のダメ ージが冬時期に比べ大きいものとなります。 暑い時期の脚の筋力をつけることや走力向上に向けての練習はどう すればよろしいでしょうか?」
何度も夏を経験しているランナーであれば、その経験則として
・夏と冬では同じペースで同じ距離を走るのは難しいし、ダメージも大きい
・夏場の練習は気温が下がる早朝と夜が、やりやすい
などが分かるのですが、初めて夏を経験するランナーにとって、真夏はどんな練習をどのように実施したら良いか困惑するかもしれません。
夏場は自分が目指す目的によって、練習への取り組み方も変わります。
ここでは、秋のフルマラソンに向けた夏の間の練習について、ご紹介します。
目次
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
フルマラソンのレースは9月末~10月にかけて徐々に開催されるようになり、11月・12月は毎週どこかでフルマラソンの大きな大会が実施されるようになります。
一般的には春まででフルマソンのシーズンが終わり、秋のレースに向けて、多めの休養を取ったり身体をリセットさせて、新たな目標に向けて一から鍛え直すランナーが多いと思います。
「休養もバッチリ、また秋に向けて鍛えるぞ!」
と意気込んだは良いものの、外はすでに気温が25℃以上の夏日…スピードを出して走ると、すぐに息が切れる。
息が切れる程度ならまだしも、日中の日差しは殺人的。
日焼けを通り過ぎて火傷(ヤケド)をしてしまったり、熱中症で倒れてしまうリスクもあるくらい、ジリジリと強烈な陽が降り注ぐ本州の夏。
35℃以上になると遊具にも触れなくなるほど熱くなるので公園から子供の姿が消え、道を歩く人の数すら減ってきます。
(私の住む北海道は、そこまで殺人的なw日差しや気温になりませんが^^;)
そんな夏のマラソントレーニングを
安全に、かつ秋のレースに向けて効率よく走力アップを狙うトレーニングを実施する
にはどうしたら良いのでしょうか。
これはもう、夏のトレーニングの”基本中の基本”です。
北海道在住の私でも、夏は早朝の暗いうちから走り始めてロング走を実施する事が多いです。
やはり日中の日差しが強い時に長い距離・時間を走るのは大きな疲労やダメージを受ける可能性が高く、練習の継続性に難があるからです。
安全に屋外での練習の効率を高めるには朝か夜に走るのが、同じ練習をするにもダメージが少ないですし効果的です。
涼しい時間帯に屋外で練習するのと同等の効果として考えられるのは…
クーラーの効いた屋内でのトレッドミル
これがまた、最高です(笑)
トレッドミルのある施設が近くにあったり、ジムに行ける環境が整っていれば、温度調整された室内のトラックやトレッドミルで練習をするのも安全に走力を維持・向上していくには最高です♪
ジョグだけじゃなくて、スピ練で心肺もバッチリ上げられますしね。
そもそも気温が高いと速いペースで走るのが難しいので、ペースは落とさざるを得ません。
「じゃあどれくらい落とせば良いのか?」
という部分が問題になります。
落としすぎてもポイント練習の効果が薄れそうですからね。
定期的に閾値走やインターバルを実施しているランナーであれば、気温によって閾値走やインターバルのペースをどれ位落としたら良いか、基準を簡単に示してくれるサイトがあります。
こちらのサイトです。
「Jack Daniels’ VDOTRunning Calculator」
英語表記のために少し分かりづらいかもしれませんが、慣れれば簡単です。
一応以下に操作方法を示しますが、飛ばしてOKです(笑)
飛ばした先に、気温に対してどれだけペースを下げたら良いのかの一覧表を掲載しています(*^^*)
まずサイトにアクセス頂き、一番上のボックスの左側に距離を選択するプルダウンボックスがあります。
”Select Event Distance”と表示されている、赤で囲っている部分です。
ここで”Marathon””Half marathon””15K””10K””5K”などが選択出来ます。
ここでは一例として、Marathonを選択。3時間50分30秒と入れてみます。
するとVDOTが41と表示され、トレーニングで走るべきペースが示されます。
Easyはイージーペース、Marathonはマラソンペース、Thresholdは閾値です。
VDOTの閾値は5’00/kmと表示されます。
次に、青い”Calculate”というボタンの左にある”Advanced Features”という、緑色の部分をクリックします。
すると下記のような気温を入力出来る画面になるので”Temp”のボックス内に気温を入れます。気温の横のボックス、何もしないと”F(Fahrenheit:華氏)”になってますので”C(Celsius:摂氏)”に変更します。
上記では17℃と入れてみました。
すると、トレーニングのペースが表示される部分で閾値は5’02/kmとなっています。
16℃以下だと5’00/kmですが、17℃になると5’02/kmになります。
これで自分が走る時の気温を入れれば、簡単に閾値走やインターバルでペースダウンするべき基準が分かります。
各VDOTと気温におけるM・T・I各ペース設定の基準について正確に表記すると以下のようになります。
気温15℃が基準のペースとなり、気温が上がるにつれて設定ペースを落としていきます。
ただ、いちいち表で確認するのも面倒なので…大体の基準として
15℃を超える気温の時は、1℃上がる毎に1秒/km設定を落とす!
と覚えておけば、バッチリかと思います^^;
VDOT | 15℃ | 20℃ | 25℃ | 30℃ | 35℃ |
---|---|---|---|---|---|
35 | 6'18/km(M) | 6'22/km【+4】 | 6'28/km【+10】 | 6'33/km【+15】 | 6'38/km【+20】 |
5'41/km(T) | 5'45/km【+4】 | 5'49/km【+8】 | 5'53/km【+12】 | 5'57/km【+16】 | |
5'14/km(I) | 5'17/km【+3】 | 5'21/km【+7】 | 5'26/km【+12】 | 5'30/km【+16】 | |
40 | 5'35/km(M) | 5'40/km【+5】 | 5'44/km【+9】 | 5'49/km【+14】 | 5'53/km【+18】 |
5'06/km(T) | 5'09/km【+3】 | 5'14/km【+8】 | 5'17/km【+11】 | 5'21/km【+15】 | |
4'42/km(I) | 4’44/km【+2】 | 4'48/km【+6】 | 4'53/km【+11】 | 4'56/km【+14】 | |
45 | 5'02/km(M) | 5'07/km【+5】 | 5'11/km【+9】 | 5'14/km【+12】 | 5'19/km【+17】 |
4'38/km(T) | 4'42/km【+4】 | 4'46/km【+8】 | 4'48/km【+10】 | 4'53/km【+15】 | |
4'16/km(I) | 4'20/km【+4】 | 4'23/km【+7】 | 4'25/km【+9】 | 4'29/km【+13】 | |
50 | 4'35/km(M) | 4'39/km【+4】 | 4'43/km【+8】 | 4'47/km【+12】 | 4'50/km【+15】 |
4'15/km(T) | 4'19/km【+4】 | 4'22/km【+7】 | 4'24/km【+9】 | 4'28/km【+13】 | |
3'55/km(I) | 3'58/km【+3】 | 4'01/km【+6】 | 4'04/km【+9】 | 4'07/km【+12】 | |
55 | 4'10/km(M) | 4'14/km【+4】 | 4'17/km【+7】 | 4'21/km【+11】 | 4'24/km【+14】 |
3'56/km(T) | 3'59/km【+3】 | 4'00/km【+4】 | 4'03/km【+7】 | 4'06/km【+10】 | |
3'37/km(I) | 3'41/km【+4】 | 3'41/km【+4】 | 3'44/km【+7】 | 3'46/km【+9】 | |
60 | 3'52/km(M) | 3'55/km【+3】 | 3'59/km【+7】 | 4'02/km【+10】 | 4'05/km【+13】 |
3'40/km(T) | 3'43/km【+3】 | 3'46/km【+6】 | 3'49/km【+9】 | 3'52/km【+12】 | |
3'23/km(I) | 3'25/km【+2】 | 3'28/km【+5】 | 3'31/km【+8】 | 3'34/km【+11】 | |
65 | 3'37/km(M) | 3'40/km【+3】 | 3'43/km【+6】 | 3'46/km【+9】 | 3'49/km【+12】 |
3'26/km(T) | 3'29/km【+3】 | 3'31/km【+5】 | 3'34/km【+8】 | 3'37/km【+11】 | |
3'10/km(I) | 3'12/km【+2】 | 3'15/km【+5】 | 3'17/km【+7】 | 3'20/km【+10】 |
※書籍のVDOT表とは基準のペース設定が若干異なる部分がありますので、気温上昇によるペースダウンの目安として、参考までにご利用ください。
キッチリとペースを設定して実施するトレーニングも大事ですが、夏の間は
「暑くて面倒だし、そんな事はしたくない」
という方も多いはず(笑)
そんなアフリカ系の感覚(笑)を持つランナーの方におすすめなのが
時計を見ないで実施する、短時間・高強度練習
です。
参考例として2つほどご紹介します♪
坂道トレーニングといえば、短時間・高強度トレーニングの王道です。
あっという間にグッタリになる練習の代表格(笑)
100m~200m位の登り坂を、80%~90%くらいの強度で駆け上がる。(Mペース~閾値くらいの感覚で充分です)
下りはごくゆっくりジョグ。
これを5本~10本、やりたければ15本でも20本でも(笑)
5本~10本なら10分~20分ほどで終わりますが、だいぶ追い込めます。
インターバルのように定量的にVo2maxへの刺激時間を把握する練習ではありませんが、ランニングエコノミーの向上やクリティカルパワーがアップしていくので、継続実施によって走力向上は確実。
しかも、着地衝撃が少ないので怪我のリスクは少なめ。
坂を駆け上がるにはアクセル筋であるハムストリングの後ろや臀部(でんぶ:お尻)の筋力が必要になりますし、脚筋力など全般的な活動筋の大幅アップにつながりますので、夏の間にやり込めば秋のレースで
「あれ…30km以降の下半身の疲労感が今までより軽い」
「アップダウンの多いコースなのに、粘れてる」
と、坂で頑張った成果は確実に感じられるようになるはず。
大迫選手も坂トレーニングの効果を実感していて、トレーニングに取り入れています。
以下の動画の後半では、大迫選手の坂トレーニングの様子と、その効果について語っています。
アフリカの選手たち、特にフルマラソン世界記録保持者のキプチョゲ選手が週イチファルトレクをやってる練習内容を公開して話題になりました。
ファルトレクとは、アップダウンのある不整地を5分疾走、2分レストジョグなどと設定し、それを数本実施する、時計にはあまりこだわらず、感覚重視のトレーニング。
その日の気温や体調で疾走時間やレストも柔軟に決めます。
疾走とレストを1分-1分でも、5分-3分でも、10分-2分でも、設定は自由。
インターバルのようにガチガチでシステマティックな練習ではなく、気分で色々変えて実施するトレーニングです♪
ちなみにキプチョゲ選手の練習内容は
1.9kmアップ、10分疾走(下り2’45/km~2’50/km、登り3’10/km~3’15/km)-2分レスト(非常に遅いジョグ)×4本、ダウンジョグ2.2kmとなってます。
その他の土曜日には1分疾走(2’45/km)・1分レスト×30本や、3分疾走(3’00/km)・レスト1分×18本など、様々なパターンで実施しているようです。
キプチョゲ選手のMペースは2’55/kmほどですが、上記練習は不整地+高地(2400m)という事が考えると、負荷はかなり高め。
私もハイアルチ(高地トレーニング施設)で2400mの高地を再現した部屋でトレーニングしてましたが、キロ5でヘロヘロになりますからね^^;
私たち一般市民ランナーレベルであれば、ファルトレクの疾走区間であってもそこまで上げなくても充分効果的です。
もし不整地が自宅の近くにあれば、木々の中で日陰もあって涼しげですし、良いトレーニングになるハズです(^^)
ファルトレクといえばアフリカの選手たちですよね。下の動画はケニアの選手たちが実施するファルトレクです♪
私も夏は月に1~2回、ファルトレクやってます(^^)
夏は秋に向けた脚作りをするという意味で、山での登山やトレイルランニングで長い時間動き続けるのもオススメできます。
山は100m高度が上がると0.6℃気温が下がると言われます。
元々登山が趣味だった人がマラソンをやると、やたら最初からフルマラソンでも終盤に強くて速い人が多いように感じます。
行く山によっては一般登山者やハイカーの方が多かったりするので、夏場のハイシーズンはガッツリ走って心肺を上げ、直接的に走力向上!みたいなのは、難しいかもしれません。
しかし、登山で長い時間身体を動かし続ける事で長時間動けるスタミナが身についたり、山の登り下りで脚筋力が養成される効果はあります。
夏は涼しい山に出かけて、遊びながらスタミナ強化。アリだと思います。
以下の記事はトレランの事について触れてはいますが、その心構えと装備で”走らなければ”、ちゃんと登山として成立しますよ★
気温が高い時に走るレースの場合、私たちの教科書であるダニエルズのランニング・フォーミュラ
詳しくは書籍の表をご覧になって頂きたいですが、実業団クラスのランナーでも30度を超える気温では5kmで1分近く、レース全体で8分近くタイムが遅くなる影響があるとしています。
私たち市民ランナーレベルではさらに影響を受けやすいと考えられますし、夏の北海道マラソンでは冬のPBより20~30分遅くなるランナーも多くいらっしゃいます。
夏は速く走るのも、長く走るのも大変な時期。
気温が低くて走りやすく、スピードに乗って走れる時のイメージはスッパリ捨てて(笑)、
適切なペースや、夏に適した練習
で秋からのマラソンシーズンに備えてください♪
View Comments
鹿児島県・Kです。
シンスプリント予防のルーティンと共にとても分かりやすいご説明ありがとうございました。
メールでのアドバイスと併せてお礼を言わせていただきます。
早速、気温が高い場合にペースを落とすための基準表をもとに、閾値走を実践してみました。走った後の肉体的ダメージが全く違いますね。
次はテンポ走で応用し、40分、60分と試してみようと思います。
サブ4を達成しているので今度は3時間50分切り、3時間40分切りと刻み、今シーズン中にサブ3.5を最終目標とします。
練習内容はブログの記事を参考とさせていただきます。
また、分からないこと等ありましたら質問させてください。
よろしくお願いいたします。
鹿児島県・Kさん、ご丁寧なコメントをくださり、ありがとうございます!
ペースを落とす基準表をもとに、早速閾値走を実施されましたか!
ダメージ、違いますよね。夏であっても、日々の練習の継続性に難が出てしまう事がない設定だと思います。
今シーズン中にサブ3.5!頑張るランナーの意気込みは本当に素敵です。
少しでも弊ブログの記事が役に立ちましたら嬉しいです(*^^*)
私もだいぶ少しヘコんでる今日この頃ですが(笑)、Kさんのやる気に触れて「私もがんばろ!」と思えました!
またいつでもご質問ください!お待ちしています♪
げんさん
気温調整機能、初めて知りました。ありがとうございます。
15℃と30℃ではキロ15秒ほど違うようですね。ひとつのメドとして練習に適用してみます。とはいえ、「15秒しか落ちないのか?」というのが正直なところですが。
てっちゃん、コメントありがとうございます!お役に立てたようで、良かったです♪
暑さに強い、弱いにもよると思います。
私の場合、気温が15度と30度でのペースは、フルマラソンを走る時で30秒/kmも違います(笑)暑さに劇弱ですf^_^;
ただし私がスピードタイプだからか、閾値走程度の距離であれば、ダニエルズさんの設定通りくらいで走れます。