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市民ランナーの私たちがよく取り組む閾値走。
でも日本の大学生ランナーや実業団ランナー、世界トップレベルのランナーが練習公開をする時に”20分閾値走をやった”という文言を見る事はありません。
「閾値走って時代遅れの効果が薄い練習なんじゃ…」
「古めかしい練習はしたくない!」
そんな方もいらっしゃるかもしれません^^;
なぜ私たち市民ランナーは閾値走をやって、アスリートの皆さまは閾値走をやらないのか。
今回は読者の方から頂いた質問に答える形で解説していきます♪
ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
げんさん、いつも参考にさせてもらってます!
20分間の閾値走についてお伺いしたいのです。
市民ランナーの間では実施している人が多い閾値走ですが、学生さんや実業団選手のようなエリート選手、世界的なレベルのマラソンランナーの方々は、あまり閾値走をやっていないような気がします。
もしかしてダニエルズさんの閾値走って、少し古い練習なのでしょうか。
閾値のスピードは怪我のリスクが結構あるような気がして、少し落としたペースで距離を踏んだ方が怪我のリスクが低く、かつ、乳酸を処理出来る能力もアップするのでは、そんな事を思っています。
げんさんの考えをお聞かせください。
★★★
なるほどですね。ご質問の行間を読むと
「おいコラ、げんさんよ」
となるような、軽いクレームに感じます(笑)
つまり
「一流選手など、速いランナーがやってない練習ばっか紹介してねぇか?」
「もっと効率が良くて効果の高い、最新の理論を踏まえた、良い練習を紹介しろよ」
そのように受け取りましたww
確かにエリートランナーの方々は
「閾値走20分やりました!」
そんな感じのメニューなんて、見たことないですよね^^;
ダニエルズのさんが指導していた選手が主に活躍していたのは、1980年代です。
指導をした中には優秀なランナーが大勢いましたが、記念すべきオリンピック女子マラソン(1984年ロス五輪)の初代金メダリストであるJoan Benoit(ジョーン・ベノイト)さんがいます。この方ですね。
この方は2019年のボストンマラソンで、61歳の年齢で3時間5分台で走って話題になりました。
その後、ダニエルズさんが最初に英語版のダニエルズのランニングフォーミュラを出したのは1998年。
日本語版が出版されたのが、私がちょうどランニングを始めた頃の2012年。
「やっぱ古っ!!」
って思うのも致し方がないかもしれません(笑)
結論から解説します♪
30年も40年も前から実施されている、ダニエルズ理論。
そりゃ最新の理論かと言えば、最新じゃないに決まってる(笑)
でも効果が無いかと言えば…そうではない。
80年代に世界のトップランナーが練習に取り入れ、その後も長い間市民ランナーに支持され、多くのランナーの夢や目標を叶えてさせてくれたダニエルズさんの練習方法が
“全然効果が無い”
というのは、ありえない。
大げさに言えば”原理・原則”のように、
「こういう練習を、こういうやり方でやれば、身体はこう反応するよね」
という”法則”に近いものがあるので”古い”とか”新しい”というのを超越している部分があります。
ただし、現在はトップ選手が積極的に閾値走をやってるって事はない。
どういう事でしょう。
閾値走それ自体の効果は、1970年代・1980年代に閾値トレーニングを実施して世界レベルで活躍した選手が数多くいたことや、その後に市民ランナーを含めて多くのランナーが大きく成長できている事から、その効果については疑う余地がありません。
特に初心者~中級者の走力が上がる事は確定している。
ただ現在もトップ選手が他の選手を差し置き、日本のトップレベル、また世界的に活躍するに足る練習かというと、そうではなさげですよね^^;
競技者は短い競技人生の中で、最短で走力を上げていかなければいけません。
何と言っても、他の競技者より速いタイムを出さないといけない。
他の競技者に勝たないといけない。
そのためには少しでも差別化された、最新の理論を踏まえた、わずかでも効果的なトレーニングをしないと他の競技者との勝負にならない。
競技者の練習というのは月間1000km前後の距離をこなしており、その流れの中で実施するジョグやポイント練習です。
目指すレースのために自分に必要なものは何か、どうしたら(レースを含めて)効率的にVo2maxに刺激を入れ、日々の練習でLTや脂質代謝能力を上げていき、乳酸をエネルギーとして再利用する能力を高めるか。
様々な効果を複合的に、効率的に上げていけるように考え抜かれています。
乳酸性作業閾値(LT)の向上は、20分間の閾値走のみで上がっていくわけではありません。
もちろん乳酸が処理出来るかどうかの境目(閾値)で実施する閾値走をやることで、乳酸処理能力が効率的に向上する事は分かってはいるのですが
・様々なペースのインターバル
・Eペースのロング走
・ビルドアップ走
・ペース走
などの様々な練習でも乳酸は発生するので処理能力は徐々に上がっていき、それは数年かけて高いレベルに到達する事が可能です。
小学校や中学校の頃からスピードを求めて競技をしてきた、競技力の高いエリートランナーにとって、フルマラソンを走る練習の中で
・インターバルペース
・閾値ペース
このようなスピードでのランニングがフルマラソンを走るためのパフォーマンス向上に大きく寄与するかどうか、それを疑問視する論文や研究もあります。
なので、LT向上を目指すにしても私たちとは異なるアプローチが必要という事もあります
つまり、私たち市民ランナーとは大きく異なる場所で戦っているのです。
私たちが一流選手の練習内容から垣間見える練習目的、練習の考え方などを学ぶのは、非常に有意義な事です。
しかし中高年から、ましてや全然走れない状態から走り始めた私たちとは、そもそもの土台や立ち位置が違います。
ランニングを楽しみ始めた市民ランナーの初心者~中級者(サブ3前後レベル)までは、
中強度のランニング(閾値ペース辺り)に非常に高い効果があることが分かっています
トレーニングで得られる効果・成長の再現性というのは、一般のランナーがレベルアップするために、とっても大事なことです。
これはダニエルズのランニング・フォーミュラのような
「安全に配慮されて無理なく成長出来る」
「同じような練習で、すでに数え切れないほどの成功例がある」
市民ランナーにとってはそういう練習方法が最も合っている、そう言えるのではないでしょうか。
それでサブ4,サブ3.5、サブ3など充分高いレベルに到達可能ですし、普通の人にとっては申し分のない強度の練習内容だと思います。
閾値走は今となっては、昔からある古典的な練習かもしれません。
でもそれは、一般市民ランナーにとって安全で取り組みやすく、レベルアップが確実な、安定・安心が確立された”原理・原則”に近い練習でもあります。
エリートランナーが実施しないのは、エリートランナーの事情があるから。
それによって
「閾値走は古い!やらない!」
とするのは、もったいないと思います^^;
ダニエルズ式の練習方法、今回の場合は閾値走のお話ですが、
初心者~中級者ランナーが成長するための再現性が高く、走力アップには効果てきめん
ですからね。
もちろん
「飽きないように、様々な練習がしたい」
「最新の理論を学んで研究、自分の練習に活かしたい」
「自分の身体を使って実験的に違う練習もしたい」
そんな方は、是非色々チャレンジしてみてください。
それが自由に何でもやって良い市民ランナーの特権ですし、やりたい事をやった方が楽しいですしね(^^)
大事なことは、閾値を何年もかけて改善していく事、それは
マラソンのタイム短縮を目指す長距離ランナーにとって必須
という事です。
そこは忘れずに、様々な練習で楽しみながら継続していきましょう~(^^)