マラソンで痛み止め(ロキソニン・イブ等)は飲むべきか否か

フルマラソンも終盤になると身体の様々な部分に痛みを感じてきます。

股関節や膝・足首・足の裏など、ランナーによって痛む部分が違いますが、走り続ける事が出来なくなって止まってしまったり、リタイアしてしまった方もいると思います。

そんな時に誰もが一度は考えた事があるかもしれません。

「痛み止めを飲んだら、ゴールまで走り続けられたのではないか…」

そんな事を考えてから、実際にレースにお守りとして痛み止めを持参したり、中には服用した人もいるでしょう。

かく言う私も、練習で30km走をやる時やレース中にも「ロキソニン」という痛み止めを服用した事があります。

本当に痛みが薄くなったり感じなくなったりというメリットもありましたが、逆に、だいぶ酷い目にも合って怖くなり、今ではノードラック派ですが^^;

マラソンのレース前・レース中にロキソニンを飲むメリット・デメリットを考えてみようと思います。

【解説動画】マラソンで飲んでいいのか痛み止め(消炎鎮痛剤) やっぱりダメ?注意すれば良い?

ブログの内容は、以下の動画でも解説しています!

マラソンで痛み止め(ロキソニン・イブ等)は飲むべきか否か

医療関係者にそんな質問をしたら、大多数の方が

「やめなさい」

と言うでしょう。

そんな事は皆さんご存知の上で、レース中に痛み止めを飲んでいる市民ランナーの方は意外と多いですし、皆さんの仲間やお知り合いにもいるのではないでしょうか。

「マラソン 痛み止め おすすめ」

などの検索ワードで、何を飲んだら良いかを調べてる方も結構います。

それだけ多くの方がレース中の身体の痛みに悩まされているという事に他なりません。

フルマラソンはもちろんですが、フルの距離を超えるウルトラマラソン、自力で下山しないと他人に大きな迷惑をかける可能性があるウルトラトレイルになると、痛み止めを持参する割合は増加してくると容易に想像出来ます。

安静時に服用しても問題の少ない「痛み止め」ですが、運動時に服用するとなると「やめなさい」と言われるのはナゼか。

マラソンで痛み止め(ロキソニン等)を服用する危険性

運動する直前や運動中にNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、ロキソニンに代表される痛み止めを服用する事は極めて危険だと言われています。

例えばBMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)によると、3913人のランナーを対象にアンケートを実施、そのうち1931人がレース中やレース後の痛みを遅らせたり回避させるために、レース前に鎮痛薬を摂取。

彼らはレースの直前に鎮痛薬を使用しました。

ほとんどの鎮痛薬(54%)は処方箋なしで摂取され、そして女性(61%)が男性(42%)よりもはるかに多く鎮痛薬を摂取していた。

In total, 1931 respondents ingested analgesics before racing, to retard or avoid pain during the races and thereafter. They used analgesics immediately before the race. Most of the analgesics (54%) were taken without prescription (online supplementary table S2), and significantly more women (61%) took analgesics than men (42%).

出典:BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)

その結果、レース前に鎮痛薬を使用したランナーは、使用しなかったランナーに比べて、5倍の有害事象(胃腸の痙攣・心臓血管系事象・胃腸の出血・血尿)が見られた、とあります。

このような論文や研究報告があるため、一般的にレース前やレース中の痛み止め(ロキソニン等)の服用は勧められていないのです。

それでも多くの市民ランナーが、痛み止めをレース前やレース中に服用してしまっているのはどうしてか。

副作用が出るのは個人差があり、全く副作用を感じずに、あるいは副作用の影響が小さいと感じるため、痛みを感じにくくさせるリターンの方が遥かにメリットを感じる、というランナーが多いからでしょう。

ところで、実際にレース前に痛み止めを飲んだり、レース中に

「あー、身体が痛い…もう走れない」

という時に痛み止めを飲むと、どうなるのでしょう。

レース前・レース中に痛み止めを飲むと、どうなるか

これはご想像の通りです。

安静時の服用と同じく、痛みが軽減されます。全く感じなくなる事もあります。

走るのが非常にキツかった状態でも、何とか走れるようになったり、快適に走れるようになっちゃいます。

私がサブ3.5を目指していた頃、股関節痛に悩んでいました。

そのため練習でロング走を実施する前に、ロキソニンを飲んでから走っていました。

痛みを感じずに走りきれました。

サロマ湖100kmウルトラマラソンに初挑戦したレースでは、55kmのエイドで膝が痛くてしょうがなかったので、ロキソニンを飲みました。しばらくすると痛みが消えました。

そして、無事に100km完走出来ました。

「痛み止めを使うなんで邪道じゃねえか!」

とか

「フェアじゃない」

などの声は全く耳に入っていませんでした。

ドーピングでもないですしね。

フルマラソンでタイムを出す、ウルトラマラソンを完走する、そんな「目的」を達成する為であれば、出来る事はなんでもしたかったんです。

せっかく練習を積んだのに、痛みで走れなくなる、止まってしまう、リタイアしてしまう…「そんなのはイヤだ!」そんな思いに駆られたら、多少のリスクを負ってでも痛み止めを飲みたくなる気持ち、自分もやっていたので非常に良く分かります。

痛みがあってもペースダウンを抑えられ、ゴールまで導いてくれる痛み止めは「魔法の薬」のようなイメージすら、持っていました。


レース前・レース中に痛み止めを飲むリスク

で、お待たせしました(笑)

世の中、ウマい話には裏があります。

そんな魔法の薬を服用した練習・レースの後には、地獄が待っている可能性があります。

副作用として、文字で「胃腸の痙攣」「胃腸の痛み」「血尿」とか書かれてても

「ふーん( ´,_ゝ`)」

ってなものかもしれませんが、

実際に痛み止めの副作用に襲われると悶絶もの、のたうち回ります。

体験者が言うのですから、間違いないです(笑)

リスク1:胃腸の痛み、血尿、血便

2013年の冬。

2012年に2度のサブ4失敗を経て、2013年3月の能登和倉万葉の里マラソンに向けて燃えていた頃です。

その頃、ロング走をすると股関節の痛みに悩まされていました。

そこで、ロング走をする時はロキソニンを飲むようにしました。

すると痛みを抑えられ、キロ5の30km走でも難なく出来るようになりました。

しかし、2013年1月のある日。

空腹&少量の水でロキソニンを飲み、30km走。

終了後、自宅に戻りました。

しばらくすると、腹痛…いや、胃痛?キリキリと強い痛みを感じてきました。

痛みはどんどん強くなり、自宅の廊下で転げ回るほど。

変な汗が出てきて

「これは普通じゃない」

汚い話で申し訳ないですが、便は真っ黒。胃出血です。

尿の色もおかしく…血尿ですね。

速攻病院に行きましたが、走る前の空腹でのロキソニン摂取の話をして、メチャクチャ怒られました^^;

リスク2:レース中に感じた痛みが消えるってヤバいんだよ

2014年6月。

サロマ湖100kmウルトラマラソンへの初挑戦を控えた数日前。

知り合いのランナーがウルトラマラソンで普通にロキソニンを飲んでいる動画を見ていました。

ネットで調べると、ウルトラマラソンでは痛み止めを持参してスタートする人が結構多い。

「胃痛や血便などで大変な目にあったけど、ロキソニンを飲む前にエイドでたっぷり補給・給水をして飲めば、ペースが遅いウルトラだし大丈夫なのかな」

初挑戦のウルトラマラソン、何かトラブルが発生してリタイアするのだけはイヤだ。

お守りとしてロキソニンを持ってスタートしました。

レースがスタートしてフルマラソンの距離を過ぎた頃から、左膝が痛くなり始める。

55km地点のエイドに到着する頃には、とても強い痛みになっていました。

「飲むか…」

このままの状態では、あとフルマラソン以上の距離が残っているレースを最後まで走り切る自信が無かったので、エイドでオニギリやスポーツドリンクを多めに飲みながら、ロキソニンも飲みました。

ほどなくして

「全然膝が痛くなーーい!」

膝の痛みが無くなった私は、最後まで大きなトラブルもなくゴール出来ました。

「やっぱりロキソニンは、たっぷり補給・給水の後に飲めば大丈夫なのか!」

と思っちゃいましたが…

大きなトラブルはレース後にやってきましたorz 

ロキソニンの効果が切れて、左膝がメチャクチャ痛くなってきたのです。

そうです。痛みは身体から発せられる重要なサインなんですね。

そのサインを強引に薬で消してしまった事で、本来痛みでストップをかけられるはずの膝への負荷がストップをかけられない状態になっていました。

デッドラインを超えて負荷をかけ続けてしまった結果、その後2ヶ月ほど膝の痛みに悩まされる事になりました。

なお余談ではありますが、翌年2015年のサロマからは痛み止めを服用していないので、レース中はゴールまで痛みと付き合いながら進んでいます。

おかげで、道中は膝が痛いのですが、レース後も長く響いてしまうような深刻な怪我には繋がっていません。

加えて2017年のサロマでは、ウルトラマラソンでの走り方を変え、シューズをナイキのエピックリアクトにしたところ、膝の痛みは無くなりました。

100kmウルトラマラソンに挑戦する事になった時に気になるのは 「どういう練習をしたら良いのか」 「走り方はフルマラソン...

まとめ

痛み止めはレース中の耐え難き痛みを緩和させてくれ、ゴールまで辿り着く可能性を大きく広げてくれる薬である事は確かです。

私は散々な目に合ったので、2014年のサロマ湖100kmウルトラマラソン以降は痛み止めを使わないようにしています。

しかし、それぞれのランナーがリスクを分かった上で利用の可否を判断すれば良いと、個人的には思っています。

なお、私のこれからのランニングライフで「何が何でも完走したい!こんなレース二度と出れない!」というレースが出てきて、恐ろしく厳しい道中になると予想される場合は「念のために持っていくか…」となり、さらにレース中にどうしようもないピンチに陥った場合は、再び痛み止めを使ってしまうかもしれません^^;

げん